Episode 48.スライムが窮地を救い叔母から壮絶な経緯を聞くです。
ルジェンドフの配下の悪魔達はリスティスを連れていく道中楽しもうと、少し手足の拘束を緩め体勢を変えようとしました。
「いやああああ!!」
リスティスが隙を見て少しだけ動かせる身体を使い、暴れてみせたのです。
悪魔達は何故かリスティスを殴ったりするのを躊躇してしまい、隙が出来たのです。
――グチョンッ…!!
その一瞬の隙を見てレーユはリスティスを取り込むことに成功しました。
リスティスは取り込まれた際、暴れそうになりましたが、直ぐに感触でスライムだと分かると大人しくなりました。
「何だ!?」
「消えたのか?!」
ルジェンドフ配下の悪魔達の手元からリスティスが消えた事で、周りで見ていた悪魔達も騒ぎ始めました。
「何かがリスティスちゃんを飲み込んだぞ?」
「俺もそう見えた!!」
周りの悪魔達の存在はレーユにとっては大きな誤算でした。
近くで飲み込めば気付かれにくいと思っての事なのですが、遠くから見られていては元の子もありません。
「リスティスちゃんを探せ!!」
レーユにはもう大勢の悪魔達の目を掻い潜り、見つからずに先程潜ってきた門へ逃げ込むしか道は残されておりませんでした。
「お前ら!!探せ!!」
「見つけたら暫く好きにさせてやるぞ?」
その言葉に悪魔達は色めき立ちました。
レーユは見つからないように、リスティスを身体の中に取り込んだ状態で必死に門まで向かって居ましたが、成人女性一人分の体重が増しており、レーユは思うように前に進めずにおりました。
――クンクンクンクン…
「おい…この辺りからリスティスちゃんのいい匂いがするぜ?」
一体の鼻のきく悪魔がリスティスの匂いを嗅ぎつけてしまいました。
先程、レーユがリスティスを取り込む際、体液か何かが身体の表面に付着してしまったのでしょう。
「リスティスちゃん?今出てくれば、この事を水に流してやるからよ?」
「死罪の判決を、ルジェンドフ様に泣いて縋って、条件付きで肉体労働にしていただいたんだよな?」
レーユの身体の中にいるリスティスが急に涙を流し始めました。
この時、レーユは別の事を思い出していたようで、それの喜びの方が強く気付きませんでした。
「誓ったよな?ルジェンドフ様にこの身体を捧げるってな?」
「その首輪がルジェンドフ様との誓約の証だからな?」
配下の悪魔達はリスティスに聞こえるように逃げ場はない事を主張しておりました。
「『空間転移』!!」
――ビュンッ…!
そう、レーユの思い出した事は、『空間転移』でリーズランデ家を訪れた事でした。
ユーレ時代では不可能でしたが、アヴィレネーナのおかげで見よう見まねで『空間転移』を使う事が出来たのです。
今日のお昼に初めてユーレは『空間転移』を試してみたので、この追い込まれる状況で使えたことすら忘れていたようです。
――スタッ…
「さて…リスティス?色々聞かせて貰うよ??」
『空間転移』で二人が降り立ったのは私の部屋のレーユの寝室でした。
――ブチュンッ!!
