Episode 20.今日から母は悪魔の虜です。
あのリスティスお母様の告白した夜から数日が経ちました。
正確に言えば、私の十一歳の誕生日で、あの夜リーズランデ家でお祝いをして頂くような話を聞いていました。
ですが、結局リスティスお母様とイチオさんは姿を見せませんでしたので、また後日と言う話で解散したのでした。
あの日の夜、アーシェはデルジェイム家の祖父の枕元に立ち、子孫のアルシェを迫害している事について糾弾した上で、リーズランデ家に養子として出さなければデルジェイム家を呪い殺すと告げて姿を消して来たそうです。
その件なのかは分かりませんが、お母様がフィルネルス女学院の寮を訪ねて来たようなのです。
寮母さんが先程部屋に来てそう告げてきました。
とりあえず、お母様を部屋まで通してもらえるようお願いしたので、来るのを待っている所です。
――コンコン!
「アルシェ、居ますか?」
「どうぞお入りください。」
玄関の扉をお母様がノックして声をかけて来ました。
実の母親なのですが、育てられた記憶は全くなく、話した記憶もあまりありませんでした。
――ギィィィィッ…
扉がゆっくりと開くと…リスティスお母様に似た顔立ちの綺麗な女性が入って来たのでした。
「アルシェ…なの?」
「レスティアお母様で…いらっしゃいますでしょうか?」
まるで初対面の二人のように…とてもぎこちない挨拶となりました。
最後にお母様に会ったのは何歳の頃だったでしょうか。
「レスティアとはお前さんの事かい。自分の腹を痛めた子を実家の身内に任せっきりとは、一体どう言う了見だい?」
シェンティことアーシェが、お母様を見るなり怒りを爆破させていました。
「やはり…シェンティはアーシェ様だったのでございますね…。本当に…アルシェの事、申し訳ございません…。嫁ぎ先の言う事に全く逆らえませんでした…。私だって…自分の…リーズランデ家の…アーシェ様の血を引く娘が可愛くない訳無いのです…。でも…」
「お前さんも、他所に嫁いで苦労してる訳だね?分かるよ。私も苦労したが、ツガイの協力はちゃんとあったからね?お前さんのツガイは産ませるだけ産ませたら他に女作ってるんだろ?いつでも、私の家に戻っといで。」
シェンティがお母様が何か言いかけたのですが、それを遮るように自分の話も交え語りかけました。
「本当にデルジェイムの傲慢な要求で申し訳ないのですが…アルシェをリーズランデの養子として貰い受けて頂きたいのです。これは、当主からの要求でございます。」
「アルシェ様?アルシェ様…?」
お母様がその話を始めると、シェンティが私に向かってご褒美下さいと言う仕草を始めました。
シェンティが無邪気な笑顔で両手を拡げて待ち構えています。
――ギュッ!
「シェンティ?ありがとう。」
私はシェンティを抱き締め、労いの言葉も添えました。
「レスティア?お前さんがリーズランデ家に戻るまで、リスティスの養子にアルシェ様はしておくからな?戻ってきたら、お前さんの子に戻せばいいさ、な?」
「アーシェ様、お気遣い感謝いたします。これからも、娘のこと宜しくお願いします…。」
お母様は涙ながらに、シェンティに頭を下げました。
「ところで、だ。お前さん、最近はステータスでできてないか確認してはいないのかい?」
「え…。なぜ…。で…ですが、最近は…しておりません。捨てられたのです…。」
お母様はシェンティにステータスの事を言われて狼狽しておりました。
「アルシェ様の前なのだが…お前さん、自分の痴情をよく暴露してくれたな。男にはな?信じていい奴とダメな奴が居るのだ。よく分かったであろう?」
「はい…。息子達が育ちましたら私も…リスティスの所へ下ろうと思います。そう言えば…アーシェ様は何故、アルシェの事を…様付けして呼ばれるのですか?」
シェンティが自慢げに持論で説き伏せたかに見えたのですが、思わぬ質問がお母様から飛び出したのです。
「ああ、お前さん達が言うように、アルシェ様は本当に“悪魔憑き”なのだ。」
シェンティはお母様にそう告げました。
「悪魔!!あぁ…凄い!!悪魔!!アーシェ様以来の…悪魔!!私の…娘が悪魔!!私…アルシェを産めて良かった…。」
リスティスお母様もそうですが…この姉妹は悪魔に傾向し過ぎていて…たまに狂気すら感じます。
「それで!!どれくらいの悪魔なのですか??私のアルシェは!!」
「まぁまぁ、落ち着け。落ち着け。あ…リスティスにはアルシェ様が“悪魔憑き“とは申して無かったな…。まぁ良いか?産みの親の特権という事で、一番に教えてやる事にしよう。」
”悪魔憑き“と分かった途端、お母様の私への興味が今までが嘘だったかのように高まったのが目に見えて分かりました。
リスティスお母様にそう言えば、伝えてなかった事を今気づきました。
「アルシェ様は、私の師匠でもあり…私の所有者でもあり…私の大切なお方なのです。」
お母様に説明しているのですが、私の説明だからなのか凄く丁寧な言葉遣いです。
「はい!!」
お母様も目をキラキラさせながら聞き入っています。
「アルシェ様…お手数なのですが、真のお姿をこの者にお見せ頂けますでしょうか?」
一回変身したら今の魔力量では、五時間変身できないのですが…もしその間に魔人が現れたら、シェンティに代わりに出てもらうしかありません。
「お母様、見てて下さいね?『変身』!!」
