19-4.久しぶりの海
お待たせ致しましたー
*・*・*
海。
海、海、海。
今穫は、笑也の車で移動して海に到着したのだ。
秋に入ったばかりだが、この辺りは気候が温暖だからか海水浴はない代わりにサーフィンをしている男性がちらほらと見えた。
だが太陽に照らされて、海がキラキラと輝く様を見るだけでも充分楽しい。
穫は笑也と手を繋ぎながら、波打ち際をゆっくり歩くことにした。
「海だなんて、ちっちゃい頃以来です」
「そうなの?」
「あの……呪怨のこともあったんで、海には行くなっておばあちゃんには言われてたんです。それに、変なのが集まってきて溺れそうにも」
「……そう」
笑也にぎゅっと、指を絡めた手を握り返されたので穫も同じようにした。
そう、あの頃は。
視えることが怖くて、追いかけて追いかけてきたわけのわからないモノ達から逃げるのに必死で。
祖母からは大層叱られたが、それ以降海には行かずに市民プールなどで泳ぐのは我慢したのだ。
同級生達が海の素晴らしさに、はしゃぐように話していても。
穫には、共感出来なかった。
寂しかったが、仕方がなかったのだ。
けれど、今は笑也もいるが、咲夜や羅衣鬼もいる。泳ぐのは無理でも、海をこんな風に楽しめるのが嬉しくて。
だからこそ、今はそれが解決出来て、また来れるだなんて思わなかったから。素直に、嬉しかった。
「でも、今は皆さんが……笑也さんがいてくれるお陰で、どこにでも行けます!!」
「……うん。いっぱいいっぱい、いろんなとこに行こう?」
「はい!」
八岐大蛇のこともあるが、今は今を楽しみたい。
束の間の幸せでも、穫は笑也との時間を楽しみたかった。
「あ、穫ちゃん。じゃあさ?」
笑也が立ち止まったかと思えば、砂浜から何かを拾う。そして、穫の空いてる手の上に載せてきた。
「こう言う貝殻集めもしてない?」
「! はい!」
「僕が女の子の格好してた時は、泳げなかったから巧とかとよく拾ってたんだ」
笑也が見つけたのは、小さな桜色の貝殻。
壊しそうだったが、大切にしようとスカートのポケットに入れておくことにした。
それからは、二人で耳に当てると波の音のような声が聞こえるらしい、少し大きめの貝殻を探すことになった。
次回は木曜日〜




