Episode 41.従兄弟は覚悟の告白をするのです。
アヴィルグの手をヴィレースは繋ぎ、私はレーユを連れて空間転送の門を潜り抜けて、寮の私の部屋へと戻って来ました。
「それで…アヴィルグ?どうして私達に着いてきたの?」
ヴィルジェスとしては度々私の所に顔を出しておりましたので、何か強い意志がない限りアヴィルグの姿で来る事は無いと思いました。
「ヴィレースさん?おとうさま?」
「アヴィルグくん?どうしたの??」
「アヴィルグ?どうしたんだい?」
ヴィレースとユーレの分裂体のレーユに、アヴィルグは声をかけました。
「二人ともみてて?『変身』…。」
アヴィルグは眩い光に包み込まれました。
「え?!変身!?アヴィルグくんも!?」
「おお!!流石、リーズランデ家の子供だ!!」
様々な反応をする中、アヴィルグを包んでいた光がアヴィルグの中に取り込まれました。
すると光が収まると二人の目の前に姿を現しました。
「え!?ヴィルジェスさん?!」
「我が子が…リスティスの窮地を救って下さった勇者だったというのですか…。」
ヴィルジェスの姿を見て二人とも驚いておりました。
「二人には教えておいた方がいいと思って。ヴィレースさんは良き友人クロヴィスの孫娘として。お父様は…アヴィレネーナさんと融合して戦うだろうし。」
打ち明けた理由は案外簡単なものでした。
「クロヴィスさんは、お祖父様の良き相談相手でいらしたので…。こんな側に…しかも私達の血縁者として転生されていたなんて…。」
「クロヴィスは言って無かったのかい?」
「愛しき者のお側に転生されたとは、噂で聞いておりましたが…。」
流石にクロヴィスも元妻の側に、ヴィルジェスが生まれ変わって居るなんて言いたく無かったのでしょう。
「私の愛しき者は…そこに居るからね?」
「え…?お、お祖母様のことですか?!」
ヴィルジェスは私を見つめながら、ヴィレースの言葉に頷きました。
「もう!!お祖母様??どれだけの数の者を魅了すれば気が済むんですか!!」
「別に私はそんなつもりでは…。」
「君のお祖母様は、誰から見ても魅力的って事じゃないのかな?」
ヴィルジェスの的確なフォローでヴィレースはそれ以上言う事はありませんでした。
――――
それから、私の部屋で話し合った事は、アヴィルグがヴィルジェスの件は…これ以上はどこから話が漏れるかわからないので秘密とする事、ユーレが分裂したレーユの件は…それぞれに自我を有してると言うのでアビスディストピアの一員とする事、でした。
「魔界に出たら、正に…たくさんの塵と灰が舞う世界で驚いたよ…。」
今はヴィルジェスが私と入れ違いで魔界に入った事に触れていました。
「後少し…魔界にヴィルジェスさんが来るのが早かったら…。」
「うん、私の攻撃に巻き込まれて居たと思う。」
ヴィルジェスは明らかに驚いた表情をしておりました。
「まぁ、クロヴィスを除いては…皆んな無事で良かった!!探し物集めるの苦労したけど…。」
「探し物って?」
「ああ、何でもないなんでもない。そういや、アヴィレネーナさんさ?アーシェさんとヴィレースさん交代させない?クロヴィス居ないから…アーシェさんじゃ家心配なんだよね…。僕が普段学校通っている間が…。」
ヴィルジェスは何かの目的で…あの時私と入れ違いになる形で魔界に入ったようです。
それをはぐらかすかのように、リーズランデ家の戦力についての話をし始めました。
確かに…ヴィルジェスの言う通り学校に行っている間に何か起きても…上級悪魔のアーシェだけでは、最上級悪魔には歯が立たないと思います。
ましてやクロヴィスを倒した魔人までいる事を考えると尚更です。
