Episode 26.父は母が恋しいみたいです。
女の魔人に袋小路にジリジリ追い込まれていたシェンティを見つける事ができたのは、シェンティの位置を示す魔法をかけているので、かけられた者の居る真上に紋が浮かび、術者のみ見えるからです。
それに、女の魔人の咆哮も街中に響き渡っており、更に…この身体のままでは危なそうな程の魔力も察知しました。
ですので、シェンティの姿のままではアーシェは危ないと判断して、姿を見せずに近づけるだけ近づくことにしたのです。
そして、シェンティがいよいよ危なそうでしたので、わざとシェンティを探すような声をあげました。
「誰だ!!そこに居るのは!!」
女の魔人が攻撃の手を止め、私のいる方角にそう叫びました。
シェンティが公の場でアーシェの姿に戻ることは、アーシェの魔力が膨大な為、甦ったことが世間に知れてしまう恐れがあるので、最近は禁止していました。
ですので、この場所で女の魔人に優位に戦えるのは…私の変身後の姿であるアヴィレネーナだけなのです。
「『変身』!!」
私の身体が闇に包み込まれた次の瞬間、その闇は身体に取り込まれアヴィレネーナの姿となりました。
――スッ…
「そこの…弱い者いじめ魔人さん!!我ら…アビスディストピアの名の下に…成敗します!!」
シェンティの前に私は瞬間移動すると、女の魔人に向かってそう名乗りをあげました。
この時に私は、女の魔人の姿を初めて見たのですが、手に自警団の団員だけが持つことの許された、デルジェイム家の紋の入った武器を持っていました。
「あなた…自警団の団員さん…ですか?」
自警団に女性の団員は…私が産まれた頃より、お父様の情婦と噂された団員しか居ない筈です…。
「だからどうした!!『空間断』!!」
――ブゥンッ!!
私の目の前の空間が斬られると…歪み何処かへ消えました。
――スッ…
空間転移を行い、シェンティを連れて寮の部屋に向かいました。
「シェンティここに居て?」
――スッ…
シェンティを置き去りにして、私だけ空間転移を使い、さっきの場所に戻ってきました。
「まさか…自警団に魔人が居るなんて…。」
「姿を見たからには死ね!!露出女!!『火焔断』!!」
――ボオオオオッ!!
女の魔人が手に握る武器が一瞬にして火焔に包まれ、その斬撃が私に向かって振り下ろされました。
――ピトッ
私は右の人差し指でその斬撃を静かに受け止めました。
「危ないですよ?燃えている物を振り回しては…。」
「なっ?!『火焔弾』!!」
――ドヒュッ!!
私の目の前で魔法が放たれました。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
私は咆哮をあげると魔力を解放しました。
額からは一対の悪魔の角が生えてきました。
――シュゥゥゥゥッ!!
私の身体に火焔の弾は当たったようなのですが、魔力として吸収され消えてしまいました。
「これならどうだ!!『獄焔翔』!!」
――ヴジュウウウウッ!!
私の足元から、地獄の焔が吹き上がり…全身が焔に飲み込まれました。
「ギャアアアアアアアア!!」
焔に飲み込まれ、私は思わず条件反射で悲鳴をあげました。
「はははは!!調子に乗ったな?雑魚めが!!骨まで灼け溶かされて消えてしまえ!!」
「塵も残さず消えて下さい…。『カラミティィィィッデモネェェェェズ・ディストラクショォォォォン』!!」
――ドスッ!!
私は纏っていた焔から飛び出すと、女の魔人の腹部に必殺技を叩き込みました。
この必殺技は、拳に古の魔法『崩壊の波紋』を纏わせたものになり、叩き込まれるとその名の如く崩壊が伝播していく恐ろしいものです。
「はははは!!何だい?この蚊が鳴くような攻撃は?」
見る見るうちに叩き込まれた部分から身体の崩壊が始まり、波紋状に伝播していきました。
「えっ…!?嘘だ!!身体が!!やめて!!やめてええええ!!」
あっという間に全身に伝播すると、叫びと共に崩れ落ちました。
――ピロン
その場所に残されたのは、自警団の武器だけでした。
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「お父様?もしもですが…お母様とやり直したいとお思いでしたら、お母様に会って頂けませんか?」
最近、お母様が少し寂しそうなので、お父様にチャンスをあげても良いかと思い声をかけました。
それなりに好き同士でなければ、子供を三人も作るのは難しいと思います。
リスティス同様、お父様が家に寄り付かなかったのも、自警団の武器を持っていた女の魔人によって、良いように操られていただけかも知れません。
「アルシェ?私は…レスティアに会って謝罪をしたいんだ。だから、ありがとう。」
「はい。お母様…最近本当に寂しそうですよ?」
お母様は寂しさを忘れようと私を、いえ…アヴィレネーナを求めてきたので…変身し単時間ですが狂おしい悦びを…与えたのでした。
その関係は四年にも及んだのですが…お母様からこの乱れた関係は終わりにしたいと切り出された時はホッとしました。
それからは何か寂しそうに…お母様は物思いに耽る時間が増えてきております。
「それで話は戻るのですが、二つ目に聞きたいことは…イチオさんについてです。お父様なら団長ですし、団員の事は知っていると思いまして。」
お母様の話の時は嬉しそうな表情になったのですが、イチオの話になった途端険しい表情になりました。
「イチオの何が知りたいのだ?」
「イチオさんはいつ亡くなられたのですか?」
「イチオは…十年前の魔人討伐の任務中、大型魔法を受けた後行方不明になってな…。未だ遺骸や装備品も見つからずでな?自警団内では…状況的に死んだ事にしたが、実際には生死不明だから公には非公表にしている。それで、一体どうしたのだ?」
十年前からイチオが行方不明になっていたとは知りませんでした。
お母様が死んだとお父様から聞かされたのは、そう言う背景があったからでした。
「四年前の私の誕生日に、リーズランデの家にイチオさんが現れて、リスティス叔母様に告白したのです…。それが成就すると…昨日まで同棲していたのです…。」
「何だって!?リスティスさんと同棲だと?!それでイチオは今リーズランデの家に居るのか?」
