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2-4.インスタントで宴②

お待たせ致しましたー






 *・*・*







 ピザ、油そば風、カレーに焼きそば。他諸々。


 全部が全部、ほぼほぼインスタント食品を調理したもの。サラダはスーパーのバラエティパックだったが、そこにも出来合いの揚げ物がピンクのマヨネーズソースに絡めてあったりと。


 完全に、飲み会開催の準備が整った。



「みのりんはオレンジジュース! ほら、乾杯!!」

『乾杯!』

「か……乾杯?」



 緊迫感が全然かけらもない、ただの学生サークルの飲み会のようで、(みのり)は戸惑っていた。たしか、穫自身ひいては実家の関係である万乗(ばんじょう)の呪いとも呼ばれる大悪霊をどうにかする作戦会議に。


 雇い主となった、イタコ(?)の達川(たちかわ)笑也(えみや)が降霊術をして降ろしたエミこと天照大神(あまてらすおおみかみ)。彼女が主催して、兄弟神である素戔嗚尊(すさのおのみこと)月読命(つくよみのみこと)をこの場に降ろした。


 その二大神を呼んでまで、大悪霊をどうやって穫から追っ払う、ひいては成仏させる作戦会議のはずが。もうとっくに終わったのだと。


 穫が(たくみ)と買い出しに出かけていた時に、もう終わっていたとしたら。


 何を、穫はすればいいのだろうか。祖母は能力が開花しかけているから引き寄せられているとは言っていたのだが。



「おいひー! 温玉載せのチーズカレー!! 超絶美味!!」

「……温泉卵は手製だったな。美味い」

「ええ。ちょうど良い半熟加減ですね? 市販のよりも美味しいです」

「あ……ありがとうございます」



 先にピザではなく、カレーを食べてる三大神は満足気であった。巧が言ったように、須佐(すさ)が一番温玉に食いついてあっという間に空にしてしまった。



「……もっと食いたい」

「少し我慢なさい、須佐。穫にもう少し仔細を伝えねばならないでしょう?」

「……む」



 一番しっかり者なのは、月詠(つくよみ)らしく。こちらも空になったカレーの皿をローテーブルに置くと、穫に顔を向けてきた。女性と見紛うような神秘的な微笑みに、本当に男かと疑いかけた。



「穫、回りくどいことは言いません。心して聞いてくださいますか?」

「は、はい! つ……くよみさん」

「では、告げますよ?」

「は、はい!」



 穫は、飲みかけのオレンジジュースのコップをこぼさないように、テーブルに置いてから向き直った。



「まず第一に。姉上がおっしゃっていた……呪怨の類となった、悪霊。祓うことは、我らの手にかかれば容易ですよ」

「ほ、本当ですか!?」

「はい。ですが、上手い話は早々にありません。この後の言葉を覚悟してください」

「は、はい!」



 穫が覚悟をしなくてはいけない話題。さすがのエミも須佐も、食事の手を止めていたが。



「では、率直に言います。おそらくですが、死人が出ます。ああ、分家であるあなたの家族ではありません。当主の方の本家側ですね?」

「え、なんで!?」

「呪詛返しっと言うのをご存知ですか?」

「……いいえ。全然」



 祖母とは違い、そんな魔法じみたことなど出来ないが。視えるだけの穫でも、恐ろしい感じなのは伺えた。しっかり返答すれば、月詠はゆるく微笑んだのだった。



「返す……と言う言葉通りに、術者に飛び返ってくる術のことです。この場合、引き寄せていた穫にではなくて、術の大元……今の万乗の当主達が対象となります」

「……そんな……! どうにかならないんですか!?」

「なんでよ、みのりん?」

「……エミさん?」



 穫の焦りに、エミはあっけらかんと返答してきただけ。


 神とは言えど、人の命はなんとも思わないのだろうか、と。


 すると、エミは持っていた酒のコップを置いて、穫の鼻をちょんと触ったのだ。



「みのりんのおばあちゃんが、必死こいて守ってきたのを。なんとも思わないどころか、これ幸いにって潰す対象にしてきた連中よ? 昨日あたしが探りを入れたけど、ほんとカスばっか。あんな奴らに情けをかける必要はないわ」

「けど……」



 疎遠になった親戚とは言え、見ず知らずの人間を殺すきっかけになってしまうのに変わりない。


 そんな薄情なこと、穫には出来ない。けれど、今のままでは穫の方の家族にまで危害が加わるかもしれないのだ。


 そうしていると、髪をくしゃくしゃにされた。顔を上げれば、須佐がいつの間にかソファに腰掛けながら穫の頭を撫でていた。



「どっちも嫌なら、なんとかすればいい」

「……須佐、さん?」

「穫の能力を開花させれば、我らの規律には届かない範囲も可能だ。それと……」



 須佐空いてる手で何かを掴んで、こちらもいつのまにかスティックのコーヒーを持ってたエミに向けて投げつけた。



昇華(しょうか)!」



 黒い何かが、インスタントのコーヒーをふりかけられた途端。煙を出しながら消えていってしまった。



「……思ったよりも、呪怨の綻びが早い。穫、選べ」

「選ぶ……って」

「お前が誰にも死んでほしくないのなら。俺がお前の眠っている能力を開花させる。そして、呪怨を祓うのを可能にさせれば、誰も死なない」

「須佐、かっこつけ過ぎ〜! あたしがするぅ!」

「……だったら、早くしてくれ」

「しかし、それでは穫の人生がさらに狂いますよ? 今以上に悪霊達に付け狙われますが」

「だ・か・ら! あたしって言うより、笑也の助手にしちゃえばいいわ。『達川』になら、あいつらも文句言わないもの?」



 と、エミは穫の手を掴み、手のひらを開けさせてから指で星のマークのようなのを描いた。



「え?」



 なぞっただけなのに、そこに赤い五芒星が浮かび上がったのだ。



【……この者の力。眠る力。常闇の力を我の前に示せ。望むはこの者也】



 男女が混じったような声の呪文で、穫の身体が熱くなったのだった。

次回はまた明日〜

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