Episode 40.叔母のスライムは人格も分裂できるみたいです。
私は…リスティスからユーレを返せと煩く言われたので『変身解除』を行いました。
すると、ユーレを身体に纏った状態のアルシェの姿へと無事戻る事が出来たのです。
「アヴィレネーナサマ?マタ、ヒトツニナリマショウ!」
ユーレは…リスティスがまた誤解を生みそうな事を口走りました。
「ユーレ!!私より…あの露出女の方が良い訳??」
「チガウヨ!!リスティス。アヴィレネーナサマノカラダハ、マリョクニミチテイルンダ!ダカラ、ボクノチカラデハデキナイコトガ、カノウニナルンダ!!」
とりあえずリスティスが面倒なので、ユーレの言葉に補足してあげる事にしました。
「ユーレだけじゃ、魔法を受けたら本当に怪我するけど、アヴィレネーナの身体と混ざれば、何だって出来るって言いたいんだよね?」
「ハイ、オッシャルトオリデス!!」
「なら…良いんだけど…。」
リスティスは何か言いたげな悔しそうな表情をしておりました。
「あ!ねぇ、ユーレ?ユーレにスライムのお友達とか居ないかな?」
「アヴィレネーナサマ?コレデハドウデショウ??」
――プリュンッ…
目の前でユーレが二人になりました…。
分裂元のユーレはヘロヘロになっておりました。
「ゆ…ユーレ??大丈夫?!私…そんな事出来るなんて知らないんだけど!?」
ユーレと長年一緒に居る、妻のリスティスですら知らない事があったようです。
「ボクハ、スライムデスカラ、ブンレツデキマス!マリョクヲ…キュウシュウデキレバ、モトドオリデス!」
「へぇ…そうなんだ?じゃあ…ユーレ?行こ??」
リスティスが分裂元のユーレの手を強引に引くと、部屋からアヴィルグを置いて出て行きました。
「アヴィルグはついてっちゃダメだよ?お姉ちゃんとここに居よっか?」
アヴィルグことヴィルジェスにはリスティスの行動が何を示すのか分かっていると思いますが、とりあえずアヴィルグの正体を知らないレスティアお母様も居るので、そう言葉をかけたのです。
「はーい!ぼく、アルシェおねえちゃん、すき!!」
「全く、アルシェの事本当好きね?アヴィルグ。」
レスティアお母様は、アヴィルグの言葉に対し直ぐにそう言いました。
「ぼく、おねえちゃんとけっこんする!!」
そう言ってアヴィルグは私の手をギュッと握ってきました。
「アヴィルグが大人になった時、私が独りだったら考えてあげるね?」
「アルシェ?アヴィルグに変な期待させたらダメでしょう?あなたはヴィルジェスさんと婚約してるんだから。」
レスティアお母様は真面目に言いましたが、ヴィルジェスの内情を知るアーシェだけは笑いを堪えておりました。
――――
「ねぇ?あなたはユーレ?」
茶番劇はそのくらいにしておいて、私はユーレから分裂したユーレに声をかけてみました。
「ハイ、ワタシモユーレデス。リスティスハ、ワタシニマカセテオキマショウ。」
「じゃあ…キミの名前は今からレーユだよ?良いかな?」
――ピコン!!
