30-1.尾との対決
お待たせ致しましたー
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羅衣鬼が上空から、逃げたくなるくらいの雷の術を八岐大蛇に浴びせていった。
地面のような場所があるようでない空間だが、穫は咲夜の柄を握りながら、エミや須佐が何か攻撃を放っている場所とは違う箇所へと向かう。
民俗学の講義で、聞いた神話。
咲夜から聞いた、八岐大蛇の退治された逸話を穫も思い出したのだ。教授から、レポートにすると面白いからとつい最近出されたテーマ。
色々あり過ぎて、期日はまだ大丈夫なので放置していたが。まさか、自分が実体験すると思わなかった。
「咲夜! 蛇の尾のとこに向かえばいい!?」
【ああ。表側は大神らがなんとかしてくださっている。となれば、背後は我らが請け負わなければ】
「うん!」
自分と約束をしたかもしれないと言う、八岐大蛇と言えど。
神にとっても、人間にとっても害悪でしかない存在となれば。
少し、心が痛む箇所はないとは言い切れないが。平穏な生活を送るためにも、これは倒さなくてはいけない。
(……早く……早く!!)
エミや笑也達と現実世界に戻るためにも、ここでの戦闘は避けられない。
呪怨も関わっていたらしいが、それは咲夜達が倒してくれたそうだが。とにかく、穫は咲夜の力を借りながら走った。
走って、走って。
とにかく走って、尾っぽの部分へと向かうために跳んだりしながら走った。咲夜の力がなければ、そのような軽業は出来なかった。呪怨との戦いがなければ、咲夜の宿主としてそこまで出来なかったが。
【穫!! 前を見ろ!!】
咲夜が叫んだ。
八岐大蛇の尾の部分が見えてきたのだ。毒々しい色合いの、爬虫類のような尾。
苦手、と言えば苦手ではあるが好き好んで触りたいとは思えない、紫と黒の色合いだが、好き嫌いを言っている場合ではない。
穫は多方面の攻撃を受けまくって、無防備な八岐大蛇の尾の先端手前で止まり、咲夜を構え直した。
「咲夜! どこを切ればいいの!?」
【力加減は私が支えてやる!! 尾の先を切り離すんだ!!】
「わかった!!」
呪怨の時とは違い、ほとんど実体かもしれない。
料理以外で、肉を切るだなんて穫には未経験だがやるしかないのだ。
穫は尾の真正面に到着した時には少し息切れていた。笑也達とは違い、穫は生身の状態で連れて来られたのだ。滞在時間がどーのこーの言われるはずなのに、咲夜を宿しているお陰か大丈夫なようだ。
そのように、選ばれた人材となっているのなら。
その力を使わないわけにはいかない。穫は咲夜の柄をしっかりと握ってから、勢いよく振り下ろした。
次回はまた明日〜




