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配信者

その夜。



なんだか今日は人生一濃い一日だった。


気になっていた人と話が出来たし、登下校の約束までしてしまった。


「コレ、なんてラノベ??」


枠のタイトルはこれで決まり。



配信との決別??そんなのしないよ。





「どうも〜ガライヤです」


配信を開始すると、いつものメンバーが現れる。


『きた』


『こん』


『今日早いな』




「今日はね〜枠タイ見てもらったらわかるように、ちょっと面白いことがあってさ」


『主の妄想か?』


『おもんなかったらブロックな』




「下校中に、ちょっと変わった子に絡まれて」



『女?』


『リア充か?』


「女だけど…いや違うって」


笑いながら流す。


その時。


見覚えのない名前が増える。


『yuki_33:こんばんは〜』


(初見さんだ)


「お、こんばんは〜」


『yuki_33:初めて来ました〜』


「はじめまして〜、初見さん、ゆっくりしてってね」


『yuki_33:はい〜』


語尾が柔らかい。


キャラ作りって大事だよね。


「で、その子がさ〜」


話を続ける。


「ふわふわしてて、見た目はお人形さんみたいに可愛いんだけど、距離感バグってて〜、でもメチャクチャ声良い子でさ〜」


『地雷やん』


『地雷女に絡まれてるw』


『情報量多すぎ』


「いや褒めてるって!」


軽く笑う。


「前々から派手なリュック背負ってたから気にはなってたんだけどね〜いや、本当に可愛くてね、すごい肌白いんだよ〜」


『スケベ!』


『惚れとるやないか』


『チョロw』


「なんでだよ!!まだ続きがあるんだよ!初対面だけどその子と登下校出来ることになったんだよ〜」


『嘘乙』


『ラノベの見過ぎ』


「いやいや、僕だって調子良すぎる話だと思ったけど、コレマジなんだって!!」


『精神科受診をオススメします』


『お大事に…』


「あー!!もう!本当なのに!!なんで信じてくれないの〜!」


まあ、こんな話、信じろって言う方が無理があるか。


『yuki_33:照れちゃいます…♡』


「は?」


思考が止まる。


このアカウント……?


まさか、まさかね。



確信はないけど、これ以上色々言ったらヤバい気がする…。


『あれ?電波悪い?』


『台本読んでるの?』


「あ、ごめんごめん、ちょっと一瞬考え事してた」


『yuki_33:その子の事考えてました〜?』


「……」


yukiさんのコメントが滝川さんの声で再生されてしまう。


滝川さんの下の名前は雪美、そしてこの雰囲気。



(いやいやいやいや、まさか)



「えーっと、yukiさんってさ、どうやって僕の枠に来たの?」


『オイオイナンパか?』


『誰かのサブ垢??』


『yuki_33:ガライヤさんに教えてもらいました〜』


「え、僕?」


『yuki_33:はい!今日配信の画面見せてくれたじゃないですか〜アカウントの名前、覚えていました〜」



「えっ!?」


声が低くなる。


「…違ったらごめんだけどさ…今日、会った?下校中に…」


コメント欄がざわつく。


『地雷女本人??』


『え?本人登場?』


『茶番かよw』


『yuki_33:えへへ〜』


「その笑い方やめろ」


確信に変わる。


「…今日の人でしょ」


一瞬の間。


『yuki_33:バレちゃいました〜』


「やっぱりか!!」


完全に崩れる。


ヤベェヤベェ!!!!


さっきの発言聞かれてしまった!!!!!


コメント欄爆発。


僕の顔も爆発。


『マジかw』


『神回w』


『怖』



「な、なんで来てんの!?」


『yuki_33:見てみたいって言ったじゃないですか〜』


「いや言ったけど…普通ほんとに来る!?」


『yuki_33:来ますよ〜』


「来るのかよ!!」


『草』


『距離近すぎ』


「ちょっと待ってほんとに…心臓に悪いわ!」


でも。


そのまま来ただけ。


「……はぁ」


ため息。


でも、少し笑う。


「…調子狂うなぁ…」


『yuki_33:笑笑笑』


「何が面白いんだよ」


『yuki_33:滝川の事、あんな風に思ってたなんて〜やっぱり見に来て良かったです〜♡』


(滝川って書いちゃってるじゃん)


