12-5.立ち向かうため
お待たせ致しましたー
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吐き気がしそうだった。
あの水無と言う男性から、斎に報告はあったが。
エミが穫と佐和を、おそらく瞬間移動で連れてきたところは。
血の臭いで充満していた道路のど真ん中だった。
「うぷ……!?」
「酷い血臭だ!? むせ返りそうだよ!」
「戦とか戦争ならともかく……これは最悪だわねえ?」
エミは穫達とは違い、しかめっ面になっていない。身体は笑也の物でも、この惨状に慣れているのか。少し、ぞっとしたが気味悪がっている場合じゃない。
「エミ、さ……呪怨もですが、斎さん達はどこに……?」
「うーん……あたし程じゃないけど、高速で移動してるわねん? どーする? 追いかける?」
「……ここで、死んでしまった人達は」
「……うーん。ゲームみたいに復活とかは出来ないわ。あたし達神でも、余程のことがない限り……蘇りは許されていないもの」
無条件に死者を蘇生させては、あの世が混乱するからだとか。
だが、今回は単純に死を迎えたよりも厄介らしい。
呪怨が、力を得るのに魂まで取り込んでいるそうだから。
「それは厄介ですねぇ? 下手すると、輪廻転生……生まれ変わるのも叶わなくなる」
「だから、呪怨本体を倒すしかないわ〜? みのりん、全力でサポートはするけど……呪怨を倒せそう?」
「私……がですか?」
「今のみのりんなら、十束剣をうまくコントロール出来てると思うの。あの泣き虫当主とかにも、呪詛返しされないと思うわ」
「……私、が」
この惨状を終わらせることが出来るのであれば。
斎達、万乗の本家の人達が死なないのなら。
可能性があるのなら、逃げ腰にならずに立ち向かう。
斎だって怖いはずなのに、当主として呪怨に立ち向かっているのだから。
だから、穫も頑張ろうと。
咲夜を剣で、羅衣鬼を青年サイズで顕現させた。
「なら、僕も式神を出そう!」
佐和はキュロットのポケットから、人型の札を取り出して。頭上高くばら撒いた。
「……探せ、捜せ。悪しきもの、この世を乱すものを! 我が命に従い、探し出せ!」
浮いた札が、どんどん膨らんでいき。それぞれ違う人間のような姿に変化していく。
一度佐和を見て頷いたら、無言で彼らは四方八方に飛んで行ったのだった。
「薬師如来の力を借り受けた式神達だ。すぐに見つけてくれるだろう!」
「やるわねぇ、さわちん?」
「恐悦至極。とは言え、遠方過ぎたら戻って来ないかもしれないですねぇ? コンタクトを連携はしているので、とりあえず進みましょう」
「そうねん? 須佐達も調べているでしょうけど」
「探しましょう、エミさん!」
これだけ血生臭いのに、マスコミや警察がいないのは須佐達のお陰かもしれない。
その気遣いが無駄にならないように、三人で血溜まりの上を走ったのだった。
次回はまた明日〜




