Episode 9.母方の始祖が気になるのです。
家の裏手にある丘の頂上でゴブリン二匹を倒した、私とリスティス叔母様でしたが、やはり魔力量がどれくらい増えたか気になります。
ゴブリンを目の前で二匹共に倒されてしまい、ユーレは唖然としておりますが、反撃のきっかけを作ってくれたのは、どうやらユーレの身体の一部だったようです。
今回の戦闘の功労者として、リスティス叔母様と一緒に私の部屋に住んでもらう事に決めました。
「ユーレ、おばさま、わたし、へや、いっしょ!!」
「アルシェ様!?ど…どう言う事でしょうか?!」
私は笑顔でユーレとリスティス叔母様の手をそれぞれ握りました。
「ユーレ、おとうさん!おばさま、おかあさん!ふたり、あかちゃん!アルシェ、おねえちゃん!」
リスティス叔母様は顔を真っ赤にして俯くと黙ってしまいました。
「アルシェサマ…イイノデスカ?イッショニクラシテモ?」
「うん!」
ユーレが聞いてきたので、私は大きく頷きました。
ふと気がついてしまった事があって、リスティス叔母様はゴブリンにドレスを脱がさせられたままの姿でした。
私は、ユーレに目でリスティス叔母様の姿について合図を送っていたんですが、騎士団時代の姿を見慣れているせいか気づいてくれませんでした。
「もう!おばさま、はだか!!」
「あ…!!すぐに着ますので!!お見苦しいものをお見せしてしまい、大変申し訳ございませんでした!!」
リスティス叔母様は地面の上に脱いだままだったドレスを拾い、何度かはたくと再び身に纏いました。
――――
「ひゃっ?!…んっ…ユーレっ…ダメぇ!!あ…アルシェ様、本当に宜しかったのですか?」
「もんだい、なし!!」
ユーレを、ドレスを着ているリスティス叔母様の身体に纏わせて、家の中に忍ばせる作戦を只今、決行中です。
あともう少しで家に辿り着くのですが、ユーレが久しぶりのリスティス叔母様の身体を、部屋まで我慢できなかったようです。
「はぁ…はぁ…。お願い!!ユーレ?部屋の中でなら私で楽しんでくれて良いから…ここでは我慢して!!」
リスティス叔母様のその言葉、待ってましたとばかり、急にユーレは何事も無かったように大人しくなりました。
「おばさま、ユーレ、なかよし!」
恐らく、部屋に入ったら逢えなかった半年分の色んなものがあるでしょうから、存分に二人で楽しんでもらいたいと思っています。
その為に、“悪魔”のアーシェが暮らしていたと言われている、お母様の生家へ、私だけで訪ねに行くという予定を立ててあるのです。
――リーン!リーン!
「アルシェ、きたく!!」
「おお、お待ちください!!」
玄関でベルを鳴らしましたが、出てきたのはいつも通り執事長だけでした。
私も…デルジェイム家の中での扱いは、女だからと言う事で二人の兄達に比べかなり低いのです。
ただリスティス叔母様が、私に良くしてくれているだけなのです。
「申し訳ございません。アルシェ様と少し外へ散歩をしに行っておりました。」
「困るのだよ。勝手に出掛けられてもらっては!!奥様の妹さんて事で大目に見てるが、分を弁えて貰わないと!!」
何だか私に向けても言われているようで、とても嫌な気分になりました。
「おばさま、行こ?」
「あ…え…アルシェ様!?す…すみませんでした!!」
わざと執事長の話に私は割り込むと、リスティス叔母様の手を思い切り引いて部屋に向かいました。
――――
「ユーレ?おばさま、あかちゃん、よろしく!」
リスティス叔母様に纏わりついてきたユーレは、私の部屋の中に入るとリスティス叔母様から剥がれ、人を模したスライムの姿に戻っています。
「アルシェサマ、イイノデスカ?」
私の言葉にユーレは本気になっていて、今にもリスティス叔母様とお楽しみになってしまいそうです。
「アルシェ様?!許してはダメですよ??」
ユーレはそんな話は聞く耳を持たず、ベッドの上にリスティス叔母様を押し倒しました。
「アルシェ様!!ユーレに何か言ってください!!」
顔を真っ赤にリスティス叔母様はしており、耳までも赤くなっています。
「ユーレ?おばさま、たのしむ!!アルシェ、おでかけ!!」
「えっ!?ダメですよ??」
今から行く予定のリーズランデ家には三ヶ月前、お母様と一緒に訪れる機会があり『位置記憶』をしてきました。
どちらかと言うと『位置記憶』が一番の目的だったのですが、リーズランデ家のひいお祖父様とお祖父様が私にベタ惚れでなかなか家に帰してくれませんでした。
ひいお祖母様は既に他界されているようですが、リーズランデ家は代々女系で、産まれるのは全て女子だそうです。
代々女系なのでお婿さんを貰っているのですが、その産まれた女子は、皆アーシェの面影を残しているそうなのです。
「アルシェ、あかちゃん、たのしみ!!『くうかんてんい』!!」
私はそう言葉を残すと、リーズランデ家に旅立ちました。
――ビュンッ!!
