表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/168

8-4.達川笑也②(笑也視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(笑也視点)










 二十数年前。


 笑也(えみや)は、イタコを輩出することで名の知れた達川(たちかわ)家の宗家の家に生まれた。


 誰もが、長男の誕生に喜びの声をあげたのだが。笑也は弱かった。


 霊力と魂は、歴代の達川の人間としては強大だったのだが。


 得た肉体だけが、とてもか弱くて。このままでは十歳もいかない年頃で死ぬかもしれないとまで、医者に宣告されたのだ。


 ただの人間だったら、そこで諦めるはずだが。達川は霊能者、しかもイタコの家系だ。古い呪法を知っていて当然。


 だから、笑也を『エミ』と言う少女として。女としてしばらく育てることになった。より良い肉体に成熟するまでの、性別を偽る呪法。


 だから、髪も服もすべて女のもの。


 そのせいで、笑也は物心ついても自分が女だと信じて疑わなかった。


天照大神(あまてらすおおみかみ)』に出会うまでは。



【ふ〜ん? あんたが、達川の?】



 ほんの少し。


 ほんの少し、庭で遊んでいた時に。宙に浮いている『おねえさん』がいたのだ。見鬼(けんき)の才はもともとあったが、幽霊や神様をそれまで視てこなかったのだ。


 必要以上に身体が弱く、霊力に当たれば体調をすぐに崩す程か弱かったために。両親や使用人達から、その類のモノから引き離されていたのだ。


 たとえ、降ろす神であれど。



「お、おねえさん、だれ……?」

【あら? あたしのことも知らされてないの?】

「?」

【あたしは神様。あんたのお母さんが依代……えーっと、身体を借りて動くことが出来るのよ?】

「か……みさま?」

【そうそう。神様】

「わ、たしになにか?」

【あんた、男なのに『わたし』って使うの?……あー、その格好】

「お、とこ?」

【ほんとよ? あんたは女じゃない】

「え、え?」



 意味がわからなかった。


 それまで、本当に『女の子』と信じて疑わなかった人生を送っていたから。


 突然の言葉に、笑也の頭の中はわけがわからないと動かなくなった時に。


 母が、庭にやって来たのだった。



「エミー、エミー?」

「お、かあ……さん」

【あら、珠緒(たまお)?】

「……何故、大神(おおみかみ)が」

【あんたの息子を見によ?】

「大神、それは!?」

【もう遅いわ。さっき、教えたとこ】

「……そう、ですか」



 地面に膝をついた母親に、笑也は慌てて駆け寄った。


 笑也が来ると、母親はすぐに笑也を抱きしめてくれた。



「お母さん?」

「ごめんね、エミ。いいえ、笑也。あなたの身体が弱いから、お母さん達は逆にあなたを女の子として育ててたの」

「わ、たし……男の子、なの?」

「そうよ。けど、まだ我慢してね? 絶対強くなるから」

【それだけじゃ、不十分よ。珠緒】

「……大神?」



 天照大神の言葉に、母親もだが笑也も彼女に振り返った。



【稀有なのよ。あんたの息子は】

「……と言いますと?」

【男なのに、あたし達神々を降ろせる素質があるわ。将来、あんた以上のイタコにもなれるくらいに】

「笑也が……?」

【試しに、やってみる?】

「けど、今のこの子では」

【笑也、あんたはどう?】

「大神!」

「わ……たしは」



 ずっとずっと、弱かった。


 体が思うようにいかず、友達も出来なかった。


 だけど、それが変わるので有れば。


 笑也は母親から離れて手を差し伸べていた天照大神に、自分の手を重ねた。


 当時、まだ五歳。


 最年少であり、しかも男のイタコが誕生した瞬間だったのだ。


 そこからは、しばらく女児としての呪法も続けながら。定期的に天照大神を降ろすことによって、身体に神力を巡らせて力をつけさせて。


 六条(ろくじょう)の家や他の分家とも交流をするようになった年頃に、(たくみ)と出会えたのだった。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