お茶会のお誘い
「悩まれるのであれば、行かないという選択もございます」
手紙を見つめている私に、ナズナさんはいつもの優しい笑みをむけてながら、紅茶を用意してくださった。
いつもの紅茶の時間。
「……行きたくないわけではありません。どちらかといえば、行きたいと思っています」
「では、それに備えてお洋服も靴もすべて用意いたしましょう」
……それはそれで心が落ち着かないのだけれど。
すべて善意。
すべて真意。
すべて……愛なのでしょう。
きっと私がそういえば、そうする。
なに一つ疑問に思うことなく。
それが心をざわつかせる。
「……先日服を仕立てていただいたばかりです」
「そうでしょうか? もうかなり前の事かと」
声も表情も変わらない。
「参加されたいと思われた理由をうかがっても?」
シーリングスタンプを撫でる。
「……お茶会を開くのなら、前もって参加しておくことで、勉強になると思って」
半分が……いえ。3割がその理由。
季節が一つ動いて、冬になった。
屋敷主催のお茶会は春に行うと予定している。
少し先のこと。
それにむけて、お茶会のことをゆったりと勉強している。
……こんなにもゆっくりでいいのかと思うほどに。
日中の私の時間はただ緩やかに、穏やかにみなさんと話をして、お茶をして、時折お茶会の流れや所作を学ぶぐらい。
自分で段とりをつけてなにかをすることはほとんどにない。
なのに、1日の流れが遅くない気がする。何もない日はとても1日が長く感じていたのに、ここではそれがない。
かといって、前のように動き回ることもない。
ただただ、穏やかに。
残りの7割は主催されるお屋敷に、お姉様が勤めれおられるから。
私より4つ上のお姉様。
とても元気で明るくて。
灯りのような人。
……お姉様に会いたい。
お姿を拝見したい。
でもそれは、私事。
主人としてなら、公務でなければと思ってしまう。
言葉としては正しくないけれど、でもけして個人的な考えで参加していいものではないはず。
少なくとも、主催のお茶会はれっきとした主人の仕事。
だからこそ。
主人としての振る舞いを学んでいるところなのだけれど。
主催者と参加者では違うだろう。
そちらについての勉強はできてない。
それに、私がいくことが、魔法使いのためになるのかしら。
……私は魔法使いのためにある。
そのためのつとめ。
「参加されるのであれば、私も同行させていただければ幸いです」
にっこりと変わらない笑みを浮かべて。
「季節にあった装いを。場所にあったものを。主としてそれは必要なこと。当たり前のことです。……これまで、そういったことがなかったかもしれませんが、ここでは、そうされるのが正しいのです。……いえ、きちんと申し上げますと」
膝をついて、私を見上げる。
「そうする権利がございます。我慢も苦労も何もない。ただただ心のままにお過ごしください。そうすることが、魔法使いのためなのです」
ナズナさんの目に私がうつっている。
……その目が少しだけ寂しそうに見えたのは気のせいかしら。
……そういえば、どうしてお茶会の招待状がきたのかしら。まだここの主人になったとこ、特段誰にも話していないのだけれど。
……ナズナさんが関係者にお知らせしたのかしら。それなら伝えてくださるだろうし、手紙が届いたときのざわつきは起きないはず。
まだ、お話いただけないのかしら。




