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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

欲のままに書いている最強のキャラクター

城を攻める唐草

 歴史ものですが、起きていることではありません。

 本当の歴史を見たい方はブラウザバックしてください。

 ここに書いている話は作者が書いてみたい「最強のキャラクター」を欲のままに書いた作品となっています。

『オオオオオ!!』

「殺せ殺せェェ!!」

「武本隊、一斉突撃ィィ!!」

「グハァ!」

「鉄砲隊、一斉射撃ィィ!!」

 時は戦国。武蔵では一つの争いが起こる。阿部氏と宇部氏の小競り合いがここまで大きなものへと発展したものなのだが、今ではそれが起きたことすら知られていない。なぜなら、内容が荒唐無稽な話であり語り継がれていないからなのだ。

 しかし、ここで語られるのはその場で起きたことをそのまま伝えた話である。


                       ※※※


 この戦いは現在、阿部氏が優勢となり、宇部氏は籠城を強いられることとなってしまった。だが、守りを固めたところで一人の男だけには意味を成さなかったのだ。

「ブオオオ!!!」

 ホラ貝の音が戦場中に響く。開戦の合図となったのか、阿部氏の軍が一斉に突撃を始める。

『オオオオオ!!!』

 この戦いに負ければ後がないと背水の陣を敷いている宇部氏は鉄砲で応戦し、矢を放ち、槍で突いて敵が攻めてこないように城を護る。

 阿部氏と宇部氏の戦力差は目に見えてわかるほどの差があり、阿部氏が優勢となっている。だが、戦う場所、戦う者の想いが違うのか、戦況は拮抗、それどころかこの調子では阿部氏は無駄に兵を消費して逆転負けしてしまうだろう。

 本陣で遠目に見ていた阿部氏こと阿部呑牛(あべのどんぎう)は、早めに終わらせようと、

「唐草隊を出せ」

「御意!」

 一つの隊を出す。

「唐草隊!殿から出陣せよと」

「……分かった」

 隊長である唐草奏凪丸(からくさのかなぎまる)が元気なく返事する。彼は無気力そうな顔をしていて、長い髪を結び、首の後ろに垂らしている。ついて来いと言わんばかりに長槍を掲げ、それに寡兵(かへい)がついて行く。唐草隊は阿部呑牛に期待でもされていないのかは分からないが、全員歩兵と同じような装備だ。馬もない。違うところで言うのなら、全員が鎧の縁を浅葱色に塗っている。

鉄砲が届かない距離までを徒歩で歩き、途中で止まる。

「いいかお前ら。ここから俺は走って宇部、大将を討ち取る。ついて来れる奴は来ていいが、ダメなら他の奴らの援護にでも回れ。全員が無駄のない行動を殿のため、仲間のために尽くせ。」

『ハ!!』

 奏凪丸は、自分一人で城を攻め、大将を討ち取り、この戦を終わらせられると豪語しているが、実際にできる話なのだ。

「武運を祈るぞ!」

 彼はその言葉を最後に走り出す。

 銃声、矢羽が風を切る音が響く中、眉一つ動かさずに走る奏凪丸は、城を囲み苦戦している兵たちと違い、一人元気に城へ向かって走ってくるのだから、彼を倒そうと敵が狙ってくるのは必然である。

「ッ()ェェ!!」

 一人の男の声により、奏凪丸に鉄砲を向けられ、バラついた銃声が響く。

 だが、彼には余裕があるようで持っている長槍の先を操るが如く器用に動かし銃弾を弾く。

「再装填!!弓兵、一斉射撃ィ!!」

「投石部隊、攻撃始めェェ!!」

 鉄砲の再装填の間に牽制として大量の矢が放たれる。だが、銃弾を弾いた実力を持つ彼ならこんなものを弾くのは朝飯前だ。ただ、石の礫はそれなりに重く衝撃があるのか、彼は石の礫は避けるように立ち回る。

