33-4.幸せな未来
最終回です
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さらに、三年後。
穫は待っていた。
来るべき相手が来るまで。
身なりを、ウェディングドレスに包んで、待っていた。同じように身なりをタキシードに整えた笑也を。
控え室で静かに。その間緊張しないわけがない。
(……いよいよだわ)
大学を卒業して、まだ一年程度ではあるが。無事にバイト先が就職先となり、アルバイトではなく正社員として本屋に勤務しているのだ。
アルバイトから採用されたとは言え、仕事の大まかな振り分けは変わらない。変わったと言えば、事務作業などについてだ。先輩の社員達に教わりながら頑張っている。
そんな日々が続いて、約一年。
笑也に改めてプロポーズされたので、穫は受けた。
そして今日、穫は笑也もとい、達川家に嫁ぐのだ。住まいなどは変わらないが、部屋はあのマンションもそのまま。笑也が仕事用とプライベート用ふたつ借りることで契約更新をしたわけである。
咲夜達も一緒ではあるが、羅衣鬼も姿を子供ではなく大学生くらいにまで変身出来るようになったら、本屋でバイトしてくれる事になった。男手が多いことに越したことはないので、有難い働き手だ。
咲夜は、穫と同じように正社員になるかと思ったが、融通の効くバイトがいいともう二年程度はアルバイトのままらしい。
とは言え、一緒に働けるのが嬉しくないわけがない。
(佐和ちゃんと巧さんももうすぐだし……)
今年中ではないが、彼らも婚約したので近いうちに結婚するだろう。その時は盛大にお祝いするつもりではある。
「……お待たせ」
考え込んでいたら、笑也がやってきた。
グレーのタキシードが、試着の時も思ったが良く似合っていて。髪も綺麗に整えられているから尚更イケメン度がマシマシだ。ここが式場でなければ、鼻血を噴いてしまっていただろう。
そんなことが出来ないので、手袋を汚さない程度に口に手を当てた。
「……ん?」
「とっても……似合っています」
「穫もね?」
去年くらいから、笑也は穫を呼び捨てにするようになった。逆に穫は相変わらずでいるが。
スタッフさん達が後ろにいるので、抱きつくことも出来ない。だからか、笑也はティアラの後ろを軽く撫でてくれた。
「では、新郎新婦様。式場にご案内致します」
「「はい」」
四年前の、あの夏の日には。
依頼した相手である笑也と結ばれるだなんて、これっぽっちも思わないでいたが。
今までにない選択。最上に選択が出来た穫は、彼の手を離すことはしない。
インスタントが好きな神様を降ろすことの出来る、男性のイタコ。その笑也を手伝える事を妻としても役割を担いたいのだから。
連載にお付き合いいただきありがとうございました
次回からは新連載と拙作『ピッツァに嘘はない!』の再開です〜




