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【WEB版】悲劇のヒロインぶる妹のせいで婚約破棄したのですが、何故か正義感の強い王太子に絡まれるようになりました【コミックス4巻発売中!】  作者: 冬月光輝
第1章『悲劇のヒロインぶる妹と正義感の強い王太子』

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真の目的

 ベルクライン公爵が妹のジルを利用するために近付いているという推理をされたエリック。

 もしも、その仮定が正しいのならジルは用済みになった場合殺されてしまう可能性もあると言われて私は戦慄しました。


「怖がらせたようだね。ごめん、ただの情欲に塗れた男女の縺れかもしれないし、あくまでも疑い深い僕の推測だから」


 いえ、その慰めは既に手遅れですよ。

 もうジルのことや家のことを心配していますから。

 エリックの洞察力の鋭さは存じてますし、彼が懸念しているということは少なくとも八割程度は核心に迫っているのでしょう。

 

「エリック、男女の縺れって何アルか?」

「リンシャ殿、こちらのクッキーも絶品ですぞ」


 リンシャとヨハンは敢えて私の話を気にしないようにしているのか他愛もない話をしています。

 このまま、ジルの件をどうするか……。

 私はエリックに一つの質問をしました。


「もしも、エリック様の推測が正しいと仮定すると、ベルクライン公爵の目的は何だと思われますか?」


 そうです。男女の関係でなければ、ベルクライン公爵がどんな目的でジルに近付いているのか、全く見当がつきません。

 エリックならそこまで推測しているかもしれないと思い、問いかけてみたのです。


「……多分、真の狙いは君だ。レイア」


「わ、私ですか……?」


「これ以上はベルクライン公爵の名誉を傷付ける可能性もあるから、あまり口にしたくないが……彼が僕の暗殺を企てていた主犯なら邪魔な君を消すために君の妹に近付いたと考えることも出来る」


 エリックは先程よりも更に小さく低い声で私にとんでもないことを言い放ちます。

 私を消すためにジルに近付いた? ベルクライン公爵がエリック暗殺を企てている主犯だから――。


 もちろん、これはエリックの推測ですから的外れということもあり得ます。

 しかし、言われてみればそれ以外に理由が思いつきません。


 ――私が悪意の対象なのかもしれないということですか。


「レイア、すまなかった。護衛として迎え入れたことで、君の家に危害が及ぶかもしれない。これは僕の責任だ」


「頭を下げないでください。まだそうとは決まっていないと仰せになったのは、エリック様ではないですか」


「いや、そうと決まったときはもう遅いだろう。君の優秀さに甘えてしまっていた。君なら暗殺者くらい跳ね返せると思っていたが、君の家族にまで気が回ってなかった」


 いつになく落ち込んでいらっしゃるエリック。

 私の実力を信用して頂いて護衛に迎えてくれたことは光栄なことだと思っています。

 ですから、そんな顔をしてほしくありません。


「良かったじゃありませんか」


「レイア……? 良かったことって、君の妹が――」


「まだ、何も起こってません。それならば未然に防ぐことが出来るということです。義母(はは)のおかげで先に警戒が出来るという幸運を喜びましょう。恐らくジルを人質に取るなどして私の命を狙うなどと予測は出来ますから」


 先に知ることが出来たことを私は喜ぶべきだと伝えました。

 ベルクライン公爵がジルを利用すると分かっていれば、その謀略を防ぐことは難しくないのですから。

 

 それに――。


「私はエリック様の護衛です。あなたを守るためでしたら命くらい張りますよ。やっと黒幕を突き止めるところまで来たのです。日和っている場合ではありません。奮起すべきです」


 もしも、ジルを利用して私を暗殺しようとする計画にベルクライン公爵が絡んでいることを明るみにすることが出来れば、エリックが暗殺対象として狙われることが無くなるはず。

 寧ろ、今回の件は尻尾を見せた獣を捕える大チャンスなのです。

 

「あはは、君には敵わないなぁ。まったく……」


「少し、元気になられましたね」


「君の悩みを解消するためにここに来たのに、逆に励まされるとは――。……うん、君の言うとおり奮起すべきだった。僕は君を守り……、更に自分の正義を貫くよ」


 力強い視線を送りながらエリックは正義を貫くために立ち上がると声を出しました。

 それでこそ、誰よりも不義理を許さない私の尊敬する王太子殿下です。


 私もあなたのためにあなたの敵を捕えるために尽力します。

 共に戦いましょう。怖いものなど何もありませんから。

   

 ですが、一つ気がかりなことがありました。  

 ジルを人質にするならば……逢引などせずに攫ってしまえば良いのでは、という疑問が頭を過ぎったからです。

  

 ベルクライン公爵がジルを利用するならば、もっと他の何か方法が――。

 その方法について一つおぞましい想像をしてしまい、いくらなんでも妹がそこまでするとは思えず首を横に振りました。


 ――ジル、あなたは私を殺そうとなんて考えませんよね? もし、そうならば私は――。

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