19-5.目が覚めた(佐和視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(佐和視点)
目が、やっと覚めた。
どれだけ寝ていたのか、佐和は覚えていないが。体がギシギシ言うので、きっと半日以上は寝ていたかもしれない。
起き上がってみると、着ていた着物はいつ着替えさせられたのか少々ぶかぶかの男物の服を着せられていた。
これは、と思っても誰のか見当も付かず。
無事に帰って来た穫だったら自分のを着せるだろうから、誰か別か。
だとしたら、エミだろうか。神に着せ替えさせただなんて畏れ多いが、短い付き合いでも友人のような間柄になったのだから気にし過ぎてもいけない。
だが。
「……ここは、穫の部屋じゃないね?」
最上階のバーラウンジで、穫を助けるために久しぶりに離魂の術を使ってエミと向かったが。
なんとか間に合って、魂は引き戻せたが。術の反動で佐和は眠りについてしまった。そこはだんだんと思い出せたが、ここは誰の部屋だろうか。
穫や笑也の部屋ではないのは分かっている。部屋の雰囲気がどことなく、和風モダンと言う感じだからだ。シンプル派な二人の部屋とは全然違う。
「お? 起きたか?」
佐和がキョロキョロしてたら、部屋の扉が開いて。入ってきたのは、スーツ姿の巧だった。その服装から察するにコンシェルジュの仕事途中からやってきたのか。
「巧氏……僕は」
「離魂の術つこて、エミと穫ちゃん連れ帰ってくれたんやろ? その反動で寝こけてただけや。服は悪いけど、俺が適当に着替えさせたわ」
「あ……ども」
羞恥心がないわけではないが、知人となった年上の男性に着替えさせられたのは少々くすぐったかった。琴波の家は男が多いので、普段の和装を除けば幼い頃は似たような服装でいた。だから、他人とはいえ、信用している相手の厚意を無碍にはしない。
「穫ちゃんは笑也とちょいデートや。今日くらいは好きに過ごしてもらいたいしな?」
「……元気ならよかった」
「せやな? 君もやで? 俺が出来ればよかったのを、若い子に任せんのも正直言うと反対やった」
「……未熟者だから?」
「ちゃうわ。命の危険と紙一重の術なんや、出来れば使わせたくない」
「……ふふ」
彼も一応術師なのに、考え方が一般人寄りだ。それが嬉しくもくすぐったく感じた。
とりあえず、佐和の荷物はこの家に運んであるらしいので、着てきた着物ではなく簡易浴衣に着替えることになり。
ご飯は、巧もまだだったので一緒に食べることになった。
昨夜は重いジャンクフードばっかりだったからか、あっさりとした卵雑炊と味噌汁。
笑也と違って、インスタント食品ではなく手製だそうだ。
味噌汁はわかめと豆腐で、濃過ぎず優しい味わい。雑炊も食べやすい味付けで、胃に染み渡るようだ。たったそれだけの食事でも、佐和はぱくぱくと食べてしまい、思わずおかわりしてしまうほど。
「若い子はぎょーさん食った方がいいで?」
その人懐っこい笑顔に、一瞬心臓が止まりかけたが。
以前、穫に指摘された想いと言うものは一過性だと佐和は確信していた。
なのに、何故。
知り合って、まだ一年も経っていないこの年上の青年に。
ほんわかと、心が温かくなるのだろうか。
次回は日曜日〜




