0-3.ゴミの腐海
お待たせ致しましたー
いつか、なにかのドキュメンタリー番組か特集かで見た事はあった。
演出かと思えるような、雑然以上の凄まじさを覚える光景。辛うじて床のフローリングは見えるが、ほとんどがゴミで埋まっている。
部屋に上がろうにもどうすればと思っていると、功が唯一綺麗になっているシューズクローゼットの戸を開けていた。
「ちょー穫ちゃんも手伝って。これ、とりあえず可燃用のゴミ袋」
「え、ゴミ袋……でいいんですか?」
渡されたゴミ袋は、市の指定記入がされてるごく普通のゴミ袋。しかも大容量タイプ。
功は気にせずに穫に何組か渡すと、自分は豪快に床に散らばってるゴミを袋に入れていった。
「あいつの出すゴミは、見てればわかるがムッチャわかりやすいねん。ひとまず全部可燃でええんや」
それと、足場は悪いが自分で確保してくれと告げ、どんどん奥の方に進んでいく。
だが、穫が取り掛かる前にもう一つ言い残していった。
「あ、笑也どこに居るかわからんから、発掘するしかないで」
「は、発掘ですか?」
「これ全部やらかしたの、あいつやしなぁ」
「わ、わかりました」
足場の確保も当然だが、この部屋の主で穫が会いに来た張本人を探し出すためもあったのか。
とりあえず、靴と荷物をシューズクローゼットの近くに置き、ゴミ袋を広げてからひたすら入れていく。
(…………ゴミに埋まってるって、漫画の中だけかと思ってたけど。この量じゃ納得いきそう)
まさしく、腐海の森。
そして、掴むゴミがどれも可燃でいいのが納得いった。種類は豊富であるが、どれもこれもインスタント食品の紙パックやプラスチック。
近年、ゴミ処理の技術が上がったお陰で、プラスチック類も割と可燃ゴミで捨てられる。
地域にもよるが、このマンションを含める住宅街は可能な範囲なのだろう。
功の注意も他になかったので、どんどんどんどん入れては縛り。また新しい袋を開けては縛るを繰り返していると。
レトルトカレーの箱の山を片付けていたら、下から細い腕が見えてきた。
「い、いました!」
事前に聞いてたお陰で、驚いても凄く慌てる事はなかった。
ひとまずゴミの袋を置いて引っ張ってみても、相手は男だからか穫の腕力じゃ腕しか持ち上げられない。
なので、諦めて下敷き状態の達川笑也らしい男性の上からゴミをどかしていく。
全体が見えてきた頃には、穫の声を聞きつけて功もやってきた。
「…………はぁ、相変わらずカレーの箱ん下に居ったわけか」
ゴミ屋敷の主らしい、達川笑也の身体的特徴は細身で背が高めだった。
功も成人男性の中ではそれなりに高いが、達川の方が少し高め。
顔はうつ伏せになったままなので見えないが、癖の強い黒髪が特徴。セミロングくらい長くて下を付け根で適当に結んでいる。
服装はスウェットではなく、黒のワイシャツみたいなのと紺のスラックス。ゴミ屋敷の主の割に、格好はきちんとしていた。
そして、未だ動かない彼を、功は問答無用で襟を掴んで引きずり出した。
「こいつ風呂入れてくるわ。穫ちゃんは、さっき言ってくれた飯作るの頼んだ!」
「は、はい。けど、台所も」
「そこだけはめっちゃ片付けといたから大丈夫!」
続けようとした言葉に被さるように告げてくれたので、台所らしいスペースに行けば見事に片付いていた。
高級マンションらしい、豪華なアイランドキッチン。
コンロはIHかと思ったが、意外にも普通のガスコンロでバーナーの数も五台と充実し過ぎている。
業務用にも近い感じだが、まずは道具を確認せねば。
「うっわ……こう言うのも高そうに見えるよぉ」
調理器具だけはどれもピカピカなので、使っていいのかわからなくなる。しかし、穫の依頼を聞いてもらうためにもご飯は作らなくてはいけない。
なので、玄関に戻って置いたままの荷物を取りに行く。
次回は30分後