Episode 16.あくまでも裏の英雄はじめます。
この世界では悪に堕ちたモノのことを魔人と呼んでいるのがなんとなく分かりました。
でも、ふと思ったのですが、人間、魔物、悪魔、何でも魔人と呼んでいるので、一言で魔人討伐と言っても、悪魔の魔人と人間の魔人とでは、難易度が違い過ぎます。
そして、今私が討伐しようとしている魔人は、元の世界では下級悪魔という格付けの種族だと思います。
私については…いつの間にか最古級悪魔として格付けられておりました。
最古と呼ばわりされるのは非常に心外でしたが、それだけで無駄な殺生を回避できたのも事実でした。
そう言うわけで力の差は歴然なのですが、私には変身できる時間が十分と限られているので、あまり遊んでいる余裕が無いのが残念でなりません。
――ブンッ!!
とりあえず、周りに被害が出ないよう…この広場と上空に対し障壁を張りました。
この障壁内から外へ出る事やこの障壁外への攻撃は、術者が障壁を解除及び死亡しない限り不可能となります。
これで心置き無く、この魔人相手に戦うことが出来ます。
「なにっ!?障壁だと?!こんなもの!!」
――バヂッ!!
「うわっ!!手の指がっ!!指がっ!!」
この障壁に、術者が敵と認識している相手が触れると威力の高い電撃が走ります。
今まさに、魔人の左の指が数本吹き飛んだ所でした。
「凄く痛そうですけど…大丈夫ですか?」
「うるさい!!こんな傷!!再生して…。え…?え…っ!?再生しないぞ!!何をした!!」
私の張る障壁は、相手のかかっている強化効果無効、再生無効の障壁となっています。
「魔人さん、教えてください!何故…こんな惨い事を、多くの方の命を奪う事をされたのですか?誰かに言われたのですか?自分のご意志ですか?」
どちらにせよ存在ごと消し去るのですが、この世界の魔人の目的を知りたかったのです。
「うるせえな!!下等生物のゴミが誰にものを言ってんだよ!!ばーか!!」
「そうですか。言いたく無いのでしたら、それで良いです。」
知りたかったのですが、どうやら話したく無いようです。
「ゴミはこれでも喰らって燃えちまえ!!『火炎球』!!」
――ボウッ!!
無詠唱では無いみたいです。
――シュッ!!
溜めなければ火炎の球体を放てないようでしたので、溜めていたものを無に飲み込ませました。
「魔力の調子が悪いな…もう一回だ!!『火炎球』!!」
――ボッ!!
自分の調子が悪いと思ったようです。
――シュッ!!
今度は火が球体を形作る前に、無に飲み込ませました。
――ボヒュンッ!!
「…いっ!?い…今のは…。」
私が無詠唱の『爆炎槍』を、魔人を掠めるように撃ち放っただけでした。
「魔法ってこう撃つものなのですが…もしかして撃てないのでしょうか…?」
「ふざけるな!!ゴミの分際で!!『隕石召喚』!!」
さっきこの場所を襲ったのはこの魔人が放った『隕石』だと確定しました。
『隕石召喚』は呼ぶだけなので、魔力がある程度あれば呼べてしまいます。
――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
空の彼方から轟音を立てて二つこの場所に向かって来ているのが見えました。
「あらあら。」
――バヂッ!!バヂッ!!
二回、上空の障壁から音が聞こえました。
「何だってええええ!?隕石が障壁に負けた…だと…?」
「さっきの質問、答えて貰えませんか?」
聞かないまま終わりにしたら、この魔人に命を奪われた方々に面目が立ちません。
「こ、答えたら…何かあるのか?」
「良いことがあるかも知れませんねー?」
何か脈がありそうな返事がありましたので、うまく返しました。
「とあるお方に頼まれたんだ。やって来いって。」
「そうですかー。お答えいただいて、ありがとうございます。」
何だか面白い展開になって来ましたが、そろそろ私も時間切れです。
「答えたんだ!!良いことあるんだろ??」
「はい!!良いこと…してあげますね?」
そう私は答えると、身体に抑え込んでいた魔力を解き放ちました。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!この凄まじい魔力…まるで…。」
「魔人さん!!我ら…アビスディストピアの名の下に…成敗します!!」
とりあえず、思いついた組織の名前を口に出して言ってみました。
私がアビスディストピアという、裏の英雄組織の主人で…アーシェが秘書ということにしておきましょう。
「別の世界の悪魔から…“災厄の小悪魔”が居ると聞いた事が…。あっ!?さっき…はははは…。」
魔人は何か思い出したようでしたが、もう変身解除しそうなので、私は容赦せず必殺技を声高らかに叫びました。
「カラミティィィィデモネズゥゥゥ・フレイム!!」
一見突きを繰り出しているだけのように見えますが、古の魔法『深淵の獄焔』を無詠唱で拳に乗せて打ち放っています。
――ドオオオオオオオオンッ!!
轟音と凄まじい黒い焔に魔人は一瞬で包まれました。
「ウワアアアアアアアアアアアアッ!!」
――ボシュッ!!
