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22 恋心の消去~3~ カイルside

 俺が一時的に恐怖を消すためだけにここにいるのだと、信じて疑わないティアを見つめる。

 いつしか、俺の言動に反応して顔を赤くする純粋なティアのことが好きになっていた。


 仕事モードのティアへと伸ばす手が震える。この手を繋げば、目を閉じれば、ティアへの想いを頭の中に描けば、俺の中からきっと、この想いは消える。

 散々悩んで、覚悟を決めて今日ここに来たのだというのに、自ら飛び込むのは怖いのだ。


 柔らかい手を握り、わずかに口角を上げた。俺の中からティアへの恋心が消えるとしても、ティアの中に残る最後の俺の記憶は笑顔がいい。


 何を思ったのか、ティアの瞳が揺れる。

 ティアは俺に笑顔を向けて、目を閉じた。


 目を閉じたティアを見つめる。男と手を繋いでいるというのに、無防備だ。この店の客は女性がほとんどのようだが、たまに男もいると聞く。ティアは男と二人きりでこんな姿を見せているのか。

 顔も見たことのない男性客たちに嫉妬した。


 いっそのこと、このまま口付けてみようか。


 そんな邪念が湧き始めたのを感じて、俺も目を閉じた。

 欲に流されてはいけない。俺のことを信頼してくれているティアを裏切ってしまう。


 俺は、出会ってから今までのティアとの日々を思い浮かべた。

 ティアと過ごした一分一秒すらもすべて、俺の中に芽生えた恋に水を与えた。


 俺が思い浮かべている記憶は、当時の感情は、すべて魔法によってティアに届いているはずだ。

 たとえすぐに消えてしまうとしても。


 繋いでいる手を介して、俺の中の記憶がティアに共有される感覚があった。

 あらかた共有できたのを感じて、そろそろだろうと勝手に目を開けた。


 これで、いいんだ。


 ティアの目からこぼれ落ちた結晶が美しい結晶を形作る様子を、息をのんで見つめる。恋心が薄れ始めた。

 いまだ目を瞑ったままにティアが受け止める前に素早く手を伸ばして、一粒だけを掠め取った。

 左手の中に握り込んで、再び目を閉じた。


 自分の中から記憶が失われるなんて恐ろしいことのはずなのに、どこか暖かい。ティアの人柄が、魔法にも表れているのだろうか。

 俺の中からティアへの想いがすぅっと消えていく。魔法の効果が強いからだろうか。恋に冷めるような感覚ではなく、まるで最初からそんなものなど存在しなかったかのように薄まり、失われていく。


 ああ。こんな感覚なんだな。


 俺は静かに受け入れた。

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