Episode 50.叔母は分裂したスライムの子供が欲しいのです。
レーユとリスティスは女学院の寮の一室で…まだお昼の時間帯だと言うのに楽しみ始めました。
好きでもない悪魔を相手にするのとは違い、リスティスも気持ちが入り…気分がかなり昂揚してしまっているのか、私の部屋が隣にあるのも気にせず大きな声をあげております。
レーユはレーユで、リスティスに対して意地悪な事を言いながら楽しんでおります。
これが私の部屋で聞こえてきた声の真相でした。
「レーユ…?あなたの…レーユの子供が欲しいの…。ねぇ…?お願い…。ダメ…かな?」
リスティスがレーユの耳元でそう囁きました。
「僕はリスティスの夫のユーレでは無いんだぞ?それでも僕の子供が欲しいのか?」
「私ね…?レーユの都合の良い”モノ“にして欲しいの…。」
リスティスの口から衝撃の告白をレーユは受けたのです。
「どう言う事だ?」
「私…レーユが助けてくれなければ、ルジェンドフの都合の良い”モノ“にされる事…決まってたじゃない?それに、あと数日でルジェンドフに引き渡されるハズだったし…。」
そんな重大な事をリスティスは一人で抱え込んで黙っていたのです。
「リスティスが居なくなったら、残された子供達はどうなる?」
「ユーレが居るじゃない?だって私とユーレ二人の子供だよね?妻ばかりが子供の面倒見るのっておかしいと思うし。」
レーユはリスティスの言葉に共感し、頷きました。
「そうだな!確かに、二人の子供だよな?じゃあ…遠慮なくリスティスを僕の”モノ“にしてやる。」
「はい…。」
リスティスが頷き応えると…レーユが再び重なり、リスティスで楽しみ始めました。
――――
それから間も無くしてアーシェが部屋に乱入して来たのです。
そして、今…私はレーユに対して『記憶読取』を行って、私の見知らぬレーユが体験した記憶を追体験しておりました。
「ねぇ…レーユ?怒った表情してたのは演技だよね?」
「ハハハハ!!バレてしまいましたね!そうです演技でした。(どうか…皆には二人のこと秘密にして下さい。)」
レーユは『記憶読取』した状態のままの私に、最後の部分は思考として伝えてきました。
「レーユ?これからも頑張ってね?」
私はレーユに向かいウインクで返した時、リスティスの首につけられた契約の首輪が目に留まりました。
「リスティス?その首輪…この部屋で反応したり、絞まることあった?」
「いえ…。普段は頻繁に首を絞められるのですが…。この部屋では…」
「当たり前だ!!この部屋には、私の障壁が張られておるからな?」
私からのリスティスへの問いにアーシェが割り込んできました。
「叔母様?その首輪外して欲しい?」
「はい…。アルシェ、お願いできますか…。私…怖いのです…。」
リスティスに私は手を両手で掴まれてしまいました。
「しょうがないなぁ?『変身』…。」
私を闇が包み込みました。
アーシェは私の目の前に陣取ると、嬉しそうな表情で今か今かと待ち構えております。
私を包み込んでいた闇が身体の中へ取り込まれました。
「あ…。彼らが主張していた…犯人の特徴…。」
アヴィレネーナの姿になった私を見たリスティスがポツリとそんな言葉を溢しました。
「あの時、私の姿を見ていた者が居るって事かい?まぁ…いいか。さぁ、リスティス?首を見せな?」
「私と一緒に過ごしたあの可愛いアルシェは…本当は存在しないのですよね…?」
私は思わず、ベッドの上にいるリスティスを抱きしめました。
「私はアルシェでもあるが、アヴィレネーナでもあるだけさ?リスティスは、この姿は嫌なのかい?」
「いいえ…。ただ…アヴィレネーナ様がお美しすぎて…こんな私がお側に居ていいのか迷うのです…。」
私はリスティスの頭を撫でながら、首にはめられている契約の首輪を…私の首に移しました。