 鉄砲の再装填が終わるころ、彼は長槍を棒高跳びの要領で堀と城壁を超え、城内へと侵入する。

「ヘッ!!たかがネズミ一匹で、我ら宇部様の兵が負けることなどないわァ!!」

「かかれェェ!!」

 場内で待機していた十数名の兵が奏凪丸を襲う。

「……舐めてもらっちゃ困るんだよ。」

 気力の無い声で腰に差している刀を抜き、応戦する。だが、十数名の兵は武器を交え、戦うことはおろか、攻撃すらさせてもらえないまま、一太刀浴びて倒れ込んでしまう。

 その場で対応していた兵は少し慄きつつも、

「ええいまだだ!!かかれェ!」

 彼を殺そうと襲い掛かる。だが、彼は刀を鞘に納め、

「さて、後は彼らに任せようかな。」

 と言い、天守へ向かって走り出す。

「待て、貴様ァ!」

 一人の兵が呼び止めた時、いくつもの砂利を踏むような大きな音が響く。城壁を超え、着地してきた音だ。全員の鎧の先が浅葱色。唐草隊の隊員が到着したのだ。

「隊長を止めないため、我ら、精一杯の援護をさせていただきます!」

 隊員の一人が叫ぶ。

「これ以上は阿部の猿共を城内に入れるな!!総員、かかれぇ!!」

 まだ城の外に敵が残っているため、遠距離攻撃を持つ鉄砲隊や弓兵の一部はまだ下がらず、県政を続けているが、殆どが刀あるいは槍を持ち、白兵戦へと移る。

「何人か、梯子を架ける援護をしろ!!」

「こっちだ!!」

「殺せ殺せ!!」

 唐草隊が応戦することで余裕のできた阿部氏の兵は次々と登ってくる。

「クソッ!どんどん敵が入ってきやがる!」

「まだだ!集団で行動し、対処せよ!」

 宇部氏の兵が必死に抗うが、阿部氏の兵が止まらないため、このままでは埒があかないどころか、数的不利で負けてしまうだろう。


                       ※※※


 その頃、奏凪丸は、城を道なりに進んでいる。

「敵が一人やってきたぞ!ッ()ェ!!」

 奏凪丸は敵兵に見つかり、鉄砲を向けられ、撃たれる。

「ハァ……」

 ため息を漏らしながら難なく銃弾をいなし、門へ向けて走り出す。

「こ、こっちへ来るぞ!!」

「狼狽えるな!!門はこちらからしか開かない!例え鉄砲で死ねないやつでも、ここを超えることはできんよ!」

 怯える兵士がいるが、一人の兵は門があることで攻めることはできないと慢心している。本来であれば門は一人で破られないものなのだろうが、彼の前では門などはただの障害物であり、

