アミュの企み①
(彼ね・・・彼女の『王子との婚約』のキッカケを作った人物は・・・)
ミレイがサラと会ってる頃、アミュはゴルゴット家の別宅に来ていた。
目的はオシリス大卿の父・・・義祖父と会う為だ。
自分達が住む本宅には何故か祖父は住んでいなかったので、少し離れた場所にある別宅に来たのだ。
(彼をコチラに引き込めば、有利に事が進む筈よ!)
そう思いココに来たのだが・・・
「・・・お前が『養女』に成ったアミュか・・・ま〜養女の件は勝手にしろ!
だが、ゴルゴット家の正娘を名乗る事は許さんぞ!」
噂通りに頑固そうな老人・・・ガジルはそう言い放ち、アミュを睨み付けた。
「あの娘さえ、ワシは認める気は無いのだ!ましてや、誰の血を受け継いで居るか分からぬ貴様など、認める筈はないではないか!」
そう言うとガジルは、膝が痛いのか擦っている。
(なるほど・・・オシリス様と仲違いしているのは本当の様ね・・・)
元は自分付きの侍女だったミレイの母を、娶る事にガジルは猛反対していた。
元王家親類のオシリスには、もっと相応しい女性と結婚させるつもりだった。
だが、親同士の誓約を無視した形で双方が別々の人と結婚してしまった。
しかも、大卿家に逆らえば・・・的な『権力』を振りかざそうとした矢先に、事故で怪我をしてしまい・・・オシリスに家督を継がれてしまったのだ。
(不要な事件って話だけど・・・もしかしたら、もしかするかもね〜)
周りの従者の様子から、あまり好まれていないのは分かるからだ。
「オシリスの奴も奴だ!それまでなら、ワシの言う事を素直に聞いておったのに・・・あの女の悪い影響か?忌々しいわい」
そう言うと、ガジルはテーブルを叩く。
ガジルとて手を拱いていた訳では無い。
だが何故かオシリス夫人(ミレイの母)は元侍女とは思えない程にこういった知識(危険回避力?)に優れていて、上手く抜けられてしまうのだという。
(コレは《使える》かもしれないわね!)
もし自分をゴルゴット家の正娘にしてくれたら、オシリスからガジルに権力を戻してあげると言ったらどうなるだろう・・・
たが、正娘であるミレイすら、《母の出生がどうこう》言う人物だ・・・父親が不明な自分には高い壁な気もするが、やりおうはある。
「・・・ね〜御祖父様、もし私が御祖父様の『権威』を取り戻してあげるとしたら・・・ゴルゴットの正娘にしてくれますか?」
そうアミュがガジルに尋ねると、ガジルは苦笑いを浮かべた。
「・・・面白い事を言う小娘じゃな・・・あ奴らに何か恨みでもあるのかな?」
どうやら、ガジルに興味は持って貰えた様だ・・・
(第1関門は突破出来たわ・・・これでミレイより1歩先に行けるのは間違いないわ)
彼女の母をネタに強請れば、おそらくはオシリスはアミュを立ててくれるだろう・・・
(イジメられたとか言ってみようかしら?・・・そしたら、ミレイの評価を下げれるかも)
だが、そこでふと警戒する・・・ミレイも狡猾な女なのだ。
安易に行っても、ミレイに策が無いとは思えない。
(まずは母と相談してみるか?)




