14-4.恋のために(笑也視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(笑也視点)
依頼は遂行出来た。
とは言え、穫から直接報酬金を得ることは出来ないので。とりあえず、大学在学中は笑也のハウスキーパーでいてもらうことにした。
部屋を速攻で汚部屋にしてしまう習性があるので、羅衣鬼を宿している彼女の労力はありがたかった。
本来なら、彼女に宿っている金剛刀の咲夜を継承してしまえばその必要性はないのだが。切り離すだなんてとても出来ない。
ただの依頼人ではなく、彼女は笑也が想う相手だ。
だからこそ、近くにいて欲しいがために最善の方法を取るまで。
【しっぶい顔しちゃって〜?】
インスタント研究家の方の仕事をこなしていると、エミが降りてきた。相変わらず怠惰のような装いで艶かしく神体を顕現させているが、穫を好きだと自覚したらなんてこともないように思えている。
ただ、穫がもしエミのような服装とか水着を着ていたら、笑也でも鼻血案件かもしれないが。
とりあえず、エミの質問に答えることにした。
「そんな変な顔してた?」
【してたしてたー。なーに? みのりんのこと?】
「読んだ?」
【顔見て読んだだけよん?】
「あっそぉ……」
それだけ、エミにもバレバレな風態でいたのだろう。
別に、エミには気持ちを自覚させてもらったから構わない。むしろ、聞いて欲しかった。
【言うなら、さっさと言いなさいよん? 呪怨のことも一件落着なんだし、なーんにも後ろめたいことないじゃなぁい?】
「いや……まあ。そうだけど」
【あんたの人生初の恋だから?】
「エ〜ミ〜?」
【はいはい。初心なんだから〜?】
たしかに、笑也にとっては人生で初めての恋だ。
幼少期はまじないで女の子の格好をしていたし、男に戻ってからは言い寄られはしても簡単に恋なんて出来なかった。
穫に抱いたような、特別な感情を持たなかったのも理由のひとつだ。友達ですら、六条家との顔合わせがなければ巧以外、今でもまともにはいない。
もともと、人付き合いがそこまで上手くないからだ。
でも、だけど。
「……穫、ちゃんは大事にしたいんだ」
今までの依頼人の中にも、美女や美少女はいた。
しかし、穫は。
一緒にいると、なんだかほっと出来るのだ。最初に作ってくれたチーズカレーで、既に胃袋を掴まれたせいもあるが。
【……あんたがそう思えるようになっただけでも、上々だわ】
「……エミ」
【だって、みのりん?】
「……………………え?」
少し隙間が出来ていた扉を開ければ。
顔がトマトのようになっていた穫以外にも、笑也が顔を出したらいきなり拍手し出した佐和達がいたのだった。
「……え、み、や……さ」
「ぜ……全部、聞いてた…………?」
「は……い」
それにしても、穫のこの反応はもしや、と笑也は膝を折って彼女の目線に合わせた。
外野が色々うるさく言っている気がするが、今は関係ない。
ここで誤解させていたとしたら、意味がないからだ。笑也は、大きく深呼吸をしてから穫の顔を真っ直ぐに見た。
「きちんと言うよ。君が好きなんだ。僕の、恋人になってください」
「!……………………は、い!」
笑也は泣きそうな笑顔になる彼女の顔を見て。
ああ、この子を好きになって良かったと実感出来て。思わず、その場で抱きしめたのだった。
次回はまた明日〜