「えい」

 軽く刀を振ったような音でも、その切り口は十分に研いだ包丁で魚を捌くように滑らかな断面を作り、分厚い門を両断する。

 門が破られることで唖然とする者、逃げ惑う者、ここから先は行かせまいと立ち向かう者、結局、彼にとっては全て’’敵’’である。

「邪魔」

 刀を全方位に向かってめちゃくちゃに振る。ただ、その軌道は全て敵の急所を正確に斬る。

「化け……物……」

 奏凪丸に斬られ、苦し紛れに小さく声を上げ、絶命する。

「あと半分くらい……?」

 彼はやる気なさげに声を上げまた走りだすが、実際はこうやって戦うことに昂っている。

「お、隊員たちも元気に()ってるねぇ~」

 少し高いところにある木に登り、そこから城壁のそばを見下ろす。殆どの兵士がゴマ粒のように小さく映るが、彼は浅葱色の柄を見て判別している。

「敵襲ーー!!敵襲ーー!!」

「あ、バレた。まぁいいけども」

 当然、木の上で鎧を着て下を見下ろしている姿なんて木に赤い実がなるくらい目立つものだ。

 木から降りた途端に複数人の槍兵に囲まれる。

「ここで貴様はくたばるんだな!!」

 そう言って彼に刺突を繰り出す。槍兵たち。

 だが、その素早く放たれた刺突は彼の前では無力。一本一本の攻撃がいなされ、躱され全て丁寧に対処される。

「遅い」

 リーチの差で敵の懐まで届かないため、槍の持ち手を切断し、攻撃を不可能にする。敵兵も、槍を破壊されたことで腰に差している刀を抜き、応戦する。

「ハアッ!!」

 敵兵は一斉に襲い掛かるが、奏凪丸は剣筋を一切見せることなく急所を斬り、殺す。

 刀を振り下ろして血を払い、一度刀を鞘に納め、再度走り出す。

 しばらく敵兵がいない中、彼は天守の中へと続く門の目の前に着く。

「さて……」

 門の前に立っているのなら当然お出迎えとして敵兵が集まってくる。それも天守に近づいているのだから、精兵や宇部氏直属の近衛兵が待ち構えている。

「我は森冨(もりとみの)丈三朗(たけさぶろう)。貴様の名を申せ」

「唐草奏凪丸。名乗っても死ぬだけのお前らにとっちゃただの時間稼ぎだ。」

「貴様!丈三朗様に無礼だとは思わんのかッ!!」

「武士としての誇りはどうした!!」

「知らねーよそんなもん!戦は、生きるか死ぬかだ。名乗りは、死なないための時間稼ぎだ。武士なら武功で名を轟かせ。名乗りなんざいらねぇ!」

「クッ……貴様それでも武士なのか!?」

「ごちゃごちゃ五月蠅(うるせ)ぇ!文句あんならかかってこいよ!」

「……承知した。……では、この丈三朗、いざ参らん!」

「ウオオオ!!殺せェェ!!」

「無礼者は死を以て償え!!」

 丈三朗含めた敵兵は武器を構え奏凪丸へと襲い掛かる。それぞれが息の合った攻撃を行い、隙は無いように思われる全方位からの攻撃。一人は首を狙い刀を振り、一人は足を狙い槍を振り、一人は胴を貫こうと槍で突くなど、それぞれが別々の部位を攻撃する。

 近間で刀を素早く振っても誰かの攻撃が当たるか、自分を誤って斬るかの二択に思えたが彼は澄ました顔から一変、歯を剥き出しにし、とてつもない速さで刀を振るいすべての攻撃を弾く。

「なっ!?」

 全員が驚愕し、奏凪丸を見ていると突如彼が消える。

「じゃ、さよなら。」

 さっきよりも低くなり威圧感の増した声でどこからともなく話してくる。

「や、奴はど―――」

 一人が叫んだ途端、声が斬られたように途絶える。それに反応した兵は叫んだ兵が大根の輪切りの如く切り刻まれ、ドチャドチャと肉が落ちる音が門の前で響く。

 自分たちも同じように切り刻まれるのでは?そういう疑問が全員の頭に浮かび全員が冷や汗を垂らし、自分たちの主君のため、反撃できないか、必死に感覚を研ぎ澄ます。

「ここだ―――!!」

 一人が僅かに反応したが、その時には既に右腕が斬り落とされ、もう一度攻撃を繰り出すときには左腕、諦めず一歩踏み出せば右足を斬り落とされ、バランスを崩し倒れるときに左足を斬り落とされ、地に着くまでには首を切り落とされる。

 一人、また一人と少しでも抵抗した者から斬り殺されていく。逃げ惑う者もいたが、真っ先に首を斬り落とされていく。

 そして、唯一人、丈三朗が残る。奏凪丸は血を払い、刀を鞘に納める、竹三郎に質問する。

「さて、お前はどうする?ここで俺に挑み死ぬか、阿部様に忠誠を誓い、生きるのか」

 丈三朗は一度目を瞑り乱れた呼吸を整え、口を開く。

「我は、宇部様に忠誠を誓った!裏切るのは恥!此処で散ることこそ本望よ!」

 そう言って持っている刀を振り下ろす。

「そうかい」

 奏凪丸は刀を抜くことなく、横に小さくずれ、振り下ろしを避け、誰もが目で捉えられない速さで抜刀し、丈三朗の胴を両断し再度刀を納める。

 丈三朗は血を噴き、刀を持つ力、立とうとする膝の力が抜け、その場に膝をつき倒れてしまう。

 奏凪丸は丈三朗を両断したと同時に門を切り強引に開けたのでそのまま天守の中へと入っていく。

 中に入ると、そこはいくつかの蝋燭で照らされた薄暗い空間となっている。

 奏凪丸はいつでも戦闘態勢に入れるよう、刀に手をかけながら一歩ずつ進む。

 数歩進むと蝋燭の灯が不自然に揺れ突然消える。頼りになる光は先ほど開いた門からの日光のみだった。

「貴様が侵略者か」

 暗闇の中聞こえる一つの声と移動する複数の足音。黒い布を纏う忍なのか、目を凝らしても良く見えない。

 ただ、彼自身には見えているらしく。

「せっかくの好機を逃すなんて勿体ないな……」

 と呆れた口調で刀を振る。暗い空間の中、赤黒い血がより暗さを際立たせる。生き残った数人もバレてしまってはしょうがないと暗器を取り出し襲い掛かる。そのまま切り刻まれ血を撒き散らしただけになってしまったが。

