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ダリアとのお話

 お茶会の服ができた。

 なら食事は?


 ダリアさんが食事に関しては一任されているようだから、お品書きを知りたいと声をかけた。

 「言ってくだされば、お部屋でお話したのに」

 ダリアさんは少し砕けた口調で話してくださる。

 好き嫌いはしない私に、あれもこれもとお菓子を出してくださる。

 「こちらが聞きたいことがありましたので。当主がしばらく不在だったと聞いています。以前のお茶会の食事を知りたくて」

 「特別大したものは用意してないです。簡単な茶菓子程度」

 そういいながら、手際よく作り上げていく。

 「季節のものを使うようにはしてるぐらいです。大抵焼き菓子で」

 とクッキーがもられていく。

 「出来立てなので香りがはっきりするかなと」

 フワッと香るのは。

 「紅茶?」

 「正解です! 茶葉を混ぜています」

 1枚、ぱくりとすると。

 「ふふふっ」

 思わず笑ってしまった。

 「美味しいです」

 ダリアさんの作るものはとても美味しい。

 どんなものも。


 私は料理に疎い。

 火が入り、生でないこと。

 味が食べられるものであること。

 それで満たされていた。

 贅沢とはなにか。

 だから、このクッキーも紅茶なのはわかるけれど、それ以上はわからない。

 きっと茶葉にこだわりがあるんだろうけれど。


 「主様はどれがお好きですか?」

 

 あっという間に並べられたお菓子たち。

 ……一つ一つ、食べていく。


 「これと。……これが特に美味しいと思いました」


 どれも美味しくて、好きなお菓子。

 ……好き……。

 うん。

 また食べたいといって笑った弟に、好きか聞いたら、好きと答えたから。

 きっと、もっと食べたい。

 また食べたいと思ったものは、好きなんだと思う。


 「ありがとうございます。ならそれにします」


 にっこりと笑ってくださった。


 「やっぱり主様はそれが好きなんですね」


 ……?

 やっぱり?


 「……食べたとき、とてもいい顔したので、そうかなって」

 少しだけ誤魔化すように笑ったけれど。

 私の顔に出ていたのね。

 ……わからないとよく言われていたけれど、顔にちゃんと出てるのね。


 「ふふっ。どれも美味しいです。この二つはもっと食べたいなって思いました」」

 素直な感想を伝える。

 私にできることはそれしかないと思ったから。

 

 やっぱりまだ、何が好きで嫌いかはわからないけれど。

 それでもおいしいと思うのも。また食べたいと思うのはちゃんとあるから。

 あの子たちが教えてくれたもので、はかっていこう。

 そうしたらきっと、この人たちにこたえられる。

 この人たちは、私の好きを知りたいと。

 私の好きにしていいというから。

 わからないけれど、わからないなりにこたえたい。

 それが、ここにいる意味だと思う。


 主人と呼ばれるほど何を持っているわけでも、しているわけではないから。

 せめて、使用人の皆さんが求めるものには答えないと。


 「また作りますね。ほかにも作ったら食べてくださいますか?」

 「ええ。もちろんです」


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