「アヴィレネーナ様?!何を…!?」
リスティスは私の首に移された契約の首輪を見て大声をあげました。
「皆んな、よく見とくんだよ?」
そう言うと、私は契約の首輪に手を翳しました。
「契約を破棄するには…その代償を払わないとね…。」
すると契約の首輪から一体の悪魔が姿を現しました。
「お前か契約を…。ん!?何てこった…これはアヴィレネーナ様ではありませんか…。一体どうされたのです?この契約はルジェンドフ様とリスティスという人間との間で交わされたものなので…。」
「ほら!!早く…私の身体好きにするといい…。」
契約を破棄したい場合…契約の悪魔に身体を捧げなければ
ならないのです。
勿論、契約の悪魔が満足すれば契約の破棄が行われるのですが…大体の場合、満足せず契約の悪魔のモノとされ、魔界の夜の店へ売り飛ばされてしまいます。
「お…畏れ多くて…アヴィレネーナ様とは無理です…。今回に限り良しとします。次は誰であろうと、契約者さんでお願いしますね?」
契約の悪魔はそう言い残すと、私の首にはめられていた契約の首輪と共に消えました。
「リスティス?何かあった時の為にリーズランデの家にヴィレースを置いてるんだ。あの子は私の可愛い孫娘だからね?素直に話せば、力になってくれるハズだよ?」
「はい…。」
確かにヴィレースは表情が豊かでは無い為、怖く感じるかもしれませんが、今回レーユの協力をしてくれたので、大丈夫かと思います。
「アヴィレネーナ様、契約を解除していただいて…ありがとうございます。」
「ありがとうございます!!」
レーユに続いてリスティスも私に向かい礼を述べると、揃って頭を下げました。
「アヴィレ様!!そろそろ…講義始まるのでは!?」
――ドンドンドンドン!!
「アルシェ!!早く!!早く!!」
二人とのやり取りをしているとアーシェが騒ぎ始めたかと思えば、レーユの寝室の扉の外をフィーナが叩いております。
「『変身解除』…。」
アヴィレネーナの身体から闇が解き放たれ、アルシェの姿に戻りました。
「じゃあ、レーユ?お留守番頼みます!!」
「アルシェ様?お忘れ物無いようでしたら、行きますよ?」
――ギィィィィッ…
そう言うとアーシェはレーユの寝室の扉をそっと開けました。
「遅い!!もう!!遅れちゃう!!」
フィーナが怒り狂っておりましたが、アーシェは冷静に私とフィーナの手を徐に握りました。
「え?!」
「『空間転移』!!」
フィーナが驚く暇も与えずアーシェが『空間転移』の魔法を唱えました。
――ビュンッ!!
『空間転移』の魔法は現れる場所を考えておく必要があり、下手すると現れた場所に人や物があり衝突して死んでしまう場合もあります。
――スタッ…
「ええええええええ?!」
『空間転移』後のフィーナの第一声はそれでした。
まぁ…無理もありません。
「何で、うちの女学院の屋上なのよ!!」
「ここでしたら、誰も居ないかと思いましたのですが?」
そう、アーシェが『空間転移』先に選んだのは、屋上でした。
ところが、アーシェのアテは外れ…屋上で教師が女生徒と楽しんでいる最中の目の前に現れたのです。
「せ…先生…?」
何事も黙って居られない性格のフィーナは、教師へ声を掛けてしまいました。
「フィーナ様!?こ…これは…。」
「その子の為にも言い訳しないであげてください。そう言う訳で、後程、学院長の部屋までお願いしますね?」
明らかに…学院長の孫娘であるフィーナを目の前にして、教師が女生徒のせいにしようとしたフシが見られて、フィーナはそう釘を刺したように聞こえました。
「アルシェ?行くよ?講義に遅れちゃう!!」
フィーナが私の手を引いて、屋上の扉の場所まで連れて行かれました。
去り際女生徒の方を見たら、教師に向かって泣きながら何か言っておりました。




