Episode 46.孫娘とスライムが叔母を探しに行くのです。
先程まで寮の私の部屋では、寝室のベッドの上でフィーナに馬乗りとなり、アヴィレネーナの姿を見せていました。
その少し前に、レーユがリスティスの事が恋しいと言う事でリスティスに逢いに行くことを許可しました。
そして今、何故か寮の私の部屋で使用人の部屋に住む、リスティス叔母様の夫ユーレの分裂体であるレーユのベッドの上で…レーユとリスティス叔母様が裸で寝そべっております。
しかも、レーユの表情は怒りに満ちており、リスティス叔母様を怖い目で睨みつけているのです。
「ね…ねぇ?レーユ?一体何があったの??」
「アルシェ様!すみません…リスティスを連れ帰って来てしまいました。」
私に向かって本当にすまなそうな顔をして、レーユが頭を下げました。
「何があったかは…レーユ?『記憶読取』させてもらってもいい?」
「口頭で説明差し上げるより早いかと思います。アルシェ様のお手数でなければ、宜しくお願いします。」
私はレーユを手招きして、ベッドの端に腰掛けました。
「『記憶読取』!!」
――ブゥンッ…
ユーレの記憶が私の頭の中へと入って来ました。
「なるほど…。レーユも災難だったね…。うちの子孫がほんっと申し訳ない…。」
――――
私を覆っていたユーレが、私から離れ落ちてリーズランデ家に空間転移する所まで…記憶は遡ります。
――スタッ…
リーズランデ家のリスティス一家の部屋にユーレは降り立ちました。
ところが、居るはずのリスティスの姿が部屋の中にありませんでした。
勿論、今日は平日でアルリスとアヴィルグはそれぞれの学院でお昼を食べている時間帯ですので、居るはずがありません。
静まり返った部屋をレーユは後にして、家の中を探し始めました。
「あら?あなた、アルシェお祖母様のとこに行ったユーレの分裂体ではないですか?」
丁度、レーユが部屋を出たところ、廊下を歩いていたヴィレースに声をかけられたのです。
「はい。レーユと申します。すみません、リスティスが何処にいるかご存知では無いでしょうか?」
「リスティス?部屋に居るはずですよ?」
ヴィレースの回答は、レーユの予想を超えるものでした。
「今、ぼく…その部屋から出てきましたよね…。」
「え?!夕方頃にはその部屋から出てくるのだけど…。少し…お部屋覗きますけど、宜しいですか?」
レーユが頷くとヴィレースは扉の取っ手に手をかけました。
――ガチャ…ガチャ…
「開かない…。リスティス達だけしか開かなくしているのか…。」
――ガチャッ!
ヴィレースはそう言うと、扉の鍵を開けてみせました。
「では、気を取り直しまして…。」
――ギィィィィ…
扉をゆっくりと手前に押し込みヴィレースを先頭にレーユが部屋の中へと入りました。
「はぁ…。また悪魔の絡んだ案件のような気がして来ましたね。レーユさんは気が付きませんか?」
ヴィレースにしては珍しく、敬称をつけて話しかけました。
まぁ、レーユの姿が…祖父のクロヴィスが人間に擬態したクローズにそっくりだから、なのかもしれません。
「微かに…悪魔の魔力の痕跡が有りますね。ここでしょうか?」
部屋の隅に、人が一人立てる不自然に物が置かれていない場所をレーユが気付きました。
「はい。擬装されておりますが、恐らく空間転送の門の類でしょうね。ですが、魔物のあなたが…よく気付けましたね?」
「はい。ぼく達には…少しですが、アヴィレネーナ様の魔力が流れ込んでおり、しかもぼくは直々に”名付け“て頂いておりますので…。」
私がレーユに対して”名付け“たその場にはヴィレースも居りましたが、私とユーレが融合した影響で魔力が流れ込んだ事は知らなかった様子でした。
「お祖母様の魔力を取り込んだと言う事…ですか。それより、この門の先に飛び…門を壊して来なくてはなりませんね。この家の者以外転移して来られない障壁を張っているのですが…逆手に取られてしまいましたね。」
恐らく、何者かがリスティスに何らか施した門を持たせ、家に帰らせて部屋に置かせたのでしょう。
そして、転移する意思のある者だけ通すようにしてあるのだと思われました。
「ぼくは門の先へ行こうと思いますが、ヴィレース様は如何なされます?」
「勿論、お祖母様より直々にこの家の守護を任された身として、許すわけにはいかないです。ですので、この門を企てた輩については私が引き受けます。」
ヴィレースはやる気満々と言った面持ちでレーユにリスティスを唆したモノに対する話をしてきました。
「では…ヴィレース様?ぼくを纏って透明化して行くのは如何でしょう?」
「お祖母様が以前、ユーレを纏った際にされたと言うものでしょうか?」
レーユはヴィレースの問いに対して深く頷きました。
「では…宜しく頼みます。変な真似をしたら分かってますよね?」
ヴィレースは今着ている使用人の服を脱ぐと、近くにあった椅子の上に畳んで乗せました。
「失礼します。」
「ひやっ?!」
レーユがスライム体に戻り、ヴィレースの身体を覆い始めたのですが、私もそうだったのですが冷んやりしてビックリしたようです。
「だ…ダメダメ…!!そこはダメええええええええ…。」
ヴィレースの叫びも虚しく、大事なところまでレーユの身体で埋められてしまいました。
「そっちはダメ!!お願い!!許して!!」
「失礼しました。こちらは未開なのですね。」
私も初めて知ったのですが、ヴィレースにも大事な相手がいた時期があったようです。
てっきり本当に女性しか興味が無いかと思っておりましたが、そうでも無いようです。
「そこは…本当に大事な人の為に、取ってあるので…。前は若い時の過ちで…捧げてしまったので。」
「そうでしたか。リスティスは出逢った頃、騎士団の団員でしたが、男達の楽しむ道具にされ続けていて酷い状態でした…。」
レーユの言葉にヴィレースは言葉を失いました。
「な…っ。そうだったのですか…。」
「アルシェ様がお生まれになり、レスティア様より乳母として呼ばれたので…退団する事が出来、手遅れにはならなかったのです。」
「レーユさん?早く…リスティスの所に急ぎましょうか…。」
レーユを纏ったヴィレースは、部屋の隅にあると思われる…空間転送の門の上に乗りました。
「『透明化』!!」
「レーユさんありがとうございます!!では、、行きますよ?『空間転送』!!」
――ブゥンッ!!
そうヴィレースが叫ぶと、一瞬にして空間転送されました。
――スタッ…
「リスティスちゃん!!いいねいいね!!」
「ほら!!ほら!!」
「いいぞ?いいぞ?」
レーユを纏って透明化したヴィレースは…何処かの薄暗い地下牢に転送され降り立ったのですが、明らかにリスティスと楽しんでいる男達の声が聞こえて来ました。
「んっ!!んんっ!!」
女のような声も混ざって聞こえてきましたが、状況的にそれはリスティスの声であることは明白でした。
意を決め二人で地下牢を少し進むと薄明かりが見えたのですが、悪魔達の行列が出来ておりました。
「おい!!まだかよ?!」
「早くしてくれよ!!」
「タダなんだから文句言うなよ!!」
並んでいる悪魔達がこちらからは見えない場所にいる悪魔と口論になっておりました。
「んんんん!!んっ!!んんんん!!」
とても苦しそうなリスティスの声も聞こえてきています。
「おい!!リスティスちゃん壊すなよ??」
ヴィレースとレーユは気付かれないように行列になっている悪魔達の横を急いですり抜けると、衝撃の光景が目に飛び込んできたのです。




