アンヌの三番目の物語
禿頭にプロ野球のジャンパー、首からはカメラを提げ
腕には高級かつ悪趣味な金とダイアの時計
ヒステリックで痩せこけた首筋を露わにして
ライターでシガレットに火を灯す
そして夫婦でサングラスを光らせる。
観光客のお恵みの銅貨なんて!
彼ら世界中に慈善と言う名のチューインガムを吐き散らすんだわ。
解読不能の道標が林のように立ち並ぶ交差点を渡るときに
もともと大きすぎたママンの靴が脱げた。
舶来の豪華な戦車が砲塔と機銃を振り回しながら
おごそかに、確実に轢きつぶして行きました。
Jingle bells, jingle bells,
Jingle all the way.
Oh! what fun it is to ride
In a one-horse open sleigh.
砲塔のハッチから突き出しているのは聖ニコラウス。
真紅の帽子に白いボンボンが踊っている。
なんて祝福された街なのだろう
なんて惨めなわたしなのだろ
聖ニコラウスのお恵みにわたしが預かったことはない。
全くメリー・クリスマス!
舗道に音を轟かせ寒さは街を流れ
裸足に痺れるような氷の刃をのぞかせて
わたしはマフラーを握りしめた。