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【WEB版】悲劇のヒロインぶる妹のせいで婚約破棄したのですが、何故か正義感の強い王太子に絡まれるようになりました【コミックス4巻発売中!】  作者: 冬月光輝
第1章『悲劇のヒロインぶる妹と正義感の強い王太子』

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資料室にて

 エカチェリーナからもたらされたベルクライン公爵とジルが逢引をしているという一件は私たちで調査して真相を究明することとなりました。


 まさか、ただの浮気騒動だと思っていたことが――エリックに繰り返し暗殺者を送っていた黒幕がベルクラインであるという推察が真実なのかどうかにも繋がるなんて……。


 王宮に戻った私はエリックに命じられて、ある資料を取りに向かいました。

 今日は休みの日なのですが、何かすることがないと落ち着かないので彼に頼み込んで仕事を頂いたのです。


「おや、またお会いしましたね。レイアさん」


「デール様……? 珍しいですね。資料室に来られるなんて」


 資料室で頼まれた物を探していますと、この国の第二王子であるデールが話しかけてこられました。

 どうやら彼も何か資料を探しているみたいです。


「あはは、そうですよね。しかし、私も兄ほどではないにしても父上から幾つか執務を任されていますから」


 笑った顔はエリックによく似ていらっしゃる――微笑みながらここに来られた目的を話すデールを見て私はそんなことを思いました。


 

 さて、私も資料を探しませんと……。ええーっと、どこでしょう――。



 この辺ですかね……。ああ、ありました。これです――。



「「あっ……!?」」


 私とデールの手が同じ資料に伸びて触れました。

 まさか、彼も私と同じものを……? だって、この資料は……。


「失礼しました。デール様もこちらの資料を所望されているとは思っていなかったものですから」


「いえ、こちらこそ。しかし兄上がまたこちらの事件について調べようとお考えとは。ベルクライン派の役人が自害した一件。あれは自殺だとして、納得したものかと思っていましたから」


 そうです。私がエリックに頼まれたものは、かつて彼が不正をしたとして糾弾して自害したという二人の役人についての資料。

 ベルクライン公爵によって粛清されたとエリックは疑いましたが、証拠が見つからずに自殺として処理されました。


 エリックは今回のジルの一件を調べるにあたってもう一度、この事件について調べたいと仰せになり、私にこちらの資料を持ってくるように命じたのでした。


 それなのに、デールがこの資料を手に取ろうとされるなんて――。


「あの、デール様もこちらを?」


「……ええ、そうです。ですが、私は兄の後で結構ですよ。急ぎではありませんし、他にも仕事はありますから。そちらを先に済ませます」


「そ、そんな……、それだとデール様がお困りでは?」


「お気になさらずに。こちらは時間に余裕がありますから。私にはこれくらいしか兄にして差し上げられないことが残念ですが……」


 デールは役人二人が自害した事件の資料を私に譲ってくださいました。

 私は迷いましたが受け取ります。時間に余裕があるということが本当なのか気を遣って頂いているだけなのか、分かりませんからなるべく早く戻しませんと。



「順番をお譲りくださってありがとうございます。エリック様にもお伝えしておきますので」


 私はデールに一礼して、資料室を出ようとします。

 お待たせしているなら、急ぎませんと……。


「レイアさん!」

「――っ!?」 


 その時、デールが大きな声で私を呼び止めました。

 振り返ると彼はまた少しだけ悲しそうな顔をされています。


「い、いえ、兄を守ることも大事ですが、どうかご自分も大事になさってください」


「は、はい。ありがとうございます」


 彼は私自身も大事にするように、と告げられます。

 私はもう一度、頭を下げてデールにお礼をして――エリックの待つ執務室へと向かいました。





「デールがこの資料を? ふむ。それで、先に譲ってくれたのか」


 エリックは私から資料室でデールに会ったことを伝えると顎を触りながら考え込む仕草をしました。

 やはり気になりますよね。タイミングが一緒だったのは偶然だとしても。  


「……分かった。ありがとう」


 数十秒ほど沈黙された後にエリックは私に礼を述べ……資料に目を通す作業に移りました。

 時折、メモを取りながら、そして時折、「なるほど」と頷きながら、一時間ほど作業を続けて――急に立ち上がります。


「よし、ジル・ウェストリアを尾行しよう」


「えっ……? エリック様が自ら……?」


 決心したような表情でエリックは妹のジルを尾行すると口にします。

 いや、王太子殿下自らが尾行などという行為をするなんて……。

 それならば、私もエリックに付いてジルを――。

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