ストレチアとタンケイとのお話
ゆっくりと見て回ることはなかったから、今日は時間を作って回ることにした。
……。
…………。
香りがゆたか。
色とりどりの花々。
この時期のものばかり。
ちゃんと手入れが行き届いている。
……お茶会の会場は天気がよければ、このお庭でするのもいいのかもしれない。
「お気に召していいただけていますか」
うしろから声をかけられた。
「ええ。とても手入れが行き届いていて。きれいです」
「そういっていただけてうれしいな」
「うん……」
ストレチアさんとタンケイさん。
兄弟ということだけれど。
「お好きなものはございますか?」
ストレチアさんは私に気さくに声をかけてくださるけれど、タンケイさんはあまりお話したことがない。
「この季節の花はなにかありますか?」
あまり花に詳しくない私には、好きといわれても浮かばない。
だから、季節の花を知るところから始める。
座るように椅子を引いてくださった。
「そうですね。この時期であれば」
ストレチアさんが、図鑑を開きながらお花のことをたくさん話してくださった。
その間、タンケイさんは静かに座ってるだけ。
「では、このあたりには赤いものを。こちらに青いものをしましょうか」
さらさらとスケッチブックに描かれていく。
……とっても、きれい。
「絵で思い浮かべることはできるのですが、どうも現実に起こそうとするとだめなんですよね」
申し訳なさそうに笑う。
「そういうのは弟のタンケイが上手なんです」
「そんなことは……」
首を横に降る。
「どのような庭が綺麗だと。美しいと思われますか?」
「このお庭は綺麗だと思いますよ?」
ストレチアさんからの質問の意味がわからない。
「っいえ。季節の花を聞かれたので、季節感のあるお庭がお好きなのがと思って……」
間違えてしまったという声に、ああそうねと理解した。
「ええ。季節感のあるお庭はとても綺麗だと思います。もちろん、色合いは大切ですが、季節が違うと、狂い咲きというのでしょうか。そういうのもこころ惹かれるものがありますが、せっかくの季節です。巡るものです。それを楽しみたいなと思います」
「とても。とっても。素敵です!」
まさに花が咲いたように笑うストレチアさん。
わずかだけれど、タンケイさんも嬉しそう。
私には二人の関係がまだ理解できていない。
兄弟だけれど、血の繋がりはないのでしょう。
だからといって、私とあの子達のような兄弟でもない。
繋がりはある。
ある。
でもそれが何なのかわからない。
?
ほとうに?
わからないの?
「タンケイはこうやって謙遜するけれど、庭師としての腕は一流です。みんなが口を揃えて、綺麗だと褒めるのですから」
嬉しそうに。
自慢げに。
自分の事のように。
「……みんな甘いんです。なにもできてないのに褒めるんです」
小さくポツポツと呟いている。
「丁寧に手入れをされているからこそ、お庭の美しさが保たれてると思うんです。それはお二人のしっかりとした仕事ぶりのお陰だと思うのですが」
「もったいないお言葉!」
少し大きな声になったことに、あわてて口をおさえるストレチアさんに、小さく頭を下げるタンケイさん。
お二人とお話することは、他の方達よりも極端に少ない。
いつもお庭にいるお二人だから、どうしてもナズナさんやアストさん、ランティアさんが多くなる。
だから時間を作ってお話しするために、お庭に来たのだけれど。
タンケイさんは、私と目を合わせてくださらない。そういうのが苦手な人もいることは知っている。無理に合わせようとは思わない。
私の妹にもいたから。
可愛い可愛い妹。
あの子はどうしているのかしら。
「いかがされましたか?」
黙って庭を見つめる私に、不安そうな顔を向ける。
ストレチアさんは表情がよく変わる。
見ていてとても気持ちがいい。
お兄様がそうだったから。
「ふふふっ。いえ。この屋敷の庭師はお二人でしょ。だから、お二人の思う庭を」
ストレチアさんのスケッチを受け取って。
「お二人ならこんなにも素敵なお庭を作れるのでしょう? 楽しみですし、自慢したいです」
絵画のようなスケッチ。
あの子達にも見せたいと思ったから。
花が好きなあの子がいる姿を思い浮かべたから。
きっと素敵なんだ。
それが私の綺麗だと。
美しいと思う庭。




