23-5.エミの家族(エミ視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(エミ視点)
幸せ続き。
そう思う、天照大神ことエミである。
笑也の部屋で、あの呪怨事件がきっかけとなって結ばれた万乗の当主とその影達がいたが。
隣の穫の部屋で、巧と佐和もめでたく結ばれた。
一応、日の本の最高神として縁繋ぎの神とも言われてはいるが。
こうも身近な存在が幸せ続きだと、エミとて少ししんみりとしてしまう。
【あたしは……いないから】
伊弉諾により、生み出された神だけだ。
須佐や月詠も同じく。母神の腹から産まれたわけではない。
息子や娘達も、須佐とかつて誓約を結んで生んだだけだ。エミの腹から生まれたわけではない。
だから、少しだけ無い物ねだりをしたい気分だったのだ。
達川の人間達と制約を結んで、何百年も経ったが縁結びの力で与えていくだけ。
エミがエミと呼称を得たのは、次期当主である笑也からだが、人間らしい感情を得たのはいつぶりだろうか。
人間とは違って、同族婚が許される神とて、今更須佐と結ばれるようなことなど考えられない。彼には既に妻がいるからだ。月詠は腹黒だから論外だ。
【姉上? 珍しいですね?】
【……月詠】
弟達の事を考えていたら、片割れがやってきた。
やってきた理由は、おそらく八岐大蛇の尾の件だろうが。
【物思いに耽っていらっしゃったんですか?】
【たまにはね〜? 見てきた人間の子供達がどんどん成長すんのよ? 見てて甘酸っぱく思ったわけ〜?】
月詠には、子がいない。
一応男神の形態をとっているが、実は女でも男でもないのだ。本人も、楽だからと男の状態でいるだけ。
見た目は、女神とも言えそうな美女風ではあるけれど。
【……なるほど。では、穫や笑也だけでなく他にも?】
【巧よん。佐和ちんとめでたく結ばれちゃったわけー】
【喜ばしいことじゃないですか。……この時勢で羨ましくなったんですね?】
【あんたにはバレバレねー?】
【一応弟ですから】
それと、と告げてくると月詠は笑顔を引っ込めて真面目な表情になった。
【閻魔大王からの知らせにありました。例の尾の魂が、微かに地獄で反応があったと。……本体には補佐官らの一部を警護にしてはいるようです】
報告は、ある意味最悪で、ある意味納得が行くものだった。
ならば、エミは今羨ましいなどと思っている場合ではない。
【……行くわよ、また地獄に】
【須佐は先に向かっています】
【いい判断ね?】
なんだかんだで、出来る身内のことがエミにとって誇らしかった。
次回は金曜日〜




