表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/168

27-2.何も出来ないわけがない(斎視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*((いつき)視点)









 また。


 また、斎は何も役に立てない状況になってしまった。


 せっかく、(みのり)の手助けになることがようやく出来ると思った矢先に。


 笑也(えみや)大神(おおみかみ)らが口にしていたが、古事記などに記載されていたかつての化け物、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の分霊のような存在が穫や咲夜(さくや)を狙っていたらしい。


 力か、彼女自身かまでは聞く余裕はなかった。


 穫は生者のまま、おそらく地獄に連れて行かれたらしい。生きた状態で地獄に行くなど、危険だけで済まない。下手をすれば、亡者となり二度と現世に戻れなくなる。


 笑也とせっかく結ばれたと言うのに、そんな事態になっては良くない。



「……私は何も出来ない」



 今は、笑也がエミ達の力で離魂(りこん)の術を使用して地獄に向かっている。


 同行していた、琴波(ことは)佐和(さわ)と言うアマチュアの陰陽師は斎達と一緒に笑也の肉体を保護している。佐和は離魂の術を扱えるが、エミらの判断で現世にいるように指示されたのだ。



「何も出来ないのは僕も同じですよ」



 斎がため息と同時に出た言葉に、水無(みなし)ではなくその佐和が返事をしてくれた。



「え?」

「呪怨の時はともかく、神話上の化け物に太刀打ち出来る人間なんて限られていますよ。達川(たちかわ)氏は穫のために、自ら志願したんです。術師として弱くとも、大神らの加護が強いからこそ出来ない事もないから」

「……そうね。イタコは降霊が主体。術師の能力だけなら、達川さんは私よりも弱い」



 それは、笑也と話す機会が増えたから知れただけだ。しかし、己が弱くとも恋人の救出のために魂の状態でも助けに行く勇気は、斎には出来なかった。


 仮に、水無が似た状況になっても出来るかどうか。



「……しかし、斎様」



 婚約したが、まだ敬語をなかなか外そうとしない水無は斎の肩に手を置いてくれた。



「達川殿の肉体を守るのも、重要です。穫は肉体ごと連れて行かれてしまいましたが、達川殿の身の安全を守る任務を仰せつかったのならば……我々の出来る事をしましょう」

「水無……」



 彼の言うことも尤もだ。


 何もしないわけではない。笑也の肉体を無事にしておかなくてはいけない。


 だから斎は。椅子から立ち上がって、絨毯の上で横になっている笑也の肉体の前に立つ。そして、両手を使って印を組んだ。



「……何を?」



 佐和には意味がわからないように見えるだろう。


 斎は、一度頷いてから組んでいる印を変えた。



「私の出来得る限りの強力な結界を……屋敷と達川さんに施します」



 結界師を束ねる長として。


 幼い頃から、英才教育並みに鍛錬してきた成果を、ここで出さないわけにはいかないのだ。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