表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

始まり

 「先生……。ここは?」

 「今日から君がここの主人になるんだよ」

 「しゅじん?」

 「ああ。主人だ。ここには君に仕える使用人がいる。使用人には主人が必要で、主人には使用人が必要。ここには君が必要だし、君にも彼らが必要だ」

 「……どうい」

 「しっ」

 ……。

 先生が私の口に指をあてて、首を振った。

 「このお屋敷にふさわしい主人はどんな人物だと思うかい? 賢い君ならわかるだろう?」

 先生はにっこりと見慣れた優しい笑顔を浮かべている。


 ……ふさわしい人物。


 ゆっくりと顔をあげる。

 連れてこられた場所。

 目の前にあるお屋敷はとても大きくて、きれいに建っている。

 森を抜けて現れた。

 古いけれど手入れが行き届いている。


 ……人の気配が少ない。


 これぐらいの大きさのお屋敷なら使用人の数だって多いはず。

 とても静かで。

 風の音だけが耳に入る。


 ……そうなら。


 一度ゆっくり息を吐く。

 「先生。お聞きしたいことがあります」

 私の声に先生は嬉しそうに笑った。

 「なんでもいいよ」

 「ここは私を必要としている。私にとってもここは必要な場所。なら。あの場所は私を必要とされてなかったのでしょうか」

 真っすぐ先生を見つめる。

 先生の眼に私が映っているがわかる。

 ……。

 「あの場所も君が必要な場所だよ。けれど。このお屋敷のほうがもっと必要なんだ。このお屋敷以上に、君が必要とされ、君が必要とする場所はないよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