――――
リーズランデ家の住む家はいつ建てられたのか不明なのですが、デルジェイム家の住む家とは比べ物にならない位広くて、立派な造りです。
前回、お母様と一緒に訪れた際には、お母様と叔母様の住んでいた部屋と、客間に通されただけでした。
今日は…ひいお祖父様達を使って家の中を探索出来たらと思っています。
私はデルジェイム家の自室から『空間転移』を使い、リーズランデ家の玄関前に着きました。
――チリン!チリリン!チリン!
玄関の扉についている呼び鈴を、私は鳴らしてみる事にしました。
「どちら様かな?」
扉の向こうから、渋めの男性の声で問いかけられました。
「わたし、アルシェ!おじいさま、あう、きた!!」
とりあえず、名乗って目的を伝えてみる事にしました。
「アルシェちゃん!?今開けるからね?」
――ガチャッ!ガチャッ!ギィィィィッ…。
玄関の扉の鍵が開く音が聞こえ、扉もゆっくりと開き始めました。
「アルシェちゃん!!」
そう言って、男性が一人扉から出てきたと思ったら、私は、すぐさま軽々と抱き抱えられました。
「こんにちは!!」
抱き抱えられながら、私が挨拶した相手はリーズランデ家当主代行にして、ひいお祖父様のウッドヴェルでした。
「一人で来たのかい?!」
「アルシェ、まほう!ひいおじいさま、あう、きた!!」
私は頷きながらそう返事したのでした。
「流石、アーシェ様の末裔だねぇ!アルシェちゃん!!こんな小さいのに、凄い凄い!!私の自慢のひ孫だよ?」
私を抱っこしている、ひいお祖父様の手つきが…若干あやしいのが気になりますが、それくらいの方が利用できそうなので良しとします。
「さぁ、家の中に入ろうか。今日は何をして遊んでみたいのかな?」
前回は色々私の遊びの相手をして貰いましたが、その際も過剰過ぎる身体への接触がありました。
リーズランデ家に婿に入る男は、“悪魔”と呼ばれたアーシェ様を性的に崇拝する信者の資産家や富豪が殆どです。
その為、アーシェの面影を残す私も恐らく崇拝の対象の為、過剰とも言える身体への接触を繰り返すのだと思います。
そこだけが、ひいお祖父様の玉に瑕なのです。
「きょう、アーシェさま、しりたい!!しりょう、ある?」
渡りに船でしたので、今日の目的を正直に言ってみることにました。
「アルシェちゃんもアーシェ様好きなのかい?」
「うん!!だいすき!!アーシェさま、にっき、ある?」
手記や日記などが残されていれば、アーシェ様の癖や当時の想いなどが読み取れるかも知れないと思ったのです。
「おお!!うちの女系なのに興味があるとは珍しい!!あるよ?あるよ?だけどね??読めない文字なんだ…。」
「アルシェ、よめる!!みせて?」
段々と私の確信が核心へと向かって近づいて行っているようです。
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この話の主な登場人物
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名前 :アルシェ=デルジェイム
年齢 :5歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :なし
魔力量:50(二匹のゴブリンで19増えた)
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ボブ(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人、魔法騎士アルディスの末裔。
異世界転生者。
元災厄レベルの悪魔。
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名前 :リスティス=リーズランデ
年齢 :28歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :アルシェの乳母兼護衛
魔力量:303 (二匹のゴブリンで19増えた)
魔法 :中級魔法全般
スキル:剣士スキル全般
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人“悪魔”のアーシェの末裔。
元国の騎士団所属の魔法剣士。
アルシェの叔母(母の妹)。
グラマラス&スレンダー。
アルシェ崇拝者。
ユーレとは恋人同士。
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名前 :ユーレ
年齢 :不明
性別 :無性
種族 :スライム(のはず)
職業 :不明
魔力量:不明
魔法 :不明
スキル:不明
肌 :水色
髪 :長髪のような形
目 :◉
その他:リスティスが名付け親の”名付き“。
頭や髪や四肢のようなものがある。
リスティスとは恋人同士。
アルシェの部屋に密かに居候。
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名前 :ウッドヴェル=リーズランデ
年齢 :78歳
性別 :男
種族 :人間
職業 :リーズランデ家当主代行
魔力量:302
魔法 :初級魔法全般
スキル:商人スキル全般
肌 :肌色(イエベ系)
髪 :白髪
目 :青茶
その他:アルシェのひいお祖父様。
リーズランデ家の婿養子。
リスティスとアルシェがお気に入り。
過剰な身体への接触行為が玉に瑕。
アーシェ崇拝者。
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