3-4.天津チャーハン②
お待たせ致しましたー
出来上がった、天津チャーハンセットのトレーの前にそれぞれ座り。
咲夜にもいただきますを教えてから食べることになった。
「すっごぉい、とろみ加減!! みのりん、インスタントで作ったのん?」
まずはあんかけの部分を食べてくれたのか、エミは輝かんばかりの笑顔になっていた。
「そうですね。市販の調味料……粉末状の中華出汁にお醤油と胡椒で味付けした水を。沸騰させてから、水溶き片栗粉で仕上げたんです」
「濃いめの感じがいいわあ。こっちの……関東の天津飯とか、あたしちょっと苦手なの」
「? 大御神が苦手で……?」
「そうよん、咲夜。ケチャップって赤い調味料ドバドバで、ちょっと甘酸っぱいあの感じが嫌なの。巧の実家方面のこう言うのが、あたし好み!」
「巧さん……は関西方面の方ですよね?」
「そ、そー。あいつと笑也が6つの時からの幼馴染み。だから、ずーっと関西弁なのよ」
つまりは二十年以上の付き合い。
そこまで長く続く関係も凄いと思う。今の管理人と住居者の関係も不思議だったが、幼馴染みなら納得がいく。
穫もいなくはないが、自分の霊視能力を理解してくれている友達は少ない。
極々限られているし、離れていった方が大多数だ。今は別のところの大学に行っているし、年に数回しか会えない。
今回の引っ越しのことも、完全に穫の家の問題だから知らせるつもりはない。いきなり、こんな高級マンションに事情を持ち込んでしまったのだから、巻き込みたくないのだ。
「! 米とあのとろみが合う!!」
ちょっと考えてたら、咲夜が天津チャーハンを食べ始めていた。
「ほんと。とろとろのあんかけと卵のふんわり加減。そこに濃いめだけど冷凍チャーハンのコラボレーション!! 美味しい……一杯じゃ足りないわ!!」
美人のフードファイトを初めて見るが、エミだからかちっともお行儀悪く見えない。がっついているのに、ちっとも不快に感じないのだ。
対する咲夜は、リスとかハムスターのように口いっぱいに入れながらもごもごと食べていた。
「……おかわり、作りましょうか?」
「是非お願い!」
「私も手伝う!」
「はーい」
と、穫も自分の分を食べ終えてから、二人に二杯目を作ったのだが。結局、エミは都合四杯も胃袋に収めてしまったのだ。
「満腹満腹〜!」
あれだけ食べたのに、エミの腹は全然膨らんでいない。
「あの……笑也さんの身体なのに、笑也さん全然太ってないですよね?」
「ま、ね? 食った分のほとんどはあたしの稼働力に回しているし」
「稼働力?」
「笑也が言ってたでしょ? レトルトとかインスタントの方が、今時の神達にも好まれてるって。あたしの場合、めちゃくちゃ食べないと降霊術の持続が出来ないのよ」
効率悪いけど、と穫が作ったインスタントでのアイスミルクティーをがぶ飲みするのだった。
「じゃあ……あの。あのゴミの惨状は」
「あー、あれね? ほんとごめん。いつも食い荒らすくらい食べないと色々維持出来ないし、除霊関係も面倒いのよん」
それだけ、最高クラスの神様を頻繁に降ろすのも大変なのだろう。
穫のような大学生じゃなくて、もっとプロを雇えばいいのに。全部巧とかに任せてきたから、これまで雇わなかったのだろうか。
穫もアイスミルクティーを飲みながら、そんなことを考えた。
「!……来る」
いきなり、咲夜が立ち。すぐに穫の腕を掴んで立たせようとした。
「咲夜?」
「来るわねえ?」
「え?」
「呪怨が来る。穫、私を使って」
「ど、どうすれば!?」
「私が教える」
次の瞬間には、咲夜が金剛刀になって穫の手の中にあり。エミはエミで、いつ用意したのかスティックのインスタントコーヒーを構えていた。
「みのりん、来るわよ!」
そして、また次の瞬間。
窓をすり抜けて、少し動きが鈍くなった大虎のような靄が現れたのだった。
次回はまた明日〜




