9-2.最悪と最上?(笑也視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(笑也視点)
悪い知らせが来た。
「……本当に?」
【ええ。間違いないわ】
穫が大学に行っている間。
エミが、弟二神である須佐と月詠から、知らせを受けたそうだ。
そして、笑也の耳にも入ったその知らせは、穫には聞かせられない内容だった。
「呪怨が……力を得るのに、無関係な人間を捕食?」
最悪だ。
穫の願いは、誰も死んでほしくないと言うものだったのに、それが叶わなくなった。
たとえ、万乗の本家の人間でないとは言え、死人が出たことに変わりはない。
その最悪の結果を、穫に伝えるべきかどうか。
それは、笑也の手にかかっているのだ。
【……みのりんの願いがなきゃ。早々にあたし達が始末したけど。それだと、みのりんが悲しむわ】
「…………けど。言わないわけにはいかない」
【酷だけど……しょうがないわね?】
だけど、一度巧にも聞いてみようと彼を部屋に呼べば。
笑也のような苦虫を噛んだような表情になった。
「……穫ちゃんには、辛いな?」
「警察とかは、行方不明とかで扱っているだろうけど」
「証拠がないんや。一部とは言え、霊媒関係を理解してる連中が少ないのは、お前が一番知っとるやろ?」
「……うん」
下手に隠し続けていたら、その分怪しまれる。
穫には辛いだろうが、本当の事を言った方がいい。
とりあえず、LIMEで『話がある』とだけ連絡を入れたら。すぐに『わかりました』と返事が来た。
きっと、夕飯の献立とかでエミがリクエストするだけだと思っているだろうが。現実は違う。
彼女が帰宅するまで、とりあえず表の仕事を進めていたが。どうもうまく集中出来なかった。
別に、これまでの仕事でも似た事件はあったのに。どう言うわけか、穫に対しては同情以上の感情で心が揺れてしまう。
なんだろう、と思っていると。
エミに、霊体とは言え、強く頭を殴られてしまったのだった。
【な〜に、しょぼくれてんのよ!?】
「い、たたた……エミ?」
ぼーっとしてたら、後ろから強打とは。相変わらず、日本の最高神なのに、いやに人間くさい神だ。
【みのりんに惚れたからって、依頼はちゃんと遂行なさい!】
「……僕が?」
【あらん? あたしの気のせい?】
「…………え、僕が?」
六つも年下の、まだ成人前の女の子に。
惚れた、と言われると。何故か急に体が熱くなって、恥ずかしくなってきた。
思わず、その場にしゃがみ込むと。エミからは呆れたとばかりに大きなため息を吐かれた。
【やーっと、自覚したのん? こんの、スカポンタン!!】
「い、いやだって……!? まだ出会ってそんな経ってないよ?!」
【恋に時間は関係ないわよん? あ〜たしはお似合いだと思うわぁ?】
「え……え、え?」
笑也が恋。
穫を好いている。
たしかに、年下だけど気配りが上手だし。笑った顔も可愛らしい。料理上手であるし、胃袋は既に掴まれたと言っていい。
その事実が受け入れられず、しばらく床をゴロゴロしていたのだが。
巧が穫に例の事件を話す前の時間になるまで。笑也はずっとうだうだしていた。巧にもうざいと殴られてしまったが。
「ほーん? 笑也が穫ちゃんをねえ? ええんちゃう? 分家の分家くらいでも、咲夜宿してんなら、実質当主並の実力者やろ?」
【応援しましょー!】
「おー!」
「ぼ、僕はともかく! 穫ちゃんの気持ち考えてあげて!?」
何故確定事項で話が進んでいくのが、笑也にはわからなかった。
次回はまた明日〜




