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お披露目パーティー

 フィリップ主催のパーティーは国中の有力な貴族が参加することとなりました。

 もちろん、その中にベルクライン公爵もおります。

 あくまでも、ジルとは無関係そんな感じで参加しているはずなのですが……。


「やぁ、フィリップくん。あのとき以来だね。今日は招待してくれて嬉しいよ。私も結婚しなきゃと焦らなきゃならないがね」


「いやいや、公爵殿なら引く手あまたでしょう。焦る必要など――」

「そうですわぁ。ジェイド様は格好いいのですからぁ、直ぐに結婚出来ますぅ」

「んっ? ジル? 随分と公爵殿との距離が近くなってないか?」

「はい。ジルはジェイド様のことをお慕い――」

「はっはっはっはっ! 二人とも似合いのカップルだ! 今日はパーティーを楽しむとするよ!」


 出ましたね……。ジルの悪いクセが。

 あの子は決して隠し事が上手いタイプではありません。

 何度も馬脚を現わして、泣いて誤魔化してきた子です。

 ベルクライン公爵は当然、二人の関係についてもバレないように演技しろと命じていますし、ジルも承知したのでしょう。


 ですが、今のジルの頭の中は恐らく、好きな人の前で如何に可愛い自分を見せるかに集中しています。


 彼のあの引きつった顔――どうやらジルの本質を見誤っていたようです。

 ベルクライン公爵だけではありません。エリックも肉親の私ですらジルという子の本来の性格を考えていませんでした。


「レイア、君の妹は大丈夫なのかい? ちょっと僕は引いてるよ」


「ベルクライン公爵に思った以上に夢中なのが分かりました。あの子、今は可愛いと思われたいとしか考えていません」


「いや、それで計画が台無しになったらベルクライン公爵に嫌われるとか考えるだろ」


「いいえ。あの子はそもそも愛されることが当然だと思っているのですよ。私も見誤っていました。よく考えるとジルはそもそも自害するようなタイプじゃない――泣けば全て許されると信じているタイプです」


 ベルクライン公爵には素知らぬ顔をせねばならないはずのジルが彼に親しそうな態度を取っている様子を見て、エリックは小声であの子の天然ぶりに驚いていました。


 私も自らの命が狙われているという緊迫感の中でついつい忘れがちになっていましたが、我が妹のこういう一面によって婚約破棄されたことを思い出します。


 ベルクライン公爵も焦っているでしょうし、ジルを簡単な女だと侮っていたことを後悔しているでしょう。


「え、エリック殿下、今日はよくぞ来てくださいました。……れ、レイアも、うん。来てくれて礼を言う。色々とすまなかった」


「ああ、招待してくれてありがとう。フィリップ」

「私は何も気にしておりません。フィリップ様も負い目を感じなくて結構ですよ」


 フィリップは流石に私たちに気まずそうな態度でしたが、こちらとしても利用している立場なので罪悪感がありました。

 この一件が解決した後には謝罪をしなくてはなりませんね……。


「レイアお姉様ぁ、来てくれて嬉しいですわぁ。お姉様が来てくれませんと始まりませんからぁ」


「ジル……、婚約おめでとうございます。フィリップ様と新たな生活を営む準備も大変でしょうが、早く慣れると良いですね」


「はい! ジェイド……、じゃなかったフィリップ様との新たな生活も楽しみですわ」


「「…………」」


 ええーっと、この子は本当に浮かれているみたいです。

 多分、ベルクライン公爵に将来的に妻に迎えるとか言われたのだと思いますが、名前を間違えるにしても最低のタイミングです。


「おい、ジル。今、ジェイドって言わなかったか?」


 当然、フィリップはジルを問い詰めます。

 困りました。フォローをするのも不自然ですし、とにかく、ベルクライン公爵との関係は知らないことだけは装わなくては……。


「ジル・ウェストリア……! 君は自らの婚約者の名前を間違えるとは何事だ! 君はフィリップと婚約していることが不本意なのかもしれんが、公の場での態度でそれはあまりにも不義理だぞ!」


「ひぃっ……!」


「そもそも、以前に会ったときから僕は君の態度は気に食わなかった! いいかい! このパーティーの趣旨は――!」


 訝しい顔をしているフィリップの横でエリックが突然、ジルを大声で糾弾します。

 彼のあまりの剣幕に彼女は早くも涙目です。

 そして、フィリップもエリックの迫力に押されて唖然とした表情でその様子を眺めていました。


「で、殿下! エリック殿下! やめてください! ジルは緊張しているだけなのです! 些細なミスくらい大目に見てください!」


「ぐすっ、ぐすっ……、お母様ぁ……、エリック様が……、ジルに意地悪を……」


 更に義母のエカチェリーナが飛んできて、エリックからジルを守ろうと弁護します。

 ジルは涙をボロボロ流して、子供のように泣いており、周囲は騒然としてきました。


「ウェストリア夫人! 僕は友の為、フィリップの為に怒っているのだ! なぁ、フィリップ! 君も許せないだろ!?」


「えっ? そ、そうですね、ジルも反省しているでしょうし、もう気にしないことにします」


 エリックがフィリップに話を振ると彼はそれ以上の言及を止めました。


 フィリップがジルの失言を追及するより、王太子殿下であるエリックの機嫌が悪くなることを避けようとしたのです……。



「まさか怒ったフリをして乗り切るとはおもいませんでした……」


「んっ? まぁ、半分は本当に腹が立ったからだけどね。まったく……」


 どうやらエリックは少し本気で怒っていたみたいです。

 さて、思わぬトラブルが起きてしまいましたが、ここからは気を引き締めてベルクライン公爵を追い詰めませんと――。

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