部屋のベッドの上に向けて、体内からリスティスを放出しました。
見る見るうちにスライムの身体から、クロヴィスの人間態であるクローズに似た姿へレーユは戻りました。
「あ…あの、助けていただいて本当にありがとうございます。ここ…は?」
そう言いながらもリスティスは部屋を見回しました。
「…え?!アルシェの部屋ですか?」
レーユが言うまでもなくリスティスは、部屋に置かれた調度品でリーズランデ家から持ち出された物だと分かったのです。
「良く分かったね?リスティス。」
「あなたは…スライム、でしたよね?でも…ユーレとは違う…。」
リスティスはレーユがスライムと言うことまでは理解しているようですが、まさかあの日目の前で分裂したもう一体のユーレとは思いもしないようです。
――ポン…
レーユはベッドの上に座るリスティスの頭の上に手を置きました。
「僕の名前はレーユ。アヴィレネーナ様に名付けて貰った…。」
「まさか?!あなた…ユーレが分裂したもう一人のユーレ…なの?」
私の名前が出た瞬間、リスティスはレーユの言葉を遮ってそう言いました。
「そうだよ?リスティス。ずっと…君に逢いたくて堪らなかったんだ。」
「で、でも…。人間の姿だし…言葉だって…。」
どこからどう見ても人間にしか見えないユーレの分裂体のレーユに…リスティスは戸惑いを隠せない様子です。
「こういう姿、リスティスは嫌い?」
「…ううん!!好き…だよ?でも…ユーレって思うと…何か違う感じがして…。」
するとレーユはベッドの上に座るリスティスの横に腰掛けました。
「まぁ、僕はユーレであってユーレじゃないから。でも、リスティスを想う気持ちはユーレと…いやユーレ以上に強いからね?」
「うん…。」
はじめはリスティスは嬉しそうな表情でしたが、次第にどこか浮かない表情になっていきました。
「ねぇ?リスティス?君がルジェンドフの裁判で死罪の判決を下され、命乞いした経緯を教えてくれよ?」
急に大声をあげて泣き出したリスティスは…レーユに抱きついてきました。
するとレーユはリスティスを優しく自分の身体の中に包み込みました。
――――
リスティスがレーユに語った経緯はこうです。
今から十日程前の事です。
リスティスは買い物をしに、近くの街まで出かけておりました。
この日はヴィレースやレスティアお母様は用事で時間が合わず、リスティス一人での買い物でした。
「あれ?!リスティスちゃん!!」
買い物中に聞き覚えのある声がしたのでリスティスが振り返ると、そこには見覚えのない男達がおりました。
「あの…どこかでご一緒されましたでしょうか?」
「“リズの部屋”でたっぷり楽しませてあげただろ?」
その言葉を聞いたリスティスの表情は…一瞬にして強張りました。
「こ…こんな所まで…。もう私は足を洗いましたので…。」
――ガシッ!!
「いや!!」
男の一人がリスティスの腕を掴むとリスティスが声をあげました。
「騒ぐんじゃないぜ?リスティスちゃんは、ルジェンドフ様から裁判の為に出頭命令が出されているんだぜ??」
「さ…裁判!?」
リスティスは裁判と言われ…顔から血の気が引いていったそうです。
「大人しく俺達に着いてきた方が身の為だぜ?」
人間に擬態した悪魔にそう言われ、リスティスは路地裏に連れ込まれたそうです。
「ほら、門に入った入った!!」
するとそこには空間転送の門があり、急かされるように門をリスティスは潜らされました。
門を潜り抜けると、大きな建物が目の前にあり…周囲の景色から魔界である事が分かったそうです。
「裁判所に着いたぜ?リスティスちゃん、入り口まで行ってくれ。」
一緒に門を潜った人間の男達は悪魔の姿になっておりました。
言われるがまま、裁判所の入り口に向かうと、入り口で着ている衣類を全て脱ぐように指示されたそうです。
危険な物の持ち込みがない事が分かると、裁判所の悪魔達によりリスティスは後ろ手に拘束されてしまったそうです。
そのまま連れられて行くとそこは法廷でした。
裁判長の席には知的な悪魔が居り、証言台に立たされたリスティスはその悪魔から、魔界の“リズの部屋”を中心としてその一帯の広範囲を跡形無く塵と化させた罪に問われました。
その裁判長こそ、魔界の序列四位のルジェンドフでした。
「罪人リスティスに死罪を求刑するが異論のある者は?」
リスティスには弁護する者が居らず、死罪を求刑された事で、激しく動揺し取り乱し大声で泣き始めてしまったそうです。




