Episode 43.私の女学院生活は退屈しないのです。
「は?」
「キャアアアア!!」
「きゃあ!?」
お手洗いの中で悲鳴があがりました。
一瞬何が起きたのか理解するまでに時間がかかりました。
「あ…。」
衣服に擬態していたレーユが身体から離れていったのをすっかり忘れて、個室から私は出ていってしまっていたのです。
「なんだ、アルシェじゃないか!あんた、なかなか良い身体してるじゃない?」
高等部の中で、一番関わりたくない相手がお手洗いの中で取り巻きを連れて居りました。
普段私の傍らには、この学院の創設者の子孫で学院長の孫娘のフィーナが一緒にいるので誰も手出しして来ないのですが…私一人となると状況は一変します。
「さぁ?アルシェ、こっち来な?」
「はい…。」
どちらかと言えば…アルシェとしての私は、虐められっ子気質で、学院内で力のあるものには…逆らえず言われるがまま、されるがままで従ってきてしまっておりました。
「流石、メス猫ちゃんだ。良い子だねぇ?」
――グイッ…!!
「ほら、もっと足開きな?見えないじゃないか?」
「はい…。」
私が逆って暴れないように…取り巻き二人は、私のそれぞれの腕を両側から強く抱き抱えております。
――グイイイイッ…!!
「痛い!!」
私の大事な所を、先程よりも強い力で拡げてきたのです。
「ああ、ゴメンゴメン。これくらい拡がるかと思ったよ?なぁ??」
「はい!シェザルネ様!!」
「シェザルネ様は悪くないです!!メス猫が悪いんです!!」
この女生徒はシェザルネと言って、気の弱そうな生徒を食いものにして…様々な事をさせていると有名でした。
今も私への蛮行を正当化しようと、二人の取り巻きに同意を求めようと声をかけたのです。
「メス猫ちゃん、今日はご主人様は一緒じゃ無いんだねぇ?」
「い…一緒に居ました。」
お手洗いに入るまでは、フィーナもアーシェも一緒に居た筈でした。
「姿が見えないねぇ?まぁ、今からたっぷり良い事してやるから期待してな?」
私の大事な所へシェザルネは顔を近づけると、そう言いました。
「嫌です!!」
私は抵抗すべく、シェザルネの取り巻き達の手を振り解こうと試みました。
「お前達!!メス猫ちゃんが、動かないようにするんだよ!!」
「はいっ!!」
――ググググッ!!
「痛い!!痛い!!」
「ほら?抵抗すると骨折れるよ?」
取り巻きの一人が私の腕を…折るような力の掛け方をしたので思わず私も声を上げました。
――ググググッ!!
「折れちゃう!!やめて!!やめて!!」
「メス猫ちゃんが暴れるからだろ?諦めて大人しくしときな?」
シェザルネは取り巻きの行為を制止する事なく、私に向かいそう言い放ちました。
私は…抵抗するのをやめるしかありませんでした。
「なかなか往生際が悪かったねぇ?腕折られちまえば良かったのに!!はははは!!」
非力な自分の肉体を呪ったのは…今日が初めてでした。
変身すれば、元のアヴィレネーナの身体ならば…こんな女達はひと睨みで支配出来るのです。
今の身体は、元の身体の有していた魔法やスキルは引き継がれておりますが、身体の機能はほぼ人間と同じです。
最近、アヴィレネーナになる事が多く…トラブルもアーシェが片付けてくれていたので、すっかり忘れておりました。
この身体では無詠唱は出来ないけれど…有詠唱なら魔力量に応じて出来る事をです。
「『支配』!!今日からアルシェの忠実な下僕になれ!!」
――――
――ギィィィィッ…
お手洗いの扉を開けると、周囲には誰もおりませんでした。
――バタンッ!
