Episode 47.叔母は言われの無い罪で肉体労働中です。
リーズランデ家のリスティス達が生活する部屋を訪れたレーユでしたが、部屋にリスティスは居りませんでした。
家の中を探しにレーユが廊下に出た所、ヴィレースに出会しました。
ヴィレースと共に部屋に入ろうとすると、鍵がかかっており不審さを感じた二人は部屋の中を調べることにしました。
すると部屋の隅に擬装された空間転送の門を見つけた二人は、以前のリスティスの行いを知って居るので門の先へ乗り込むことになりました。
ヴィレースはレーユを身体に纏い透明化した姿で門の上に乗り乗り込んで行ったのです。
二人が空間転送された先は何処かの地下牢でした。
すると、魔界で行われていたような…”リズの部屋“と同じような行列や声が聞こえて来たので、見つからないように行列の先へと急ぎました。
因みに、今私がレーユから言われ『記憶読取』した記憶を語っております。
私の側では、怒るレーユにしょぼくれるリスティス、それを見守るアーシェとかなり混沌としております。
こんな昼下がり…なかなか経験出来ないと思います。
そろそろ寮の私の部屋から教室に戻らないといけないので、痺れを切らしたフィーナが扉を少し開け覗き込んでいる姿も見えました。
――――
話は戻り、行列の先頭まで辿り着いたヴィレースとレーユの二人は、目の前で行われているリスティスと悪魔四体のあまりにも刺激の強すぎる光景に愕然としておりました。
またもやリスティスは『発情』スキルのせいで抑えられなくなっているのか、他に何か思惑でもあるのか、それとも強制させられているのか、この時点では分かりませんでした。
それにしても…地下牢に響き渡るくらいの物凄い音を立てており、リスティスの身体への影響も心配です。
よく見るとリスティスの首には、擬装され見えない首輪のようなものがはめられており、それには魔法で出来た鎖が繋がっていて、その先は地下牢の壁に括り付けられておりました。
地下牢の檻には札がつけられており、魔界の文字で囚人番号と執行中の刑が記されており…“日中の肉体労働”とありました。
「まさかリスティスちゃんが捕まるなんてねぇ?」
「あの地域が吹き飛ぶ寸前まで、その爆心の“リズの家”に居たんだから仕方ないだろ?」
「まぁ、それで一年の刑なら軽いんじゃないか?」
「リスティスちゃん頑張って刑に服してくれよ?」
そんな事を悪魔の男達に言われながら、リスティスは悔しそうに相手をさせられておりました。
「ふぃー。よし、交代だ!次のやつ来いよ?」
そう言うと一体の悪魔がリスティスから離れると、一体の悪魔が場所を代わり、新しい悪魔が来ました。
「はーい。皆さん、そこまでですよー?」
そう言ってヴィレースが悪魔達の前に姿を現しました。
「ゔぃ…ヴィレース様!!」
悪魔達は手を止めるとリスティスから離れ、並んでいた悪魔共々一斉にヴィレースの前に平伏しました。
「裁判が開催されたなんて私、聞いてませんけど?判事の私が、呼ばれてもおりませんし?魔王様に聞かなければなりませんね!!」
「え…?!と言う事は…。」
序列二位のクロヴィスは、魔王より最高裁判官を任されていたのですが、クロヴィスが倒れた今、孫娘ヴィレースを判事として魔王は据え、序列十位以下の者の裁判はヴィレースが全て受け持っていたのです。
「この刻を以て、リスティス=リーズランデへの裁判は無効と致します。よって、お前達は即刻この場より立ち去りなさい。」
「いや?ルジェンドフ様が裁判官をされたのですよ?裁判は有効ですよ!!」
ヴィレースに異を唱える悪魔が一体おり、ルジェンドフの名を出し裁判の正当性を訴え始めました。
「(ヴィレース様?ハッタリをしても宜しいですか?)」