「私が…父の妹の子孫達のいる家に、ですか。あのリスティス、悪魔のスキルが目覚めている身体です。私が鍛えればアーシェ並みにはなるかも知れません。まぁ…お祖父様とお祖母様の血を絶やす訳にもいきませんからね?仕方ないです…アーシェと代わりましょう。」
「ありがとうね?ヴィレース。お母様達を宜しく頼みます。」
――スタッ…
背後に気配を感じたので振り返るとアーシェが、空間転移から降り立った所でした。
「アーシェ?いきなりでゴメンね?」
「え!?な…なんですか?アルシェ様。」
アーシェは私に急に言われ神妙な面持ちになりました。
「今日からあなたは、私の付きメイドに逆戻りね?」
「え?!良いんですか!?やったぁ!!」
予想に反してアーシェの表情は晴れやかでした。
「でも…私の家は誰が?」
「はぁ…。これだからお前に任せておけぬのだ。」
ヴィレースは呆れ顔でため息を深くつきました。
――――
ヴィレースの荷物を運んだり、アーシェの荷物を取りに行かなければならなくなった為、空間転送の門をリーズランデ家のアーシェの部屋と、こちらのヴィレースの部屋とを繋ぎました。
「じゃあ…まずはヴィルジェス…ってアヴィルグに戻ってるし…。はいはい、どっちでも良いから門の中入って?」
そう言うと、まず…アヴィルグをリーズランデ家に帰しました。
「ヴィレース、急で本当にゴメンね?今夜使うやつだけで良いよ?取りに来ればいいしね?」
「はい。お心遣い感謝します。ですが、私物は殆どございませんので。」
かなり大きめの革製の鞄を一つヴィレースは手に携えておりました。
「お祖母様、それでは行って参ります。」
――ギュッ…
「うん、皆んなの事宜しく頼みます。」
私はヴィレースに抱きつきました。
――チュッ…
何か言おうとしたヴィレースの唇に…私は唇を重ねました。
暫くそのままで居たのですが…ヴィレースの方からゆっくりと顔を離しました。
「また、ゆっくりね?ヴィレース。」
「ずるいです…。」
私がヴィレースの身体にまわした手を解くと、顔を赤らめながら門の中へと消えてゆきました。
「アルシェ様?皆に挨拶をしつつ、荷物取りに行ってきますね?」
「私とレーユも良ければ手伝うよ?ね、レーユ?」
「そうですね。アーシェ様…衣装持ちですから。」
こう見えて、アーシェは当時の夫からの贈り物を大事に保管しているのです。
アーシェの荷物はそれが大半なのです。
「はい。アルシェ様にレーユ、ありがとうございます。」
「持ってく物と、当主の部屋に置いてく物とアーシェが仕切って仕分けて貰える?」
アーシェは頷くと門の中へと消えました。
――――
「意外と持ってくる荷物少なかったね?」
「はい。実用的な物だけにしました。」
ヴィレースまでとは行きませんでしたが、大きめの革製の鞄に入れて四往復程でした。
数年前まで、レスティアお母様、アーシェ、アルリスと私を加えて四人で生活しておりました。
ですが、其々の生活環境が変わり、今日まではヴィレーナと私の二人だけの生活でした。
アーシェとは前の世界では私が幼少期から育ててきた間柄なので、以前リスティスの代わりに来ていた頃は別の部屋でしたが、今回は…同じ部屋で生活する事にしたのです。
レーユについてはと言うと、一応生殖能力のある特殊なスライムと言う事で、リスティスお母様とアルリスが生活して居た部屋にしてもらいました。
「そう言えば…レーユなんか欲しい物とかあるかな?ユーレから分裂してるから…ユーレの物持って来るのも悪い感じするから。買ってあげるから。」
「そうですね…。衣類は身体で擬態出来るので要りませんし…。何か古い文書とかありましたら…読んでみたいのですが。」
確かに…言われてみれば、そう言う物以外要らなそうです。
レーユはデルジェイム家裏手の丘の茂みに長年潜んでいた事をすっかり忘れておりました。




