バレンタインの攻防ー男は鈍感力
海野美佐、告白後、玉砕したか?それとも不倫に踏み込むのか。課長の答えは意外なもので・・・
”月島課長、大好きです”と笑顔で告白され、包みを差し出された。へんだ彼女はこんな子供っぽいキャラじゃない。
フリーズした、バレたかな。
海野君は笑顔で、私をさぐるようにじっと見てる。退勤時、他の同僚がとぎれたスキを狙っての彼女の攻撃に、私は気を入れて対応した。
「お、ありがとう。で、なんのプレゼント?」
もう会社から外に出てしまったので、開ける訳にもいかず、海野君に聞くと、彼女はポカンと目を丸くしてしばらくして、ため息をフっとついてる。
私の”笑顔のポーカーフェイス”での対応での答えに、今の反応はなんだろう?私の正体がバレたようではなさそうだが。
私、月島 徹は、本社から札幌の支社へ、営業1課課長として派遣された。38歳にして本社から支社の営業部の課長へ。単身赴任で札幌・花の独身組(期間限定)だ。
任期は1~2年。私の本当の仕事は、支社において、使い込み等の不祥事がないかどうか。後は支社への喝というかテコ入れだ。それと人事に関しての情報集め。特に支社長などの上層部がターゲット。
時代劇でいう処の”隠密”って役回りだ。正体がバレたら仕事にならない。
「海野君、どっち方面に帰るの?」
「東西線で東札幌までいきます。そこでバスに乗り換えてもっと田舎の厚別付近まで」
「じゃ、18丁目の駅まで一緒に行こうか」
歩きながら、雑談でサグリを入れてみよう。思えば私は海野君によく見られていた気がする。
本社と緊急連絡中、コーヒーコーナーで見つかった時にはあせった。ちょうど営業1課にいる派遣社員の処遇について、話していた所。極秘だけど、本社は雇止めをする方針だ。
2月とはいえ、あたりはもう暗い。雲が夜空を覆っていて月どころか星一つ見えない。今にも雪がふりそうだ。早く暖かい東京にもどりたいなと、こんな時思う。
海野君で思い出した。ある時、珍しく残業してた私に、彼女が手伝いを申し出てくれた。本当は一人で出来る仕事だったけど、私はPCオンチをフリをして、彼女に指導されてみた。2年未満の正社員の実力を知りたかったからだ。
以心伝心なのか、私がその事を思い出した時、彼女から唐突に礼を言われた。
「いつぞやは、入力ミスしてすみませんでした。課長にまで迷惑かけてしまいました。」
「ああ、あの時ね。入力ミスは、気を付けないとね。ま、あの場合、素になった数字もひどい字だった。迷った時は、本人に確認、忘れずに」
あと課内の噂話とかしたが、海野君は噂話には詳しくないようだった。
女性が好きな一見たわいもない噂話は、実は情報収集にも役に立つ。前に大阪支社では、噂をもとに、不正経理を掴むことが出来た。
話しの合間に妻の娘の話しを入れると、彼女は嬉しそうに、少し寂しそうな笑いを浮かべた。
地下鉄駅入り口から階段を降りながら、彼女の様子を盗み見た。最初は元気よくて、途中で電気きれたようにペションとなって、いつもの海野君にもどって、別れた。なんだか浮き沈みが極端だな、今日の海野君は。
誰もいない暗いマンションに帰ってみると、ゆうメールが届いていた。
中には、チョコと娘が書いた絵が入っていた。
ああそうじゃないか。今日は14日。バレンタインじゃないか。じゃあ、海野君のプレゼントは告白つきチョコだったって事か?
彼女のプレゼントをあけると、やはりチョコだった。
海野君からのチョコをかじりながら、娘が書いた私の似顔絵を壁に貼った。海野君の”大好き”って言葉は、love のような、そうじゃないような。
絵の裏には”ぱぱ いつかえってくるの?”って書いてあった。
”パパは、今度の3月の異動で東京にもどるよ”娘の絵にそう語りかけた。
”逃がした魚は大きい” 少しおしい気がしたが、妻からのチョコをかじりながら、やっぱこれでよかったのかと思いなおした。




