8-5.達川笑也③(巧視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(巧視点)
親友との第一印象は。
なんて可愛らしい女の子と思って、ガキだった自分がほの字になりそうだったのが。
実は名前を聞いたら、男とわかり、酷くショックを受けたのがトラウマになりかけたが。以降、見てくれで相手を判断してはいけないと心に強く決めた巧だった。
まさか、仕えるべき家の息子と幼馴染みであり親友とまで呼べる関係になるとは思わなかったが。
「……いや、親友言うか悪友か?」
砕けた付き合いが続いて二十数年。まさか、ここまでつるむ関係になるとは思わなかったが。
巧は今、マンションのフロアから事務仕事のために管理人室にこもっていた。自分の持ち場なので、遠慮なく煙草をふかした。
「六条のもんと達川んとこと対面だったとは言え……」
あんな美少女がこの世に存在するかと思ったら、実は美少年だと誰が思うだろうか。巧の初恋になりかけただなんて、本人にもだがつい先日から奴の隣に住むことになった万乗穫にも言えやしない。
「もう二十年以上前か……」
界隈なら、イタコの達川と謳われていれば、六条はその影。臣下であり、フォローする存在であり、立役者となる笑也を引き立てさせる役割を担うだけ。
ただただ、影の存在。
それが、男なのにイタコの素質を見抜かれて。呪法で女となっていた笑也本人から、『友達』になろうと言われて遊び相手になってただけが。
今では、幼馴染みであり親友以上に悪友な関係となっている。どうしてこうなったかは、全部笑也のせいでしかないが。
「……そんなあいつが。女の子をなあ?」
煙を吐きながら、穫のことを思い返した。
可愛らしい女の子だったのが第一印象。大学生として年相応の控え目な態度が目立ったが、きちんと自分の事を言える意思の強さを感じた。
それが、笑也が簡単に除霊すれば『はい、終わり』かと思えば、実は巧のような六条と関連性がある術師家系の一族だとわかり。
笑也本人が依頼と警護を兼ねて、ここに住まわせてやりたいと言ったのだ。巧はそこまで他人に関わろうとする笑也に驚いたが、同居は却下させてもらったが。
そして、少しずつだが変わりつつあったのだ。
エミこと天照大神もだが、笑也も穫も。
わずか数日とは言え、生活習慣が改善されているのだ。穫に宿っていた金剛刀もだが、守護鬼になった羅衣鬼も。
彼らのお陰で、穫もだが笑也も生活が改善されているのだ。主に、あの腐海の森状態についてだが。どこぞのゲームキャラのように羅衣鬼がゴミを食べてくれるのはありがたかった。
そんな生活もまだ二日程度しか経っていないが、そろそろ買い出しに行かないと笑也と言うよりエミが、限界のはずだ。ついさっき、笑也のとこに宅配ピザが届いたのだが昼も過ぎたのにおかしい。
何かあったかもしれない。
「……行くか」
フロントを従姉妹に任せて、笑也の部屋に行けば。
エミが笑也に憑かずに神のままで浮いていて、笑也が穫とその友達だと言っていた琴波佐和に何かを話しているようだった。
「あ、巧さん!」
「よぉ? エミがそっちになっとんの、なんでや?」
【あたし達の昔を話したのよん?】
「そーそー」
「……てことは」
巧と笑也のこともかと言えば、佐和が親指を立てたのだった。
「大神から、貴殿が達川氏を憎からず想っていたとも」
「え〜〜み〜〜!?」
【ほんとだったじゃなぁい?】
「神だからって、言ってええことと悪いことくらいあるやろが!?」
【んふふ〜〜?】
やはりエミにはばれていたとショックを受けたが。シメようにも、霊体なのでそれは叶わず。
仕方なく、全員で買い物に行くことが決まり。
羅衣鬼は高校生くらいの姿に変身して、荷物持ちについてくることになった。
そんな賑やかな生活を、一週間前の自分は予測出来ただろうか。
「……悪ないけどな?」
「? 巧さん?」
「なーんもない」
今は、この生活がいつまで続くかわからずとも、楽しもうと思うのだった。
次回はまた明日〜




