17-4.地獄では(???視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(???視点)
地獄、地獄。
阿鼻叫喚の絵図がふさわしいくらいに。
唸れ、唸れ、唸れ。
八岐大蛇である己への導きのために。
届け、届け、届け。
我が声を聞き届けよ。
我が本体。
我が亡骸。
八岐大蛇の本体へと。
草薙剣はもうないとは言え、力の残滓程度は残っている。
我は、尾。
我は、八つに別れた意思の集合体。
十束剣である、金剛刀の主である番にふさわしい。
だから、まずは戻るのだ。
己だったものに。
なのに、また邪魔が入ろうとしていた。
「……ここから先には、進ませぬ」
艶やかな黒髪。
同色の豊かな長い髭。
精悍な顔つきに、立派な体格。
豪奢な装い。
元は、ただの人間だったとも言われている地獄の管理者。
『ふぅん? 閻魔大王が僕の相手を……?』
「神々から聞いている。お前が復活したと」
『じゃ、退いてよ?』
「断る!」
『ちぇ』
ここで邪魔をされるのは面倒だ。
下手をすれば、あの神々もやってくるかもしれない。
今の神々の体制を崩せば、尾は穫と共に過ごせない。
かと言え、ここまで来て『はい、そうですか』と蜻蛉返りすることも出来ない。面倒だからだが。
「……だから。お前はここで消滅させる!!」
『閻魔大王には無理だって〜?』
力はあるようだが、神代の時代からの人間だった存在に過ぎない。
かつて、国津神達を喰らって来た八岐大蛇とは違う。
力の差があって当然だ。
ましてや、神々の封印が解けた今なら。
「ほざけ!」
『おっと〜?』
幽体状態の玉ではチョロチョロするしか出来ない。
それが面倒だったので、尾は形態を変えることにした。
手足を創り、顔を創り。
細い手足が特徴的な、蛇眼の少年。
尾は人間体にもなれたのだった。
「あ〜んら。そこまで封印解けちゃってるわけ?」
閻魔大王と対峙しようとした瞬間。
絢爛に着飾った、悩ましい雰囲気の女神が降り立った。
ついこの前も止めに来た、天照大神だった。
「天照大神!?」
「引き止めご苦労さん。とりあえず、あいつはあたし達が引き受けるわん?」
『……達?』
「そうですよ?」
と、後ろから剣の気配をギリギリ察知して、尾は屈むようにして避けた。
後ろにいたのは、女神と見紛うばかりに美しい男神。
その後ろには、見覚えのある男神が怒りを露わにさせていた。
『……素戔嗚尊!?』
八岐大蛇から生贄を奪うだけでなく、屠ってくれた張本人。
自然と、美しく創ったはずの顔が歪んでいくのがわかった。
次回は金曜日〜




