7-3.襲撃②
お待たせ致しましたー
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本当に、どう言う仕組みなのかは素人の穫にはさっぱりだったが。
黒い渦に、札が矢になったものが物凄い勢いで飛んで行って。
穫の目には、接触した部分から矢の先端が形状を変えて。鳥のように変化してパクパクと渦を食べていつように見えた。
なんなんだあれは、と声を上げれずに。穫は穫で羅衣鬼と襲いかかってくる渦の方を対処していた。
「食べちゃえ、食べちゃえ〜〜? どんどん食べちゃえ〜?!」
佐和はいつのまにか、両手でどう言う風に組んだかわからない指の組み方で、それを前に向けていた。
なんだったか、アニメやゲームなんかではあるような決め技のような感じ。
現実でもあるのだな、と感心した。
「あーら、さわちん? 食わせて取り込む気?」
「そうでもしないと。僕の呪力はあなた様を形成している、達川氏に及びもしませんからね?」
「まあねぇ?……みーのりん! そっちの雑魚達こっちに投げられるぅ?」
「へ? 投げるって?」
いったい何を、とエミの方に振り向けば。ホームランを打てと言う感じにスイングしていたのだった。
素人の穫に無茶を言うなと言いたかったが、金剛刀に戻っている咲夜がぐいっと穫の身体を動かし始めた。
【ふむ。こう、か?】
「ちょ、咲夜!?」
【大神からのご指示だ。私が補助する】
「け……ど、エミさんが危ないよ!?」
【大神が問題なら、そのように言われないが?】
試しに手近にいた渦をスイングで飛ばすと、エミ向かったそれは、エミが持っていたスティックシュガーであっさりと消滅してしまった。
「はぁ〜い? 次々〜〜!!」
神だからか、余裕綽々であった。
「大神〜、俺は投げますかー?」
「うーうん。羅衣鬼は自分でなんとかしなさぁい?」
「御意」
「え、エミさん! まだ続くんですか!?」
「まーだまだ! さわちんが頑張っている時間を短くするためにもぉ、早くはやくぅ!」
「え?」
ちらっと佐和の方を見れば、少し苦しそうな表情でいた。
「くぅ……。さすがは積年の怨みが形状化した化け物! 僕の呪力を相殺しようと必死になっているね!!」
口は動いているが、表情は険しい。
穫のために頑張ってくれていることがよくわかり、穫も咲夜の動きに合わせてどんどんエミに渦をぶつけようとも思ったが。
「……私の友達を」
【穫?】
「穫?」
「みーのりん?」
他の声が遠くに聞こえる。
まるで、咲夜を解放したあの時のように。
穫は己が為すべきことを、身体がわかってるかのように勝手に動き出した。
「友達を……大切な人達を! これ以上困らせるなああああああ!!」
咲夜を渦の溜まり場。佐和が対処していた方に、咲夜を振り下ろして。
光の波が出てきて、それが渦に触れた途端に天井に突き抜けて行くかのように爆音を放った。
消えてしまった後には、どこも破損部分はなく、ただの空っぽのリビングだけになっていた。
「ひゅー!」
「おおお!!」
羅衣鬼がほけっとしてたら、エミと佐和は感心の声を上げたのだった。
「怒りを呪力に変換して、咲夜を扱えたのねぇん? やるじゃない、みのりん!」
「凄いよ、穫! 一気に浄化出来るだなんて!!」
「わ……たし、がですか?」
「そうよん?」
「うん!」
自分が何をしたのか、いまいち把握は出来なかったが。
途端、腰の力が抜けてしまい、咲夜の柄を握ったままマットの上にしゃがみ込んで。
ほっとしてしまったのか、全然力が入らなかったのだ。
「あ、あれ?」
「あ〜?」
「慣れない呪力使ったせいねぇ?」
「穫、疲れた?」
「う……うん。全然力入んない、の」
咲夜を解放した時とは違う。
実家の食堂を手伝っていた時にも、慣れない作業で力が抜けてしまうことはあったのに。
あれ以上に、全然動けなかったのだ。
次回はまた明日〜