「(まさか?あれ…されるのですか?)」
レーユがヴィレースにしか聞こえない声で何やら思い付いたようです。
「(私が離れる際、透明化して離れますので、ヴィレース様の肌を晒すことになります…。)」
「(大丈夫ですよ?衣服ぐらい何着でも収納してありますので。)」
ヴィレースのその言葉を合図にレーユは身体から一瞬にして離れると、身を隠しました。
「何だい何だい?おお!!愛しのヴィレースでは無いか??」
わざとらしくレーユは身振り手振りを交えてクローズに酷似した姿で現れました。
その場にいた悪魔の誰もがザワつき始めたのです。
「お…お祖父様?!ルジェンドフの放った魔人に倒されたのでは無いのですか??」
「そんなことは後の話だ!!そこに居るのはアヴィレちゃんの今の叔母上じゃ無いのか??」
いかにもクロヴィスが言いそうな言葉に…レーユは本当にユーレの分裂体なのか、私の中でも怪しくなって来ました。
そう思って、レーユの記憶を辿ってみたのですが、分裂前もユーレと同じ記憶しか確認出来ませんでした。
「はい。ルジェンドフが勝手に裁判を開廷し、リスティスが裁かれたようなのです。」
「ヴィレース?悪いけど、魔王様にこの件を連絡して貰えるかな?」
ヴィレースはクロヴィスに扮するレーユに一礼すると、空間転移したのか姿が見えなくなりました。
レーユの迫真の演技と、ヴィレースが空間転移した事で、周囲の悪魔は一体を除いてクロヴィスだと信じきっておりました。
「ルジェンドフ様に連絡…」
――ボゥッ…!!
先程の悪魔がそう言うか言わないかの刹那、レーユが手を翳すとその悪魔は煉獄の焔に包まれ一瞬で消えて無くなりました。
「こ…この焔は…!!魔王様、クロヴィス様、アヴィレネーナ様しか使えない焔!!」
レーユが放った焔を見た一人の悪魔がそう声をあげました。
確かに…今の焔は、最古級悪魔でしか知り得ない古の魔法でした。
レーユがなぜ使えるのか…よく考えてみると、ユーレが私と融合した際に、相互の記憶が混じり合っておりました。
その時に見た記憶、私から吸収した魔力が、私から名付けられた事で進化し、分裂元のユーレとは比べ物にならない力を得たのでしょう。
「他に死にたい奴居る??」
本当にクロヴィスの様な口調で、焔を見た悪魔達はレーユに恐れ慄いている様に見えました。
レーユがリスティスがいた方にふと目を向けると、数体の悪魔がリスティスが騒げない様に口を塞ぎ、手足を拘束して、どこかへ連れて行こうとしておりました。
「おいおいおい?お前さん達、何してるのかな?」
「まだ完全に仕上がってませんが、この罪人リスティスをルジェンドフ様に献上せねばなりませんのでね?」
恐らくリスティスは魔界での”リズの部屋“の噂を聞いていたルジェンドフが我が物にしたいが為に裁判を開き、有罪として肉体労働の刑を科して、配下の悪魔達に自分好みに仕込ませるように手を下したのでしょう。
「ルジェンドフが勝手に開廷した非公式な裁判なのだろう?罪人も何も…なぁ?悪い事言わないから、そのご婦人から手を離してやれよ?」
「無理です。ルジェンドフ様がお怒りになられますので。では、失礼し…」
クローズの姿をしたレーユに対してもルジェンドフの配下と思われる悪魔は怯む事なく強気な姿勢を取っておりました。
ですが、リスティスが連れて行かれそうな場面でレーユが怯むわけがありませんでした。
あたかも瞬間移動したようにレーユは姿を消すと、リスティスの元へ駆け寄りました。
「消えた?!」
「おい!!どこだ!?」
「相手にしなくていい!!リスティスをルジェンドフ様の元へ連れて行くぞ?」
どうしてもリスティスを連れて行かなければならないような雰囲気が配下の悪魔から滲み出ておりました。