お父様は驚きを隠せない表情でしたが、それよりも怒りが上回っているようで声を荒らげておりました。
「いえ。昨日、私とシェンティがリーズランデ家を訪れたところ、リスティス叔母様を育児放棄させる程、精神的にも肉体的にも堕落させており…リーズランデ家は荒んでしまっておりました。それをシェンティが問い詰めました所、一悶着あり…中級魔人と化しました。」
「なっ?!あの騎士団に居られたリスティスさんを…だと?イチオが…中級魔人になったと言うのか??」
「はい。そこに正体不明のアビスディストピアという組織を名乗る、勇者の出立の男が現れ、颯爽とイチオさんを退治して頂きました。おかげで、リーズランデ家は執務室をイチオさんに破壊された程度で、その他は目立った被害はありませんでした。」
さらっとアビスディストピアの事を、自警団の団長であるお父様に宣伝の意味も込めて大まかに語りました。
「そうなのか…イチオは討伐されたのか。リーズランデの家に被害がなくて本当に良かったな…。だが、私もそのアビスディストピアという組織の名は聞いている。私の聞いた話では、長身で金髪の美人だが裸同然の紐みたいな服を着ている…アヴィレネーナという名の女との事だったぞ?会ってみたいものだ。」
お父様は女の話になると記憶力がやたらと良いとお母様が言っていましたが、嘘では無さそうです。
「お父様?イチオさんが行方不明になった場所教えていただけますか?」
イチオが魔人になった理由を調べてみたくなり、そう聞いてみたのでした。
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この話の主な登場人物
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名前 :アルシェ=リーズランデ
年齢 :15歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :フィルネルス女学院中等部
魔力量:609
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人、魔法騎士アルディスの末裔。
七英雄の一人“悪魔”のアーシェの末裔。
異世界転生者。
裏の英雄組織“アビスディストピア”の主人。
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名前 :アヴィレネーナ=ディズフィア
年齢 :不明(推定1000歳以上)
性別 :女
種族 :最古級悪魔
職業 :裏の英雄
魔力量:測定不能
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル、カラミティデモネズ・シリーズ
肌 :白
髪 :ツインテール(金色)
目 :真紅
その他:災厄の小悪魔。
アルシェの異世界転生前の姿。
アルシェの魔力量で容姿・年齢が変化。
露出の極めて多い際どい衣装を着用。
アルシェの変身魔法で10分変身可能。
次に変身可能になるまで3時間必要。
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名前 :レスティア=リーズランデ
年齢 :43歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :アルシェの付きメイド
魔力量:330
魔法 :初級魔法全般
スキル:癒し手スキル全般
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :セミロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人“悪魔”のアーシェの末裔。
アルシェの母親。
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名前 :?=デルジェイム
年齢 :45歳
性別 :男
種族 :人間
職業 :自警団の団長
魔力量:999(人間の上限)
魔法 :中級魔法全般
スキル:魔法騎士スキル全般
肌 :白
髪 :短髪(金色)
目 :翡翠色
その他:七英雄の一人、魔法騎士アルディスの末裔。
アルシェの父親。
自警団に情婦が居たが別れた模様。
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名前 :アーシェ=リーズランデ
年齢 :不明(推定500歳以上)
性別 :女
種族 :上級悪魔
職業 :英雄
魔力量:測定不能
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人“悪魔”のアーシェ。
300年以上前、異世界転移してきた。
魔神討伐後、自らの呪いで眠っていた。
真名はアーシェンテア。
“悪魔”のアーシェ時代、
アヴィレネーナから盗んだ衣装を着用。
シェンティ=リーズランデとして、
アルシェの付きメイドに。
裏の英雄組織“アビスディストピア”の秘書。
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この話の登場人物
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名前 :イチオ・サノ
年齢 :38歳
性別 :男
種族 :中級魔人
職業 :元アルディスの自警団の団員
魔力量:不明
魔法 :不明
スキル:不明
肌 :肌色(イエベ系)
髪 :短髪(黒色)
目 :茶色
その他:七英雄の一人”影“のユキタダの末裔。
幼馴染のリスティスと付き合い同棲し、
心も身体も完全に堕とし支配していた。
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名前 :女の魔人
性別 :女
種族 :中級魔人
魔力量:3000
魔法 :空間断、火焔断、獄焔翔、等
その他:魔法は有詠唱。
自警団の団員の証である、
デルジェイム家の紋の入った武器を、
所持していた。
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