私はフィーナとアーシェを探す為、お手洗いの外側へ出ると扉を閉めました。
とりあえず、今はお昼だと思うので…恐らく二人は食堂の席を確保しに行ってくれたのかもしれません。
私は、慣れない場所への空間転移や瞬間移動は、出現した場所に居る他者との衝突もあり得るので、自分の足で食堂へ急ぎました。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。」
息を切らせながら、私は食堂まで辿り着きました。
「アルシェ!!こっちこっち!!」
フィーナが大声で私に手招きしていました。
「はーい!!」
私はフィーナに手を振って、フィーナとアーシェが座っている席の方まで急いで行きました。
「もう!アルシェ様?遅いで…ん?!制服の色…違いませんか??」
「アルシェ?それ…隣の学級の制服だよね??どうしたの!?」
私はフィーナとアーシェの間に空けられた席に腰掛けると、先程の一部始終を話しました。
因みにフィーナは右、アーシェは左です。
「お手洗いで襲ってきたシェザルネ達を…逆にお仕置きしてきたって事?!」
「まぁ、そんな感じ?制服はさ…レーユがリスティス叔母様の所飛んでっちゃって。」
「では、お食事後に私が…アルシェ様の制服と下着取りに行って参ります。」
それから、私はアーシェが毎朝作って用意してくれているお弁当を食べ始めました。
「フィーナさん?少し…私は部屋に取りに戻りますので、アルシェ様の事宜しく頼みます。目を離さないで下さいね?」
「任せといて?うちのアルシェに…これ以上、手を出させないから!!」
――ビュンッ!
アーシェは先にお弁当を食べ終わると、フィーナに私の事を頼むと空間転移を使い消えて行きました。
「それで…シェザルネ達どうしたの?」
「どうかな?まだ、お手洗いに居るんじゃないかな?食べ終わったら、見に行こっか?」
お弁当を食べていると何やら、食堂の外の方が騒がしくなってきました。
「アルシェ?何か、向こうの方騒がしいけど…さ?」
既に昼食を終えていたフィーナは、黙々とお弁当を食べている私に話しかけてきました。
「…えっ?」
「だーかーらー!!向こうの方がね…??」
――スタッ…
「アルシェ様、ただいま戻りました。」
丁度いい時にアーシェが部屋から戻って来ました。
「ありがとうね?アーシェ。」
「いえ、とんでもないです。そう言えば…レーユの部屋の前を通ったらお楽しみ中の声がしてきまして…。」
「相手はリスティス叔母様?」
私はアーシェのその言葉に、ふと…レーユの事なので、リスティス叔母様でも連れ込んだのではと仮説を立て返しました。
「よくお分かりになられましたね!相手はリスティスでしたが…しきりにレーユに謝っておりましたよ?」
「と言うかさ、アーシェさん…覗いたの?」
レーユに謝らなければならないような事を…リスティス叔母様がしていたという事でしょうか?
フィーナがいる事をすっかり忘れておりましたが、鋭い指摘をアーシェにしてくれました。
「それは…万一、良くない輩が部屋に入り込んで居ては困りますからね?」
「そ…そうよね…。そうだ!あ、アルシェは…まだ食べているの?!」
フィーナは反論する言葉が見つからなかったのか、話の矛先を私に向けてきました。
「まぁまぁ…フィーナさん。アルシェ様は食が細くて食べるのもゆっくりなのは…ご存知ですよね?」
「興味のある事はすぐ知りたいんだよね?フィーナは。」
「二人して何よ!もう…。」
私とアーシェの二人から言われてしまい、結局私の太ももを無言で摩り始めました。
「ただアルシェ様に構って貰いたいだけなのですよね?相変わらずフィーナさんは、変わっておられませんね。」
「アーシェさん!そう言う事、言わないの!!恥ずかしいじゃない…。」
フィーナは顔を赤くして、私の太ももを摩る速度を上げてきました。
「ちょっと!!フィーナ?お弁当食べるのに集中できないからやめてくれる?」
「早く食べなさいよ…。」
「なっ?!」
私の言葉を聞いてやめてくれた、と思った矢先の事でした。




