Episode 3.前世のスキルや魔法使えるみたいです。
ここは私の部屋。
まだ私の乳母のリスティス叔母様の尋問が続いていました。
「さて、アルシェ様。どうしてそんなにご自分のステータスをお知りになりたいのですか?」
「えっと…。おかあさまが、よくつかってらっしゃるから。わたしも…きになって!」
リスティス叔母様がその話を聞いて、何か考え込んでしまいました。
まさかとは思うけれど、お母様はステータスの確認することで、妊娠していない事を確認しているのではと思ってしまいました。
「まさかな…姉様、不貞してるのか…。」
小声ではありましたが、リスティス叔母様からそう聞こえました。
私の予想は大当たりだったようです。
「そうでしたか。アルシェ様のお母様は自分の健康状態を確認されていたのでしょうね。」
リスティス叔母様からの回答は子供に対しては最良の答えだったでしょうね。
私が前世の記憶そのまま持ち越してるなんて、思いもしないでしょうけども。
言わば…女児のふりしている大人女子な訳で…。
まさか、自分の母親が不貞行為の後の、妊娠チェックのためにステータス確認していたなんて、知りたくもなかったです。
覚えているだけでも…私が一歳くらいの時にはステータス確認していた記憶があります。
「あの…。お母様はアルシェ様が幾つくらいの時から、ステータスの確認されてました?」
流石…出来る妹。
そこは気になるところですよね…。
「いっさいのとき。おへやにもじがうかんでたのみたの!」
私は大好きなリスティス叔母様に、正直に教えてあげる事にしました。
「えっ!?いっ…一歳の頃からですか?!バカ姉様…。」
ついついリスティス叔母様の口から愚痴が溢れたのを聞き逃しませんでした。
確かに、欲望のままに生きる自分の姉の不甲斐なさにショックだったと思います。
「アルシェ様…?お顔を良く…お見せください。」
急にリスティス叔母様が私の顔をジロジロと見始めたのです。
そしてまた、目を閉じて考え込んでしまいました。
恐らくですが、私の父親は誰なのかと思ったのでしょう。
「ねぇ…リスティスおばさま?そろそろ、ステータスつかってもいい?」
この重苦しいこの場の空気を私は変えたくて、そう話を切り出しました。
「じゃあ、アルシェ様。まずはお風呂に入って来てから、試してみましょうか!」
――――
「五歳になって初めて入るお風呂はどうでしたか?」
リスティス叔母様のこう言うユーモアのある所が大好きです。
まぁ…リスティス叔母様のグラマラスかつスレンダーな裸体も…私は大好きですが。
流石、国の騎士団で魔法剣士をされていただけのことはあり、引き締まっていて無駄のない身体なのですが…胸とお尻だけは豊満なのです。
実を言うと…前世の私は、男も女もどちらも好きだったので、リスティス叔母様の裸は目の保養になっています。
「ちょっとおとなになったかんじです!」
「ぷぷっ!!アルシェ様ったら!!」
私の言葉にお腹を抱えてリスティス叔母様が笑ってくれたのです。
さっきまでの暗い表情は影を潜めてくれたようで、少しホッとしました。
――――
辺りの家の明かりも消え始め、夜も更けてきました。
「そろそろ、アルシェ…やってもいい?」
私はステータスの魔法が使えるか少しでも早く試してみたくて、同じベッドの上で一緒に寝ているリスティス叔母様に耳打ちをしてみました。
「そろそろ、良いでしょう。ですが、皆様には言ってはダメですよ?」
「はーい!」
私はリスティス叔母様にそう返事をすると、ベッドの上で天井の方に姿勢を直して向けました。
「スゥーっ…。『ステータス』!!」
息をゆっくりと吸い込んだ後、手を天井に向けて突き出すと、ステータスと唱えました。
――ブゥン!!
天井に私のステータスが浮かび上がりました。
「アルシェ様!!良かった…です…ねええええっ?!」
天井に浮かび上がった私のステータスをリスティス叔母様は見るなり、驚きの声をあげたのです。
[ステータス]――
名前 :アルシェ=デルジェイム
年齢 :五歳
性別 :女
種族 :人間
魔力量:二十
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
――
「み…未知の魔法に…未知のスキル…?!魔力量が五歳で二十って…まさか!?」
あまりの衝撃だったのか、リスティス叔母様も地が出てしまったようです。
未知の魔法に未知のスキルって…前世の悪魔だった時のスキルや魔法が使えるのでしょうか?
