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7-4.泣く当主(水無視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(水無視点)









 なんだったのだ、今のは。


 今日も、呪怨の気配があったので、あの(みのり)と言う女のところに向かったが。その放った呪力。


 呪怨の分身を相殺したどころか、本体にまで影響を与えたらしく、マンションから離れる呪怨の気配が少し弱く感じたくらいに。



「……そんなけ、金剛刀(こんごうとう)の宿主だから。強いのかよ?」



 これまでは、ただの見鬼(けんき)の才しかなかった女が。


 確実に、着実に、力を身につけている。


 しかも、今日知ったが友人か知人なのか。あの安倍家の傍流の傍流とは言え、界隈では名の知れた術師である琴波(ことは)佐和(さわ)までいるとは。


 何故、あの女は恵まれているのだ。


 万乗(ばんじょう)の当主とは違って、何故。



「……強いですね。ですが、我々に降りかかる呪いを一挙に引き受けているのは、彼女自身ですよ」



 いつ来たのか、由良(ゆら)が隣に立っていた。相変わらず神出鬼没だ。



「……そうだけどよぉ」




 そうだ。


 本来なら、万乗一族全体に降りかかる呪いを。金剛刀を所持している穫が一挙に引き受けている状態だ。水無(みなし)達は幸運なくらい、被害に遭っていない。


 妬むのは簡単だが、それまで苦労してきた穫を思えば、本当に幸運も幸運だ。


 妬む意味もないくらいに。



「しかし、同級生に琴波が関わっていたとは。今回の件で、穫とは親友のような間柄になったようですし。下手すれば、私達の出番はありません。穫もさらに目覚めたようですから」

「……胸糞悪りぃけど。認めるしねーのかよ」



 今まで出来なかった、呪力の解放。


 当主に匹敵するかあるいはそれ以上。


 加えて、安倍の流れを汲む術師とイタコで名を馳せている達川(たちかわ)の強力なバックアップ。


 水無達の出番はないに等しいだろう。


 ならば、今回も当主に報告するまで、と。とりあえず邸に戻れば。


 当主は、部屋でぼんやりと外を眺めているだけだった。



「「戻りました」」



 水無達が部屋に入ると、当主はゆっくりと顔をこちらに向けてくれた。



「……どうだった?」



 声がいつになく、覇気を感じさせないものになっていた。前回、水無達が確認に行って帰還した時よりもさらに。




「申し上げます。穫の呪力の一部が解放され、金剛刀をさらに強く扱うことが出来るようになりました」

「……協力者には、琴波も加わりました」

「…………そうか」



 それ以上、当主は何も言わずに二人に下がるようにと手で指示し。


 水無はまた当主が心配になったので、扉の前で待機していたのだが。


 少しして、中で泣く声が聞こえたので。思わず開けてしまうと。


 泣き腫らしていた、当主が。


 年頃の少女のように、泣きじゃくっていたのだった。



「み……な、し……?」



 水無と目が合えば、当主は瞬時に顔を赤くしてしまった。



「も、ももも、申し訳ありません!? 勝手に!!」



 当然、水無も自分がなんて勝手な行動をしてしまったと自覚して、すぐに土下座したのだが。


 あとに入ってきた由良には、大きくため息を吐かれたのだった。



「……知ってしまったのですか」

「そう、みたい。由良」



 由良と当主の発言に、水無はさらに混乱してしまったのだが。



「当主とはいえ、年頃の女の子なのですよ。(いつき)様は」

「ごめんなさい。まさか、水無が外にいるだなんて思わなくて」

「バレたのなら、仕方がないですよ」

「い……つき、様?」

「ふふ。ごめんね? 当主として、あんな勝手な顔してたけど。本当は、私……こんな女なの」



 血統が正しいだけの、ただの万乗の女。


 そう言い切って、斎は水無に向かって苦笑いするのだった。


次回はまた明日〜

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