独り言
聞けなかった。
歴代の主人のこと。
兄弟たちが務めるお屋敷では、代々その家にお仕えするお抱えの使用人がいると聞いていた。
それに当てはめようと考えると、皆さん、ご両親なしい、親族がおられたはず。同じようにお仕えしていたと考える。
……でも、皆さんからご家族の話は聞かない。
私に親がいないことを知っていて、話題に出さないのだろか。
カンパニュラさんは、主のことを。
きっと、ご両親がお仕えしていた主人のこともご存知ということなのだろうけれど。
……何年、不在だったの?
純粋な疑問。
明言はされてない。
でも、お屋敷にある調度品からして、アストさん、ランティアさんがお仕えしていたとか考えにくい。
もっといえば、カンパニュラさんとナズナさんぐらいだろう。
他のかたがそのときにおられたとは思えない。
……でも。
みなさん、知っているように感じる。
お屋敷の古さからして、長い歴史があると思う。
何人の主がいたのかしら。
……歴代の主はどんな方?
……知りたいと思う。
うん。思ってる。
……思ってるのに。
頭のどこかで、すでに知っているという声がする。
「私はなにを知ってるの?」
なにも知らない。
私が知っていることなど、教えていただいたことだけ。
「私は誰を見られているの?」
私は私。
それ以上でも以下でもない。
「私は何を見ているの?」
目に見えるものだけ。
これまで見てきたものだけ。
そして、これから見るものだけ。
「私は」
……。
私はだれなの?
と出かけた言葉を飲み込んだ。
これはダメ。
自分の存在に疑問を持ってはいけない。
親を知らない私は、だれとも繋がってない。
私の繋がりはあの場所とここだけ。
私をスファレライトと呼ぶ先生がいて。
私をスファレと呼ぶお兄様がいて。
私を姉と呼ぶ妹たちがいて。
私を主人と呼ぶ皆さんがいる。
「私はスファレライト。魔法使いのために生きる。それがこの屋敷の主人の務め。私の務め」
くりかえし。
言い聞かせるように。
何度も唱えた。
そうしないと頭の中にいろんなことがよぎる。
整理されてない頭は、最適な回答ができない。
この屋敷にふさわしい主人。
先生は、私ならわかるとおっしゃった。
皆さんは私が主人だという。
「賢い私ならわかる。……わからないと。そうじゃないと、価値がない」
私の価値はそれしかない。
ただ。
愛される。
与えられる。
……受け取ることはできる。
でも、私のものだと言い切れない。
私のものだと主張したくない。
納得できないものは、受け取ってはいけない。
身の丈に会うものでないと。
身を守るためにも。
「私が私であるために。ここの主人としてあるために」




