28-2.地獄に(笑也視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(笑也視点)
現状、穫が無事かどうかはわからない。
笑也はエミに施された離魂の術で、魂の状態になってから地獄へと向かっている。
死ぬまであの世に行くことはない。そう思われるだろうが。笑也は初めてではないのだ。これまで、イタコの仕事をしていて、場合によってはエミに連れて来てもらい依頼人の解決の糸口になるものを調査した。
概ね、そのような依頼は解決出来たが、今回は違う。
愛する穫を奪還するため、身体は斎に預けて万乗の屋敷から飛んだが。幽世の入り口を越えても、穫もだが八岐大蛇の気配を探れないでいた。
地獄にいるのは確実なのに、いったい何処へ。
「むっき〜〜!? 見つかんない〜〜!?」
笑也に次に穫捜索に尽力をつくしているエミは、白装束が肌けそうになるくらい髪を振り回していた。気に入っている人間である穫をまた勝手に連れて行かれたのだから、神が怒って当然だろう。
「……たしかに」
「気配を巡らせてみても、一向に引っ掛かりません」
弟神である須佐や月詠も捜索に力を入れている。特に月詠は、尾に力を与えてしまったので若干やつれ気味に頑張っていた。彼がやつれるなどと神に表現してもいいかわからないが。
「〜〜〜〜!? ったく、みのりんを肉体ごと今度は連れて行くって何様よ!? 本体にまだ到達してるかしてないかくらいは、月詠わかる!?」
「と、到達……………………は、してないようですね?」
「マジ!?」
笑也も驚いた。
とうに、八岐大蛇の本体ごと取り込んでいるのかと思っていたが、穫を優先して後回しにしているのか。だが、逆に後回しにする程、穫を優先させたことに笑也は腸が煮えくりかえそうだった。
穫とはまだ体を繋げてはいないが、穫は笑也のものだ。未来永劫、彼女だけを愛すると決めたのだから、化け物に連れて行かれたとていい気がしないわけがない。
「穫を連れて行くのが、己が伴侶にするためか十束自体の主だからか。明確な理由は判明していませんが、先に本体に行きましょう。閻魔大王には許可を出して、あれを破壊する方がいいでしょうし」
「賛成〜!」
「応」
それで穫が尾から解放されるかはわからないが、何もしないよりはいいだろう。
焦りは募るばかりだが、無造作に地獄を探索するよりは全然いいはず。笑也は自分にそう言い聞かせてからエミに、久しぶりに魂の状態での降霊をしようと提案した。
「我が身に降ろせ、高天ヶ原の御神。魅入られ、魅入る国津神の御許」
呪文のような、詠唱のように言葉が少しずつ紡がれ、声が高くなっていく。
「我が身に降ろせ、万物の象徴。全てを見通せ、遍く星の声。────さあ、我が身を見よ」
エミと笑也がひとつになり、表面上はエミが顕現している状態。
「いっくわよー!!」
エミは意気込んで、二人の弟神を置いていく勢いで地獄の上空を飛んでいく。笑也はずっとは意識を保てないので、万が一のためにと眠りに沈んでいった。
次回は日曜日〜