『滝川ww』


『苗字言ったw』


『タッキー!』


『三人称?』



「yukiさん、それアウトだよ…」



『yuki_33:あっ…』


「あじゃないよ」


『yuki_33:ガライヤさん、すごく楽しそうに話してましたよ〜』


「……」


『yuki_33:違う面を見れて、ちょっと嬉しかったです〜それに、そんな事思ってくれていたなんて〜♡』


「……」


もう顔がなくなりそう。



『何を見せられているのか…』


『枠タイ回収w』



「滝…yukiさん、登下校の約束したけど…ソレ、無しで…」


『yuki_33:えっ』


『は?フラグボキ折るなよ』


『なんだコイツ』


「まさか来るとは思っていなかったから…」



む?横目に見ていた配信画面が少し変わる。



【yuki_33からコラボ申請が来ています】


「えっ?」


コラボとはその枠主と話せる機能。


「……」


迷った、正直迷ったけど、


僕は震える指でコラボを許可した。



『yuki_33がコラボに参加しました』



『おっ!』


『なんだこの展開w』



一瞬、無音。


ノイズすらない、変に澄んだ静寂。


そして。


『…こんばんは〜』


その声が、乗る。


「……っ」


背筋がぞわっとする。


間違えようがない。


スマホ越しなのに、やけに近くて、柔らかくて。


さっきまで、隣で聞いていた声。


『聞こえてますか〜?』


「…聞こえてる」


声が少し掠れる。


『よかったです〜』


くすっと、小さく笑う気配。


コメント欄が一気に加速する。


『本物やん』


『声かわい』


『優勝』


『メチャクチャ声良いw』


『推すわ』


「……何してんの」


絞り出す。


『見に来ただけじゃ、ダメですか〜?』


「ダメとかじゃなくて…」


言葉が続かない。


『だって〜』


一拍。


『直接お話した方が、早いかなって思って〜』


「…ん?」


理解が追いつかない。


『さっきの』


少しだけ、声が落ちる。


『無しっていうの、ちゃんと聞きたくて〜』


コメント欄が一瞬静まる。


「……」


逃げ場がない。


画面越しに、真正面から来られてる。


「…あれは、その」


『はい〜』


待ってる。


急かさないのに、逃げられない。


「…ノリで言ったというか」


『ふーん?ノリで〜?』


「違くて!」


思わず強くなる。


「その、来ると思ってなかったし…その状態で、あんなの聞かれて…」


『……』


「無理だろ、普通に考えて…」


沈黙。


コメント欄も、変に茶化さない。


その空気の中で。


『……嫌でしたか〜?』


ぽつり。


「……」


詰まる。


違う。


嫌じゃない。


「…分かんない」


それが、一番正直だった。


『……そっか〜』


少しだけ、声が柔らかくなる。


『滝…私は〜』


「……」


『嬉しかったですけどね〜』


心臓が、跳ねる。


『あんな風に思ってもらえてたの』


「……っ」


逃げられない。


逃げたくなる。


でも。


事実なんだよな〜。


『だから〜』


ほんの少しだけ、声が近づく。


『無しは、や〜です』


「……」


『約束、したじゃないですか〜』


静かに。


でも、逃がさない。


「……」


喉が鳴る。


コメント欄がざわつく。


『強い』


『押してきた』


「……一回だけ」


気づいたら、言っていた。


「一回だけだから、気まずいし」


『……はい〜』


嬉しそうに、息が混じる。


『一回で満足できるかは、分からないですけど〜』


「それ以上は無しだからな!」


『えへへ〜』



『なんか誤解を生むやり取りw』


『絶倫宣言w』



空気が、少しだけ緩む。


でも。


さっきまでとは明らかに違う。


ただの視聴者じゃない。


ただのクラスメイトでもない。


「……ほんと、来るなよもう」


小さく呟く。


『また来ちゃいます〜』


「来るなって言ってるだろ!」


『えへへ〜』


その笑い声がやけに近くて。


画面の向こうじゃ、収まらなくなっていた。



『ガライヤさん、配信だと火力高くて結構クセになっちゃいます〜』


「やめろ!それを言うな!」


『普段大人しいんかw』

『確かに無理してそう』

『お前らもう、付き合え』



「ほら!こうなるからそういう事言うなって!!!」


『付き合えって言われてますよ〜?どうしますか〜?』


「出会って初日で!?」


『初日じゃなきゃ良いんですか〜?』


「そうじゃなくて!!」


コメントが一気に動く。


『タッキー計算高そうw』


『転がされてる感』


『メッチャ好みの声…配信せんのか?』


『それな。配信して欲しい』



(滝川さんがいる時の方が盛り上がってるじゃん…)




                    つづく

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