魔人の断末魔の叫び声は音と共に…全て消え失せました。
「我らアビスディストピアは、魔人の好きにはさせません!!」
今の言葉決まった…と思いながら、私は慌てて障壁を解除すると、人気のない場所に『瞬間移動』しました。
――フゥッ…。
私を包み込んでいた闇が消えると、アヴィレネーナの姿から普段の十一歳のアルシェの姿へと戻りました。
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何気ない顔で私は、さっき魔人と戦っていた広場に足を運んでみました。
すると、広場には国の騎士団が来ており、大騒ぎになっていました。
「アヴィレネーナと言う女性が私を助けに来てくれたのですが、私の身体を一瞬で治すと…広場の外へ連れ出して頂いて、その後、広場一帯に障壁を張られました。すると、魔人を一撃で跡形も無く…。」
先程のこの地域を守る騎士の人が、騎士団に聴取されておりました。
「はい。彼女は魔人との戦闘中、裏の英雄とかアビスディストピアという組織を名乗っておりまして…。」
いきなり国の騎士団に、私の名前と組織の名前が知れて運が良かったです。
あくまでも裏の英雄なので、正体がバレないようにしなくてはいけません。
「アヴィレネーナと言う女性は…そうですね、伝承に残っております“悪魔”のアーシェ様の容姿に酷似しておりました。はい…露出度の高い服を着ておられまして…。」
アーシェは私の眷属にして、所有物なので…。
格好が似ているのは、アーシェが私のことを好き過ぎるあまり、真似をしていたからで…。
何か凄くモヤモヤしてしまいました。
「アルシェ様?どうされました?」
背後から急に声をかけて来たのは…モヤモヤの元凶のシェンティことアーシェでした。
「アヴィレネーナは肌の露出が好きな、アーシェの物真似女って言われた気がして…。」
「!?あ…そ…それ…は…。あ…あ…っ。」
私の言葉に、シェンティの様子がおかしくなりました。
やはり…シェンティに思い当たる節があるようです。
「まさか…!!本当に私の真似して、戦ってたりしたことあるの?!」
「アヴィレネーナ様が居なくて…逢えなくて…寂しすぎて…。昔、アヴィレネーナ様が脱いだ服を盗んで隠し持ってまして…それを着て…ずっと戦ってました…。」
確かに、大昔に私の服が無くなった事があったのですが、犯人がシェンティだったとは思いもしませんでした。
「アーシェ様が再臨なさったという噂が最近あるようだ。それから魔人達の動きが活発になって来ているのだ。」
国の騎士団の一人が、先程の騎士にそう話しておりました。
「シェンティ?まさかと思うけど…口の軽い者がリーズランデの家の中に…居るのかもね?」
疑う訳では無いのですが…そのせいで、魔神復活に向けた動きが出て来ているのかもしれません。
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この話の主な登場人物
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名前 :アルシェ=デルジェイム
年齢 :11歳
性別 :女
種族 :人間
職業 :フィルネルス女学院小等部
魔力量:251(下級悪魔を倒して150増えた)
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人、魔法騎士アルディスの末裔。
七英雄の一人“悪魔”のアーシェの末裔。
異世界転生者。
裏の英雄組織“アビスディストピア”の主人。
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名前 :アヴィレネーナ=ディズフィア
年齢 :不明(推定1000歳以上)
性別 :女
種族 :最古級悪魔
職業 :裏の英雄
魔力量:測定不能
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :白
髪 :ツインテール(金色)
目 :真紅
その他:災厄の小悪魔。
アルシェの異世界転生前の姿。
アルシェの魔力量で容姿・年齢が変化。
露出の極めて多い際どい衣装を着用。
アルシェの変身魔法で10分変身可能。
次に変身可能になるまで5時間必要。
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名前 :アーシェ=リーズランデ
年齢 :不明(推定500歳以上)
性別 :女
種族 :上級悪魔
職業 :英雄
魔力量:測定不能
魔法 :未知の魔法
スキル:未知のスキル
肌 :肌色(ブルベ系)
髪 :ロング(黒色)
目 :焦茶
その他:七英雄の一人“悪魔”のアーシェ。
300年以上前、異世界転移してきた。
魔神討伐後、自らの呪いで眠っていた。
真名はアーシェンテア。
“悪魔”のアーシェ時代、
アヴィレネーナから盗んだ衣装を着用。
シェンティ=リーズランデとして、
アルシェの付きメイドに。
裏の英雄組織“アビスディストピア”の秘書。
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この話の登場人物
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名前 :隕石の魔人
性別 :男
種族 :下級悪魔
魔力量:1500
魔法 :火球、隕石召喚、等
その他:魔法は有詠唱。
別の世界の悪魔から“災厄の小悪魔”の話を聞いていた。
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名前 :不明
性別 :男
種族 :人間
職業 :騎士
その他:フィルネルスの街を守る自警団の騎士。
隕石の魔人の隕石召喚により、
上半身だけになっていたところを、
アヴィレネーナに救われた。
アーシェ崇拝者。
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