「天守に侵入者だ!!数は一人!油断せず対処せよ!」

『ハ!』

 上へと続く階段から声が響く。奏凪丸は待ってましたと言わんばかりに階段を駆ける。

 天守の階段は攻められる際、安易に登られないようわざと最後の一段の間隔を大きくしている。そのため階段を駆けあがってしまうと―――

「やべ」

 彼のように転んでしまう。

「殺せェェェ!!!」

 多方向から槍が突きに来る。少し慌てて転んだ勢いのまま前に避け、体勢を整える。階段を上がった先には三十程の敵兵。

「かかってこい」

 刀を抜き、挑発する。殿をお守りせんとばかりに突っ込み、奏凪丸を殺そうと襲い掛かる。

 奏凪丸は流れる川の水のように、獣道を進む獣のように滑らかな動きで敵兵の間を縫うように動き確実に一人一人を殺していく。

 刀を斜めに振り、素早く振り下ろしたり、膝をつき低い姿勢から薙ぎ払ったり。振り返ることなく進んでいき、目の前の敵を斬り捨てる。

 飛び散った血は清潔だった畳を赤く染め、襖に描かれていた絵画を塗りつぶす。

 血を払った後、また階段を上がった先には宇部氏と思える男と、それに仕える一人の近衛兵がいる。

「ここで終わりかのう」

「殿、まだ終わりではありません。この私めが必ず」

「頼んだぞ史左衛門(しざえもん)

「御意に」

 最後の会話と言わんばかりに話す姿を奏凪丸は見届け、刀を抜く。

唐草奏凪丸(からくさのかなぎまる)だ。貴様も名乗れ。最後の思い出を飾ってやる」

吉暮坂(よしくれさか)史左衛門(しざえもん)。まだここで死ぬわけにはいかないのでな」

 一足一刀の間合いで互いに睨み、次の動きを読み合う。先に動いたのは奏凪丸だ。

 刀を振り下ろすであろう腕を上げながら史左衛門へと寄ってくる。

 それを見た史左衛門は横から刀を振る。それに反応した奏凪丸はしゃがみながら刀の鍔に引っ掛け勢いよく刀を振り上げる。そのまま刀を引っ張られ離すまいと力を入れたせいで一手の動きに反応できず、奏凪丸の斜め上からの振り下ろしに胸から腹にかけてを深く斬られ、血を多く出しながらその場に倒れ込む。

「無念……」

 史左衛門は涙を流し、殿に手を伸ばし、伸ばしきる前で力を出せず、そのまま散ってゆく。

「最後は儂か。宇部享浩(うべのただひろ)、参る」

「再度名乗らせていただく。唐草奏凪丸。」

 享浩はこれが最後の戦いと全力を出す。

 一手一手の動きにフェイントを織り交ぜる。奏凪丸もそれに釣られまいと冷静な顔つきのまま構える。

「ハァッ!!」

 享浩が先に仕掛け、大きく踏み込みながら刀を振り下ろす。奏凪丸はそれを見た途端、享浩の目線から消える。

 彼が気付いた時は、自身の口から一筋の血が零れ、尋常でない量の冷や汗が流れ、目線が少しずつずれていった時だった。後ろで血を払い、刀を鞘に納める音が静寂の空間の中で響く。

「フッ……年には勝てんな……」

 享浩は少し笑顔のまま、死んでいくのだった。

「さて……」

 奏凪丸は享浩が死んだのを確認して短刀を取り出す。


                       ※※※


「宇部享浩、討ち取ったり!!!」

 天守の頂上から声を張り上げる。

『オオオオオ!!!』

 阿部氏の兵が叫ぶ。

「この戦ァ!!俺達の勝利だ!!!」

 阿部氏と宇部氏の小競り合い。ここまで大きくなった争いは、一人の男によって、終止符を打たれるのだった。

 こんな感じの「最強のキャラクター」を書く短編をいくつも作るつもりです。

 いっぱい出すので私のページから他の短編も見ていってほしいです。

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