闇が私を包み込むと、シェンティもお母様も黄色い歓声を上げました。
「我が名は…アヴィレネーナ。どうじゃ?我の姿。」
「さ…触っても良いですか?あ…アヴィ…アヴィレネーナ様!!」
お母様の気分が高揚し過ぎていて、もう盛りのついた牝猫のようです。
「おい!!子孫!!私もまだ…触れさせていただいて居ないのだぞ!!」
シェンティとお母様が目の前で小競り合いを始めました。
「可愛い子達だのぉ?ほれ?どうじゃ?」
私はシェンティとお母様の手をそれぞれ掴むと、私の胸に押し当てました。
「アヴィレネーナ様…。お…お胸…さいっこうっでした!!」
「そうかそうか。アーシェの子孫はやはり可愛いのぅ。」
お母様の頭を撫でてあげたのですが、お互いを触れ合ったのは凄く久しぶりな気がしました。
「もう、デルジェイムの家に未練は無いです!!リーズランデの家に絶対帰ります!!アーシェ様!アヴィレネーナ様…ううん、私の娘アルシェの事宜しくお願いします。」
完全にお母様は何か吹っ切れたような表情でしたが、私の身体をしつこく撫で回しながらシェンティに向かいそう言いました。
「因みにな?我が小さい頃、一撃で一つの国家を滅亡させてしまってな?“災厄の小悪魔”とその頃呼ばれていたんじゃがな…千歳を超える頃になってもその呼び名でなぁ?アーシェも知っておろう?」
「はい。そうだ、子孫。アヴィレネーナ様はな?恐らく私が三人以上居なければ倒せぬぞ?覚えておくが良い。」
お母様の中で、アーシェは最強の悪魔だと思ってきたので、私とシェンティの会話を聞いたお母様は、目をパチクリパチクリさせておりました。
「そろそろ、変身が解けるぞ?」
私がそう言った直後のことでした…。
――ムギュウウウウッ!!
――モミモミモミモミ…。
シェンティとお母様は私に飛びついてきて、私の身体中を蹂躙し始めました。
「ちょっと!!やめろ!!お前たち!!そこは…!!おい!!やめろ!!おいっ!!ダメ!!そこは…!!そこは…ダメええええ!!」
「アヴィレネーナ様?意外と可愛い声…出すんですね…。」
シェンティの声が段々と聞こえづらく…私の意識も遠のいていくのが分かりました。
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この話の主な登場人物
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名前 :アルシェ=デルジェイム
年齢 :11歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :フィルネルス女学院小等部
魔力量:251
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人、魔法騎士アルディスの末裔。
七英雄の一人“悪魔”のアーシェの末裔。
異世界転生者。
裏の英雄組織“アビスディストピア”の主人。
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名前 :アヴィレネーナ=ディズフィア
年齢 :不明(推定1000歳以上)
性別 :女
種族 :最古級悪魔
職業 :裏の英雄
魔力量:測定不能
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル、カラミティデモネズ・シリーズ
肌 :白
髪 :ツインテール(金色)
目 :真紅
その他:災厄の小悪魔。
アルシェの異世界転生前の姿。
アルシェの魔力量で容姿・年齢が変化。
露出の極めて多い際どい衣装を着用。
アルシェの変身魔法で10分変身可能。
次に変身可能になるまで5時間必要。
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名前 :レスティア=デルジェイム
年齢 :39歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :主婦
魔力量:291
魔法 :初級魔法全般
スキル:癒し手スキル全般
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :セミロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人“悪魔”のアーシェの末裔。
アルシェ含む三児の母。
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名前 :アーシェ=リーズランデ
年齢 :不明(推定500歳以上)
性別 :女
種族 :上級悪魔
職業 :英雄
魔力量:測定不能
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人“悪魔”のアーシェ。
300年以上前、異世界転移してきた。
魔神討伐後、自らの呪いで眠っていた。
真名はアーシェンテア。
“悪魔”のアーシェ時代、
アヴィレネーナから盗んだ衣装を着用。
シェンティ=リーズランデとして、
アルシェの付きメイドに。
裏の英雄組織“アビスディストピア”の秘書。
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