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第10話

「朝食のお礼に、せめてお皿を洗わせてください、旦那様」


「だっ、旦那様だって!?それは辞めてくれティーさん!」


 レオさんを旦那様と呼ぶと、嫌だったみたいで、彼の尻尾がぶんぶんと揺れて、困った顔をされた。

 俺はレオ!だと言われて、レオさんと呼ぶように言われた。


 朝食に使ったお皿は一緒に洗う事になり、レオさんと並んでキッチンに立った。


「ティーさん、この石鹸をこの布に擦り取って、お皿を洗ってね」


 石鹸?灰や砂でお皿は洗わないんだ。


「はい、この布に擦り取るんですね…あやっ、この石鹸って凄い、汚れが良く落ちるわ」


「そう?ティーさんの所では使わないの?」


 私は頷いた、こんなに高級な物なんて、村にはない。


「そうだティーさん、後片付けが終わったら、俺の寝室に行こう」

「はい、わかりました」


 石鹸の泡も立ち、お皿洗いが楽で、夢中になって洗った。

 そんなに石鹸に驚く、私が珍しかったのか、レオさんは終始私を見て笑っていた。


 洗ったお皿を拭いて食器棚に戻し、次はレオさんの寝室に向かいながら、レオさんに一言言った。


「レオさんはお皿洗いの途中、ずっと私を見て、笑い過ぎです」

「だってさ、ティーさんがお皿を洗うたびに、おおっとか、ほほっとか、変な声を出すから面白くてさ」


 へっ、変な声!?


「レオさん酷い…今日はお皿洗いが楽しかったの、一人じゃなくて、レオさんが隣にいたから」


 えへへっ、とレオさんを見上げて笑うと、レオさんは驚きの顔をした後に、私から目を逸らした。


「そっ、そう、今日からはいつも、俺と一緒だから…」


 あっ、レオさんの言う通りだ…。


「そっか、私は今日から一人じゃないんだ、私を雇ってくれて、ありがとうレオさん」


「うん。ティーさんにはしっかりと、働いて貰うからね」 

 

「はい、頑張ります!」


 その為に服がいるねと、レオさんは寝室の扉を開け、中に入ると、今度はクローゼットの扉を開けた。


「明日の帰りに、ティーさんの服やいる物を買って来るまで、俺の服で我慢して」


 レオさんが開けたクローゼットの中には、サイズ違いの服が二着ずつ揃っていた。

 作業をするときに着るであろう、つなぎの服もあった。


「あのレオさん。このシャツはサイズを間違えですか?」


 明らかにいまのレオさんでは、着れなさそうな、小さなサイズの服がハンガーに、かかっていた。


 不思議そうにクローゼットの中を、覗く私を見て、レオさんは違うと首を振る。


「いいや、俺はそうか…ティーさんは獣人を見るのが始めてだったね……じゃあ、説明するより見せたほうが早いね」


「見せたほうが早い?」


 うんうんと頷きレオさんは私を「少しの間、悪いけど外で待ってて」と寝室から出した。


 扉を閉め、中でゴソゴソと、音がした。

 レオさんは着替え中?

 しばらくすると、レオさんの寝室の中から、声が聞こえてきた。


「あのさ……俺の姿を見てティーさんを驚かせて、しまうかもしれない」


「私が驚くの?…ですか?」


「うん、だから先に言っておくね、驚かせたら……ごめん」


 部屋の扉が開き中から出て来たのは、サラサラな金髪に琥珀色の目をして、頭に耳、お尻に尻尾の青年!?

 この方は誰でしょう?

 レオさんに似てますが違う方?


「あの、レオさん。こちらの方は誰ですか?レオさん?レオさん?お客様が来たのですか?」


 寝室の中にいるはずの、レオさんに声をかけても、返事が返ってこない。

 初めて会う青年を見て、私はオロオロする。 

 焦り始め冷や汗をかく。

 私のそんな、姿を見た青年は…口に手を当て、大声を上げて笑った。


「ぷっ、くくっ、あはははっ、ティーさんにはわかんないのか…俺だよ、レオだよ」


「レッ、レオさん!?」

「そうだよ」


 ますます混乱して、オロオロ…した。


「違う、レオさんは私を騙しているの?だって声まで違うもの」


 レオさんの声は低い声だった。

 この人は少し高い声だもの「はははっ」青年は益々お腹を抱え笑う。


「ティーさんて面白いな。さっきのが獣人の俺で、こっちが半獣の俺なんだよ。人型なんだ、外に出る時とか、ギルドで依頼を受ける時は半獣の姿になるんだよ」

 半獣?


「ギルドのお仕事?…本当に、本当にあなたは、レオさんなのですね」


「そうだよ…ティーさんは驚き方が違うね。怖がったりするかと思ったら、俺じゃないなんて言ったのは、ティーさんが初めてだよ」


 だって、想像をはるかに超えていた。

 でも、レオさんはもふもふさんから、こんなに格好の良い、青年にもなれるんだ。


 これは…。


「ティーさん?」

「レオさんって…女の人にモテそう」


 もう、お相手の方がいるかも…私、お邪魔になってしまう?


「ティーさん…いきなり何を言い出すんだよ。俺はモテない、獣人だからみんなは怖がってしまうよ」


「嘘、性格も優しくて温かくて、そんなに格好が良いんだもの…モテないほうがおかしい」


 レオさんは目を開き驚いた顔を見せた、その顔は次第に、口が緩み目がなくなった。


「ふふっ、はははっ……ティーさんは面白い子なんだね」


 面白い子? 


「違います、ああ、また笑った。レオさん…もう笑わないでよ」


 そんなに笑うなんて、さっきから私って、おかしな事を言っているの?

 そうなの?

 そう思ったら恥ずかしくて、熱くなった頬を両手で隠した。

 そんな様子の私を見てレオさんは。


「ティーさん…顔を隠しても仕方がないよ、耳まで真っ赤だからね」


と、さらに笑った。


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