26-1.取り込む(???視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(???視点)
掴んだ。
呪怨だった、忌々しい存在をこの手に。我が手に。
虎に似た黒い瘴気の塊を、八岐大蛇の尾は手を伸ばして首根っこを掴み。少しずつ少しずつ、尾の中に取り込んでいく。
穫を消滅させようとした愚か者。
ならば、この尾の力の糧となればいい。
そのために、尾はこの阿鼻の地獄へと来たのだから。
魂の形のまま、奴の背に乗り。少しずつ、少しずつ尾の方に取り込んでいく。
耳にしたくない、嫌な大声が響くが今更なので気にしない。
ゆっくりゆっくりと、呪怨だった瘴気の塊が尾の中に取り込まれていく。穫を傷つけてきた愚か者ではあったが、尾の役に立つのであればその部分は目を瞑る。
穫を我が手にするのは、この八岐大蛇だ。
彼女の幼き時に、約束をしたこちらが先だ。
あの達川の人間に囲われるなどと、許せない。
(取り込め……取り込め、この内に)
そして、復活するのだ。
この世に、この時代に、八岐大蛇が。
あと少しで、呪怨の全てを取り込めそうだと思った時。
光の矢が飛んできたので、尾は呪怨だったものから離れて避けた。避けた先にいた別の亡者が消滅したが、それはどうでもいい。
『あーあ? もう見つかっちゃったか?』
忌々しい、天津神らか。
こちらの復活まであと少しだと言うのに、勘の良い連中でしかない。
だが、あと少しだったので、尾は食事のように呪怨だった塊を口のように魂を割って取り込んだ。
「く……ふふふ。あはははは!?」
弱まっていた力が、力が。
溢れていく、満ち溢れていく。
魂に浸透していく感覚が心地よく、尾は歓喜に震えてしまう。
黒炎に包まれた、炎の渦の中で尾の形態がまた整う。
感覚としては人型に整ったが、もう二度と裂けるような真似をするわけにはいかない。
いくら八岐大蛇でも、穫を妻として迎えに行くのだからきちんとした身なりでいなくては。
とりあえず、あの神らからは懐かしい気配を感じたが、倒さなくては。穫を迎えにはいけない。
「くふふ……行くか?」
尾は炎を蹴るかのように、空を蹴って飛んだ。
次回は水曜日〜