何か音がしたと思ったら、レーユの姿が碧色に変化しました。
「アルシェ様、こんな私に名前をつけていたき光栄でございます。お陰様で上級スライムに進化する事が出来ました。今後はアルシェ様に…お仕えさせていただきます。」
ユーレ時代は、中級スライムという事もあり、擬態が不完全で人間らしさが少し欠けておりました。
上級スライムになった途端に、擬態が完全となり人間と見紛う姿となりました。
何を思ったのか…クロヴィスが人間に擬態したクローズの姿に非常に似た姿に擬態しております。
「レーユ?その姿どこで覚えたの?」
「先日、クロヴィス様がお一人でお越しになられた際に、このような姿をされてましたので。」
私と一緒ではなく一人で来る用事は特に無いと思っておりました。
「え?!クロヴィスがここに一人で来たの!?一体、何をしに?」
「アーシェ様と少しお話をされた後、偶然にも居合わせましたヴィルジェス様と談笑されておりました。」
流石友と言うのでしょうか、恐らく会う日でも事前に示し合わせて居たのでしょう。
友が居なくなったのに、ヴィルジェスが冷静だったのも何かあるのかもしれません。
「それにしても…お祖父様のクローズになっている時のお姿にそっくりですね…。」
クロヴィスに親代わりに育てられたヴィレースが言うくらいです。
「じゃあ、レーユはうちで預かるけどいいよね?」
私がアーシェの先祖と皆が知ってしまった今、反論するものはおりませんでした。
「それにしても…お祖母様?凄い確率では無いですか?ご自分の娘の血を引く孤児を拾われるなんて。」
「そうだよね。育てていて、アヴァルウより…アーシェの方が愛着が湧いたのは嘘じゃ無いよ?愛着湧きすぎて…大人になったアーシェを私の彼女にしちゃってたんだけどね?」
レスティアお母様は、私の思いがけない言葉に呆気にとられておりました。
まぁ…レスティアお母様とも、アヴィレネーナとして一時期関係を持ってしまってたわけですが。
「アルシェ…?私…だけじゃ…無かったの?」
「はい。お母様…ゴメンなさい。」
「へぇ…。お祖母様って結構節操無いのですね?」
何だかヴィレースとレスティアお母様の二人から、冷たい目線を浴びる展開になってしまいました。
「はぁ。アヴィレ様…子孫にまで手をお出しでしたか…?」
アーシェにまで言われてしまい、私の立つ瀬が無くなってきてしまいました。
「もう!皆んな好きなんだからいいでしょ??」
そう言い放つと、私はレーユを連れて寮に帰ろうとしました。
――ギュッ!
「アルシェおねえちゃん!!ボクもついていっていい?」
アヴィルグが私に飛びついてきたのです。
「アーシェ、少し連れていっても良いかな?」
「アヴィルグ?アルシェ様に迷惑かけるでは無いぞ?」
アーシェはアヴィルグがヴィルジェスだと言う事は分かっている為、体裁上そう言ったのだと思います。
「お祖母様、リスティスの息子を連れて行くのです?」
「まぁまぁ、ヴィレースお堅い事言わずに…。」
アヴィルグの正体を知るのは本当に限られているので、知らないヴィレースの反応は当然だと思います。
「ヴィレースおねえちゃん?ダメ?」
「え…えっと…。ああアルシェ様に…。め、め、迷惑かけちゃダメ…ですよ?」
そういえばリーズランデ家で唯一アヴィルグだけ、金髪、真紅の瞳、白い肌…そうアヴィレネーナの子供みたいな容姿なのですが、ヴィレースがアヴィルグの顔をまじまじ見たのはこの時が初めてかもしれません。
「ねぇ?その子、アヴィレネーナの子供みたいでしょ?」
自分で言っておいてアレですが、クロヴィスが連れて行った長男も…髪の色は蒼色と違えど、成長したら今のアヴィルグのようだったのかもしれないです。
「はい。何だか懐かしい感じがします…。小さな頃よく見たような…。ま、まぁ…良いですか?アーシェ、夜になる前にこの子を迎えに来るのですよ?」
「はい。ヴィレース叔母様、アヴィルグを迎えに上がりますのでご安心を。」
ヴィレースはアーシェに釘を刺しながらも、嬉しそうにアヴィルグの手を取ると、目の前に空間転送の門を出現させました。
「それじゃあ、私達は寮に戻るけど…皆んな家の守備だけは抜かりなくね?きっとこれから魔人が暗躍していきそうな気がするから。」
この家の守備は…アヴィルグ不在時はアーシェだけが頼りなので、クロヴィス亡き今…上級悪魔一人だけでは戦力的に劣るのでかなり心配しているのです。
「はい!今日の融合した現象を踏まえて、リスティスとユーレ夫妻の可能性にかけます!」
そんな夢物語的な話を去り際にされ…後ろ髪を引かれる思いでリーズランデ家を後にしました。




