表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/54

仕掛け

 ベルクライン公爵がジルに禁術クラスの毒魔法(アークポイズン)を授けて、私の暗殺を企んでいるであろうことが判明しましたが、私たちは特に何もアクションを起こしませんでした。


 何故なら、今の状態では憶測の域を出ないからです。


 四大貴族の一人であるベルクライン公爵は王族の次に大きな権力を持っており、その影響力は強い。

 そんな彼の身柄を確実に拘束するには王太子であるエリックといえども確固たる証拠が必要でした。


 この状況ではせいぜいジルの浮気を言及して未然に毒を盛られることを防ぐことくらいしか出来ないでしょう。


「それではジル殿を拘束して取り調べては如何ですかな? そしてベルクライン殿の企みを証言させるのです。何も、レイア殿が危険を冒さなくとも――」


「いや、ジル・ウェストリアはベルクライン公爵に随分と心酔しているみたいだった。拘束されそうになったら、自らに致死毒を盛って自害する恐れがある。彼ならそれくらいの指示は出してるだろう」


 ベルクライン公爵に情愛という感情を利用されて繋がっているジルは、追い詰められると自殺する可能性が十分にあります。

 愛する人に迷惑をかけるくらいなら、死んだ方がマシだという思考になってもおかしくないのです。


「ですが、それならば実際にジル殿がレイア殿の命を狙った瞬間を取り押さえても同じことでは? ベルクライン殿の指示でレイア殿を殺そうとした客観的な証拠。それが分からぬことには」


 ヨハンはジルが私の命を狙うまさにその瞬間に取り押さえたとしても、結局のところ彼女は自害してベルクライン公爵を追及することは出来ないのではと懸念します。

 その懸念は尤もですし、だからこそベルクラインはこういうやり方を選んだのでしょう。


 しかしながら――。


「ところがそれが、そうでもないんだよ。ベルクライン公爵には相応の報いを受けてもらうさ。……取り敢えず、連中におあつらえの舞台は整えてやるとする。こうして、な」


「フィリップ・ジルベルト主催、婚約お披露目パーティー。こ、これは……」


「何の疑いもなく、僕が……、レイアが……、出席するだろうという舞台を作ってやった。ジルベルト公爵に言ったのさ、きっちり婚約者に誠意を見せるために息子にパーティーくらい主催させたらどうだ、とね。当然、ベルクライン公爵にも招待状は出させている」


 いつ狙ってくるのか待つよりも、エリックは誘い出すことを選びました。

 私の元婚約者で、今はジルの婚約者であるフィリップは公爵家の嫡男。

 エリックはフィリップの父で四大貴族の一人であるジルベルト公爵に息子にケジメを付けさせるために婚約者のお披露目パーティーを開かせるよう命じました。


 普通ならいくら王太子殿下の言うことであれ、余計なことだと、或いは不自然だと、感じられるでしょう。


 しかしながら、フィリップは私と婚約破棄したあとにジルと婚約して、それを一度破棄――さらにエリックの前で私に求婚して怒られた後にジルと再び婚約しています。


 これはかなりの醜態であり、ジルとの二回目の婚約はジルベルト公爵が自らの息子が誠意ある行動をしているとエリックに認めて貰うために行っているので、婚約者お披露目パーティーを開けというエリックの意見は自然な流れとなるのです。

 

「私にエリック様、そしてジルとベルクライン公爵が同じ場所に集まる機会。しかも飲食をする立食パーティーです。毒を仕込むにはうってつけだと思われます」


「レイア殿……、あなたは……」


「ジルは必ず、私に接触をするはずです。毒を仕込むために……。そこで私たちは勝負に出るつもりです」


 ジルが殺意を持って私に接触してきた時こそが最大にして唯一のチャンス。

 ここで、私たちはベルクライン公爵の企みを看破します。

 

 招待状にベルクライン公爵が応じるかどうかは確実ではありませんが、心理的にジルの報告を待つよりも……自ら私が殺される様子を確認したいと思うでしょう。


 かくして、私たちとベルクライン公爵の戦いはフィリップ主催のパーティーが主戦場となりました――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