21-4.達川家に②
お待たせ致しましたー
*・*・*
車から降りてからも、穫はバカみたいに達川邸を見上げてしまう。
たしかに、笑也の言っていた通り二階建てではあったが、広さがちょっとだけではない。何坪とかまではわからないが、穫の実家以上、いやその何倍以上も広かった。
「ようこそ、僕の実家へ」
笑也が笑いを堪えながら言うものだから、穫は我に返って彼の腕をぽかぽかと叩いた。
「どこが!? ちょっと、なんですか!!?」
「んー? 郊外だし、そこまで大きくないよ」
「十分過ぎるくらい、大きいです!!」
「はは。とりあえず、入って?」
「……うう」
そして、手を引かれて玄関の前の門に立たされると、いよいよ緊張感がMAXになりそうだった。笑也よりももっと高い門の柱に、申し訳程度に取り付けられていたインターフォンに笑也はすぐに押すと。
「あ、笑也です。今帰宅しました」
『お待ちしておりましたよ、坊ちゃん。奥様は玄関にいらっしゃいますよ?』
「うん、ありがとうイネさん」
対応してくれたのは、さっき言っていた使用人らしく、しかも笑也のことを『坊ちゃん』と呼んでいた。笑也は二十六歳なのに、この家ではまだ子供扱いなのだろうか。仕組みがよくわからないが、穫は笑うのを堪えた。
だが、笑也に気づかれたので軽く小突かれてしまう。
「ごめんなさい」
「ま。僕はまだここの当主じゃないからね? 母さんの息子と、次期当主って立場だけだし」
「けど、坊っちゃんなんですね?」
「あんまり、からかわないで。この家くらいしかそう呼ばれていないんだし」
「ふふ」
少しくすぐったく感じて、いくらじゃ緊張がほぐれていく。
門のオートロックのようなものが解除された音が響くと、笑也は金属で出来た門を開いて先に穫から入るように促した。
中に入ると、これまた凄い景観が目に飛び込んできた。
「……うわぁ」
季節は秋を迎えたのと。
ここは山あいだからか、木々が多いのは当然。だが、街ではまだまだ紅葉前なのに、ここは少しだけ木の葉が色づいているように見えた。
けれど、自然の色合いが美しく、庭にある他の木々もきちんと整えられている。素直に、美しい庭だと思えるくらいに。
「綺麗でしょ? 庭師の業者さんが定期的に手入れしてもらっているからね?」
「あ、専属の人がいるわけじゃないんですね?」
「大昔にはいたらしいけど、この家が出来てからはたまに頼む程度らしいよ?」
さ、こっち。と、笑也に手を引かれて玄関に向かうと。
彼がためらわずに引き戸を開ければ、式台には正座で待ってくれていた着物の女性がいたのだ。
「お帰りなさい、笑也」
綺麗な、女性だった。
少しだけ目尻に皺があるが他は艶々とした肌に、髪も黒くて丁寧に整えられていた。笑也より少し年上にしか見えない女性ではあるが、笑也を呼び捨てしたのと使用人の言葉が正しければ。
「うん。ただいま、母さん」
「ほんと。たまには顔くらい見せなさい?……そちらの方が?」
「うん、この子が連絡した子だよ」
「ば、万乗穫と言います! はじめまして!!」
「ふふ。写真で見るよりも可愛らしいお嬢さんだこと。……初めまして、笑也の母です。珠緒と言います」
「は、はい!」
予想通りに、笑也の母ではあったが。若作りしているのではと思うくらいに、若々しい。
穫がカチコチになりながらお辞儀をしても、軽く笑うだけだった。
「笑也達が来たって?」
そうして、奥から男性の声が聞こえてきたのでそちらを見ると。
ロマンスグレーに近い髪型の、着物の男性が来たのだが。顔が笑也と瓜二つだったのだ。
次回は水曜日〜