もしも…ですが、それを使えるものだと仮定しましょう。
前世のように、魔力が無尽蔵に溢れ出るような悪魔の身体とは違い、人間の女性の身体です。
ところが、私の家系はどちらも代々魔法使いなのです。
なので、魔力量には限りはあるでしょうけど、成長すれば…今よりも魔力量は増えると思うので、それなりに使えるのではないでしょうか。
「リスティスおばさま…。ないしょ…おねがい…。」
少し目に涙を滲ませてから、リスティス叔母様に抱きつきました。
「そうですね、二人だけの秘密ですよ?私も…皆様には言ってはダメと、先程アルシェ様に言ってましたし。」
「ありがとう…リスティスおばさま。だいすき…。」
私もどさくさに紛れ…リスティス叔母様への自分の気持ちを伝えることができました。
「私もアルシェ様のこと…大好きですよ?それにしてもです!!我がリーズランデ家から再び“悪魔”が産まれるなんて!!」
「あくま?」
「はいっ!!悪魔の如く、人智を超えた未知の魔法やスキルを使いこなす人間はそう呼ばれるそうです。実際に悪魔は居るので、混同されがちですが。」
初めて”悪魔“についての話を聞きました。
リーズランデ家は七英雄の一人、”賢者“アーシェの末裔と目の前にいるリスティス叔母様から昔話で聞かされていました。
「まぁ…実際に呼ばれているのは未だ、我が祖…”悪魔“のアーシェ様以外居られないのですけど…。ウフフッ。」
リスティス叔母様が普段見せないような妖しい笑みを浮かべました。
もしかしたら、”悪魔“のアーシェ崇拝者なのかもしれません。
「わたしのこと、こわい?」
「いいえ?アルシェ様の事は怖いどころか…もっと大好きになりました。」
ベッドの上で普段より二人寄り添って寝るのですが、今日は私を抱きしめるリスティス叔母様の手や腕が普段よりも汗ばんでいます。
周りから見れば叔母と姪なのでしょうけど、私にとっては産まれた時から一緒に居る大事な母なので、リスティス叔母様との心の距離が近くなれればどうでも良いです。
「あくま?わたし。」
「リーズランデ家のアーシェ様の伝記には、その女児は未知のスキルと未知の魔法を幼少より使いこなした。とあるのです。アーシェ様みたいな“悪魔”かもしれませんね!」
リスティス叔母様が私の目をトロンとした目で見つめながら興奮気味に教えてくれました。
「わたしもなれる?」
「はい!!私が…この私で宜しいのでしたら、アルシェ様が立派な“悪魔”になれるよう、全身全霊お手伝い…いえ、この身を捧げさせて頂きます!!」
まさか私が、異世界転生してきた“災厄の小悪魔”と呼ばれていた悪魔だったなんて、誰も思いもしないでしょう。
まぁ…リスティス叔母様だったら、素直に信じてくれそうな気がしたので、大きくなった時に教えてあげようかと思います。
「リスティスおばさま…。よろしくね?」
私は小さな手でリスティス叔母様の手をそっと掴みながら、俯いてそう伝えました。
まぁ、これもリスティス叔母様の心をグッと掴む作戦なのですが。
伊達に悪魔として悠久の時を生きてきた訳ではありません。
一瞬、リスティス叔母様がブルッと身震いをしたと思ったその時でした。
「はっ…は…はいっ!!あ…アルシェ様!末永く、こ…このリスティスめを宜しく…お…お願いいたします!!」
一人の淑女が“悪魔”の手に堕ちた瞬間でした。
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この話の主な登場人物
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名前 :アルシェ=デルジェイム
年齢 :5歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :なし
魔力量:20
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ボブ(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人、魔法騎士アルディスの末裔。
異世界転生者。
元災厄レベルの悪魔。
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名前 :リスティス=リーズランデ
年齢 :28歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :アルシェの乳母兼護衛
魔力量:284
魔法 :中級魔法全般
スキル:剣士スキル全般
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人“悪魔”のアーシェの末裔。
元国の騎士団所属の魔法剣士。
アルシェの叔母(母の妹)。
グラマラス&スレンダー。
アルシェ崇拝者。
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