第4話
ミリおばさんの話で私の心は沈んだ。
リオン君の婚約を知った彼女はその日から、リオン君に大胆なドレスを着て迫った。
でも私がいるからと、なびかない彼だったのだけど…高いレストランでの食事。
料理に使う高い食材にプレゼント。
それに彼女の大胆だドレス、大きな胸、大人びたプロポーション…リオン君は徐々に心を掴まれ惹かれた。
リオン君の誕生日の日。
両親と用事があると私に嘘をつき、彼女と高級レストランでデートを楽しみ、その夜は彼女と過ごした。
それを彼女の両親に見つかり「責任を取れ」娘の婿にならなければパン屋を潰すと、まで言われたらしい。
セジールお嬢様の経済力と豊満な胸に負けた。
どうせ…私の胸は小さいよ。
それでもいいって「ティーが1番、可愛い」って言ってくれたのに…リオン君のバカ。
セジールお嬢様は私には出来ない事を、彼にしてあげれるんだ…彼もそれを望んだ。
「そっか…ははっ、そうなんだ。わかりました結婚の話はこれで終わりにします。お帰りください、それと今日でパン屋を辞めます。ヤナおじさんにも伝えてください。いままでありがとうございました」
ミリおばさんに頭を下げた。
そんな私を見て名を呼び、手を伸ばしてきたけど、私はその手を拒んだ。
「ごめんなさい、ミリおばさん。触らないでください」
「…ティーちゃん」
「さようならミリおばさん。外が暗くなってきたので、気を付けてお帰りください」
ミリおばさんはそれ以上何も言わず、私に何度も頭を下げながらなが帰って行った。
間も無くして家の前に馬車が止まった。
あの黒い馬車はセジールお嬢様の馬車だ。
自慢していたもの…彼女は足早に私の家に来ると、目を腫らした私を見て、見下し鼻で笑った。
「リオンは私と結婚をするから、ティーラ。はい、手切れ金」
玄関に投げられたお金と招待状。
「ふん、結婚式には呼んであげるから、来てよね」
勝ち誇った顔で言うと、来た馬車に乗り帰っていった。
私は彼女が置いていったお金を拾った。
静かな家の中には手切れ金を持ち、立ち尽くす私。
なんて、誕生日なの。
なんて、酷い18歳の誕生日を迎えた。
「あなた達のおかげで、忘れない誕生日になっちゃったじゃない」
その2日後にリオン君とセジールお嬢様の結婚式は盛大に行われた。
嬉しそうに笑うセジールお嬢様と、側には幸せそうに笑うリオン君。
真っ白なウェディングドレスと真っ白なタキシード着た2人。隣には大きな声で笑うセジールお嬢様の両親。
リオン君の両親がいた。
本当にセジールお嬢様を、好きになったんだね。
リオン君の隣にはもう、いれないんだね。
「ティー、来てくれたの」
パティー会場で私を見つけると、いつも呼ばない名前を呼び、駆け寄ってくるセジールお嬢様。
「おめでとうございます。セジールお嬢様」
「ありがとう…ほら、リオンも来なさいよ」
セジールお嬢様に強引に、腕を引っ張られて連れてこられ、バツが悪いのだろう、相変わらず私と目を合わせないリオン君。
「ごめんね…ティー。彼を奪っちゃって」
「いいえ、セジールお嬢様。リオン君の事を幸せにしてあげてください」
私がそう言うと、彼女は笑った。
「当たり前じゃない。リオンは私と一緒の方が幸せなのよ」
「ティー…俺は…」
「なにも言わなくていいよ。リオン君、お幸せに……」
私は2人を見て微笑むと、頭を下げ家へと帰った。
家に帰って白いワンピースを見ると涙が溢れた。
泣いて泣き疲れて、眠って、目が覚めるとまた泣いた。
もう、ここにいるのが辛い。
2人を見るのが辛い。
そうだお金もあるし、私は何処かに行ってしまおう。
2人が結婚式をあげた翌日。
貰ったお金と結婚をするために、貯めていたお金を持った。彼から貰った指輪を見える位置に置き。
「お父さんお母さん、ごめんなさい。何も持たずに全部ここに置いて行くね。さようなら…もう帰らない」
早朝、誰もいない村の入り口をくぐり抜け、私は村を出て行った。
両親もいない彼もいなくなった、私には何も残ってはいない…
結婚式に着ようと用意していた、白いワンピースと、小さな肩掛けカバンだけを持って村を後にした。