23-3.久しぶりの来訪
お待たせ致しましたー
斎の後ろには、水無もいた。
呪怨の事件の時は、黒ずくめで顔がほとんど見えていなかったけれど。終息してから一度会った時も思ったが、なかなかの男前である。
穫はもちろん笑也一筋であるが、男性の美醜を正当に評価するくらい良いだろう。
とりあえず、笑也の部屋に入ってきた二人に、穫は人数分のコーヒーをドリップで淹れることにした。斎達には既に確認済みである。
それと、土産にと渡された菓子は有名店のマカロンだった。
「へー? 式は来年の春に?」
「ええ。達川さん達も是非」
「次期当主と言うより友人としてなら是非」
「はい」
何やら、楽しそうな話題になっていた。
コーヒーのカップを持っていくと、今日も麗しい美貌の斎はにっこりと微笑んでくれた。
「なんのお話ですか?」
「斎さんと水無さんの式の日程が決まったんだってさ?」
「式? あ、結婚式ですか!?」
「そうなのよ。万乗の反対派には、色々対策を施したのだけれど……無事に結婚出来そうなの」
「わあ!」
少し不穏なワードが聴こえた気がしたが、そこは敢えてスルーしようと思った。
水無を見ると、穫が淹れたコーヒーを静かに飲んでくれていた。言葉数が少ないイメージを持っていたが、イメージ通りの男性なのだろうか。
「今、穫ちゃんの部屋でもちょっと面白い事が起きてるんだけど」
「あら、何かしら?」
「僕の家と縁がある六条の人間がいるのは覚えているかな?」
「ええ。こちらに最初に来させていただいた時にコンシェルジュとして働いていた?」
「彼が、ちょっと……ね? 琴波の家の女の子と少し」
「あら。あの勇猛果敢に、対処してくださった若いお嬢さんと?」
「…………交際するのですか?」
「まだ決定とは言えないけど」
水無が静かに口を開けた時、耳に心地よい低音が響いた。これをいつも聞いている斎が凄いと思えるくらいに。
「佐和ちゃんには、きちんと幸せになってほしいんです」
穫も割り込むと、笑也や斎には頷かれた。
「女の子の幸せは大事だもの。ましてや、意中の男性となら尚更だわ」
「斎さんもお幸せそうに見えますよ?」
「……ありがとう。穫さんも、達川さんとね?」
「そりゃもちろん」
「はい」
まだまだ穫は学生なので、結婚は遠い未来ではあるが。
その相手が笑也であれば、どれだけ嬉しいことか。
八岐大蛇と言う不穏の種はあれど、今は忘れていたい。
エミには少し警戒しておくように言われてはいるが。一緒に出したマカロンを手に取ろうとすると、頭に重みを感じた。
【あら、美味しそうじゃない?】
少しエミの事を考えていたら、そのエミがまた穫の頭にのっかってきた。
すると、斎と水無が佇まいを正したのだ。
「大神!」
「先日は誠にありがとうございました!」
【なーによ? 普通でいいわよん?】
「「い、いえ!?」」
忘れそうになるが、エミは天を司る日本の神の頂点だ。
けれど、普段のキャピキャピ具合から、どうもその事を忘れがちになってしまう。
「エミ、僕らは僕らだけど。仮にも大神なんだから」
【あんたらはあんたらだもの?】
「あのねえ?」
けれど、マカロンを二個ほど食べてからすぐにどこかに行ってしまった。何をしたかったのかよくわからないと言うのは、文字通り神出鬼没である。
次回は土曜日〜




